幸せな気持ち
猫、また人になりました、ご注意
手を引かれて、私はふわふわとしたまま広場を後にしていた。
ユースヴィルがすごくキラキラして見える。
黒い髪も、深い瑠璃色の瞳も、すごく綺麗だ。
そんなふわふわした私に対してユースヴィルはすごく機嫌が良くて、私の手を引きながら市場を抜けて役所の付近へとやって来るとまた不敵に微笑んで私を振り返った。
「……そう言うあんずを見るのは初めてだな」
「そう言う、って?」
問い掛けで返すと「恥ずかしがってるあんず」と優しい笑みを返す。
その笑顔が大好きなのに、いつもなら擦り寄るはずが気恥ずかしさでそれが出来ない。
二の足を踏んでしまい、顔に熱が集まる。
「だって……なんだか、恥ずかしいもの」
「なんで?」
「それは……」
顔を上げてユースヴィルに視線を合わせると、先程の感触がまざまざと蘇ってまた顔に熱が集まった。
にやにやと笑うユースヴィルの表情に「わざとなの?」と返す。
「わざと」
「ユースヴィルは意地悪だわ」
「可愛いな、あんず」
繋いでいたその手に口付けしたユースヴィルに、いつもはそんな事しないのに!と、私はまた真っ赤になって黙り込んだ。
「可愛いから、もっとしたくなる」
「何を?」
繋がれたその手に口付けて、私はユースヴィルに手を引かれて路地へと連れられた。
馴染みのある場所だとホッと息を吐き出すと、先程と同様唇に降ってきた柔らかい感触に、私はビクッと肩を揺らした。
「……ユースヴィルの、えっち」
「好きな女の子がそんな顔するんだ、期待するだろ」
ぺろりと口の端を舐めると、やっぱりユースヴィルは不敵に笑う。
あんなにも情けない顔がよく似合う男の人だったのに、今ではそんなの微塵も感じさせない。
紛れも無く「オス」の顔をしていた。
それに胸がときめくなんて。
私は嬉しい様な恥ずかしい様な、よく分からない処理しきれない感情が渦巻く中で、ユースヴィルに視線を奪われていた。
「……ねえ、ユースヴィル」
「ん?」
「私が塔に囚われていたら、ユースヴィルは助けに来てくれる?」
合わせていた唇の隙間から問い掛けると、ユースヴィルは黙ってまた私の唇を奪った。
名残惜しそうにゆっくりと離して、自分の熱を移すようにまたゆっくりと口付けて、頬を優しく撫でる。
「当たり前だ、もうあんずの居ない生活なんて考えられない」
「それは猫でも?今の私でも?」
「もちろん。猫のあんずでも、この人の姿をしたあんずも、どちらも。
あんずが言ったんだろ?愛されたいって、大切にされたいって。
俺はもう遠慮しないぞ、猫の姿の時だって、人の姿の時だって。
あんずが好きで、大切だ。
ずっと、一生、離してやれないからな」
ぎゅっと力強く抱き締められて。
私もその背に手を伸ばす。
ユースヴィルのその言葉に、私はまた涙を流した。
大切にされている。
そう感じて、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。




