第3話 会議と言う名のまがい物
グリル探険隊、それはグリルが隊長で他の3人は平隊員という無駄に格差がある組織だ。何故そうなったかというと「探険隊といえば、隊長が一番上だよな!それ以外は全員部下っ!」というグリルの勝手な思い込みのせいなのだ。
まぁ別に気に入らない訳じゃない。でも何でよりにもよって探険隊なんだよ。例えば探険隊じゃなくて、〜〜団とか〜〜結社みたいなのがあっただろ。しかも何で自分の名前を入れちゃうかな。物凄くダサいに加えその事が村の中に広がってるもんだから近所の人とかに温かい目を向けられるんだよね。
もう恥ずかしくてしょうがないよね。
「何ぼーっとしているんだハンス!会議中だぞ!」
「あぁ悪い、少し考え事してた。」
グリルが俺の顔を叱責する。俺たちは洞窟の奥にある秘密基地で会議を開始していた。四人とも木製の椅子に座り、それぞれ案(笑)を考えていた。
「グリルの出す案がつまらなかったんじゃないの〜〜?」
「何っ!本当なのかハンス!嘘だよな!?嘘だと言ってくれ!」
「顔が近いぞ。グリルはカティの嘘を真に受けるなよ。」
「やっぱりそうか。カティ、後で覚えてろよ。」
「じょ、冗談だよ〜。」
「……………………………」
出される案は大体グリルのものが多い。だがその内容にはロクな物がない。
隣町横断マラソンや魔獣討伐など、挙げるとキリが無い。そのお陰で、第三回となった会議では一度も案が決まらず、探険隊だと言うのに探険の「た」の字も出ていない。
まぁ纏まらない主な原因はほかにあるんだが。
「じゃあ、俺がさっき出した案の『プラクル川横断ツワー』についてだが、「嫌っ。」はぁ〜、またか。」
「……………………私は嫌。」
その理由は意外にも、イトラだった。グリルが出す無茶苦茶な案をきっぱりNOと答えるのは彼女だけなのだ。ちなみに俺とカティはこいつの暴走を止められず、よく流されてしまう事が多い。
「イトラ、何故いつもいつも俺の案を認めてくれないんだ。」
「……私、…泳ぐの苦手。」
「ならこれを期に克服するんだ!苦手を克服できるのは若いうちからだとよく言うじゃないか!なら今、この歳で!苦手を無くしていくんだ!」
「なら………………グリルには………苦手が無い?」
「当たり前だ、俺には苦手な物など1つも無い。」
「この前………グリルがお弁当に入ってたトマトを残してた。それは…違うの?」
「なななななな、何故それを知っている!」
今回もイトラVSグリルはイトラ勝利になった。これ以上グリルを追い詰めるのは流石にグリルが泣く。そう思った俺は椅子から立ち上がった。
「グリル。イトラもこう言ってるから、そのなんとかツアーってのはボツにしようぜ。」
「う〜ん、致し方無い。」
「じゃあ今日の会議は終了!草原に遊びに行くか!」
「さんせーいっ!」
「ハンス!例え遊びだろうと俺は手は抜かないからな!」
THE能天気コンビが走って洞窟を出て行った。その姿を見るとまだまだガキだなぁと痛感して思う。
「全く、あの二人は。」
そう呟くと、俺はまだ後ろにいるイトラの手を掴んだ。
「ほらイトラも行こうぜ。」
「……………………うん。」
恥かしそうにイトラは頷く。椅子から立ち上がりハンスと一緒に洞窟を出て行くその表情は、無表情ながらもほんのり頬を赤く染めていた。
…………………♢
「はぁ、はぁ、はぁ。」
暗い森の中、一人の男がシャベルを使って地面をを掘り返していた。息を荒げながら、汗を拭った。しばらく地面を掘り進めるとカチンという音が鳴った。
「あった!」
男は思わず歓喜の声を震わせた。シャベルを放り、音が鳴った部分の土を取り払った。
「ついに見つけた!」
土が無くなとそこには30センチ程の石板が現れた。長い年月が経ったであろうその石版には、文字が彫られていた。
男は、その石版を取り出し、笑みをこぼした。
「ここからだ。ここから私の計画が始まる。ふふっ、フハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
森に響く男の笑い声。闇夜に光る満月に雲がかかり、これから起こる惨劇を予感させた。