メフィストフェレス 2
「なんだ、結構私のこと、知っていてくれているんだ。そう、本物だよ」
メフィストはそう言い、あたりを見回し「ここ座ってもいいかい?」と言いながら、勉強用の椅子に座った。
にこにこと、笑顔を向けながら、
「突然で、混乱しているだろうけど、本題から話させてもらうよ。君は今、困った状態にあるだろう?それを、私は解決できると思うんだ。それで、相談しに来たというわけなんだ」
そんな事を言う悪魔が、自分の目の前にいる。これはダメだ、これはもう、気が触れたとしか思えない。
僕は、自然と笑い声が口から漏れ、
「ついに気が触れたみたいだ……」そう呟いた。
「そんな風に思う気持ちも、わからないではないよ。こちらの世界では、神の顕現は久しく行われていないからね。実はこれも緊急事態なんだよ。他の神には了承を貰っている」
メフィストは老人のように見えるが、目は力強く、何か違和感のある老人だった。なんというか、若々しい感じがするのだ、まるで老人の衣を被っているかのようだ。
「わ、わかりました。あなたは悪魔ということなんですね?」
「そうそう。でも、こちらの世界だけでの話なんだけどね」
「どういう……?」
「ま、それは今は重要じゃない。今は、君の彼女の話だよ」
「ーー助けてくれるっていうんですか?」
「そういう、話」
「というと、ただではないんでしょ?『メフィストフェレス』って言ってましたよね。有名な魂と引き換えに願いを叶える悪魔ですよね」
「うーん。こっちの世界では、そういうことになってるらしいんだよね。いや、あの時も、そんなつもりはなかったんだけどなあ、まあ……、それは、いいんだけど。君の魂とかは、いらない。というか、そんなのは迷惑だ。私は、私の願いを、仕事を、遂行してくれたら、それでいい」
「……と、いうと?」
「君に、私の代わりになって、仕事をしてもらいたい。この世界とは、別の所で」