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帰り道

猫が人になりました、ご注意



役所を出ると「食べるか?」と聞かれたので、さっきのクリームパンの事だろうかと首を傾げた。


「ユースヴィル、無理しないで。

もう帰ろう?無理に居続ける理由はもう無いわ」


「いや……」


顔色がすごく悪い。

うっすら汗も滲んでいる。


よっぽど酷い思いをしたのか、彼はきっと今すごく考えているのだろう。

そう思うとクリームパンなんて二の次だ。

ユースヴィルが変わろうと決意してくれたのは心の底から嬉しいし、応援したい。

だけど、急ぐ必要も無いだろうと伝えた。


「大丈夫、今は貴方がこの役所に来て人と顔を合わせただけで十分よ。

貴方の決意を損なう理由になんてならない。

急ぐ必要はないわ」


「……だが」


「焦らないで、ゆっくり行きましょうよ。

私はずっと、ユースヴィルの隣に居るから。

私にもユースヴィルのお手伝いをさせて」


その為にこの身体を手に入れたのだから。

私がそう言って笑うと、ユースヴィルはゆるゆると首を縦に振った。


「……クリームパンより、ハルトの作ったシチューが食いたい。

あんずとお茶して、ゆっくりしたい」


「うん、しよう?ハルトにもお願いしよう?

私も一緒にお願いしてあげる」


ホッと息を吐き出した私は、ユースヴィルの手を取って門へと向かって歩き出す。


急がなくていい、焦らなくたっていいのだ。

まだまだこれから変わろうとするのならいくらでも時間はあるのだから。

人の気持ちは簡単には変えられない、人の心は簡単に動かない。

いきなりコロリと反転する事だってある。

裏切られたり、説得されたり。

私だってそんな人達を見続けて来たのだから。

彼の決意を聞いて、私なりに考えて、私の意見だって少しは何かの足しになるはず。


ユースヴィルの言葉に、声に、今日彼等を気遣う優しさを見た。

きっと彼等の内の何人かは分かっているだろう。

彼がどんな性格なのか。

だったらゆっくりでいい、示すだけだ。


私が側に居るように、ユースヴィルにはハルトだって居る。

この町の人全てが彼の敵じゃないと、私は分かったのだから。


ユースヴィルの歩く速度が私と同じ速度になって、隣り合って門を潜る。

門に居た門番達はまた慌てたように敬礼していたけれど、ユースヴィルは困ったような笑みを浮かべて「お疲れ様」と声を掛けた。

その言葉にきょとんとしていた門番達の横をすり抜けて、私達は帰路に着く。

少ししたら見えてくる小さな橋を渡って、木々の生い茂る林を抜けて、見えて来た屋敷を見て「やっと帰って来た……」とユースヴィルが呟いた。


「……おかえりなさい、ユースヴィル」


「ただいま。あんず」


二人手を繋いで屋敷へ入ると、ハルトが心配そうにリビングから続く庭を眺めて居た。

手を振っている私に、心底安堵した様な表情をして、ハルトは私達の要望である、晩御飯のシチューと休憩用の紅茶と珈琲を用意してくれたのだった。

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