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ユースヴィルの決意

猫が人になりました、ご注意



この国には、役所と呼ばれる場所がある。

この町の人間達が平和に暮らせるように町の治安を維持したり、町の人達の不安を解消したり。

そして今回の様に、この町へ引っ越して来た人は役所に自分の事を登録するようだ。



ユースヴィルは人と関わりたくない、もしくは苦手としているらしいけれど、私は出会った時が猫だったから大丈夫と言うなんとも曖昧な事で、ハルトは「全ての生き物」が苦手と解釈していたと言う。

ユースヴィル曰く「感情が動く事で至極面倒臭くなる」かららしいが、それは今まで見て来た人間達も獣達にも全て当てはまるなと思ってしまった。


そんな訳で、ユースヴィルが腹を括った事で私とユースヴィルとで町にある役所へと向かう事になった訳だが……屋敷をハルトに任せて、一歩踏み出したところでユースヴィルの深いため息が聞こえて来て、私は思わず笑ってしまった。


「あんず?」


「ユースヴィル、大丈夫?」


「大丈夫じゃないな……」


まだ遠くに見える町を見据えて、苦笑いのユースヴィルに「大丈夫じゃないなら、しなくて良いよ?」と私はまた笑う。


「ユースヴィルの荷物になりたくてこの身体を貰った訳じゃないもの。

私はユースヴィルのお手伝いをしたかっただけ、側に居たかっただけよ?

上手く行くか分からないけれどまた神様に猫にしてってお願いしてみても良いの。

……私はユースヴィルの側に居られるなら、猫の姿だって十分よ」


それは私の嘘偽りの無い本音だ。

彼はずっと人と関わりたく無いからこの場所に来て、この屋敷で過ごしていたんだろう。

それなのに私の為に、私のせいでユースヴィルが苦しむと言うのなら、それなら猫の姿で愛でられるのも構わない。

したくないこと、やりたくないことを無理矢理させたくてこの姿で居るわけじゃ無いのだから。


このまま屋敷に帰って、ハルトに珈琲をいれてもらおうと提案しようとしたけれど、ユースヴィルは立ち上がって「いや、行こう」と歩き出す。

慌てて後に続きながらユースヴィルに「どうして?」と問い掛けた。


行かなくて良いのなら、その方が良いのにと首を傾げると。

ユースヴィルは笑って「お前が俺を選んでくれたなら、俺もそれに応えるだけだ」と私の頭を撫でた。


「あんずがあの家に居てくれる理由になるなら、俺はなんだってするさ。

それに、俺の側に居てくれる為にあんずが願ってくれたのなら、その願いに応えないとな」


「……私は猫でも十分幸せよ?」


「ハルトのご飯、美味しいだろ?

そう言うの、今の姿でないと味わえないんだ。

それにあんずを見ていると、なんだか自分の中で変わらないとって意識が芽生える。

俺はそう言うの、結構気に入ってるんだよ」


そう言って笑うユースヴィルに、私は笑みを返す。


「貴方が決めたのなら、私はそれについて行くわ」


「それは心強いな」


歩き出した道を振り返って見ると、二階の窓側にハルトが居るのが見えた。

こっそり見ていたのがバレたからなのか、小さく手を振ったのを見ないふりをして、私はユースヴィルの後ろに続く。

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