第1話 時は流れて5年
ある昼下がり、一人の少年が草むらで横たわっていた。のどかな草原で寝息を立て昼寝の真っ最中だ。そんな少年を狙う影が3つ木の陰にあった。
足音を立てぬ様に少年に近付く3つの影、だが少年はそんな事は梅雨知れず昼寝を続けている。その影が少年を取り囲んだ。1つの影が少年に手をかけようとした次の瞬間!
カッと目を開けた少年にいきなり手を引っ張られる影、そして顔から倒れ込み小さな悲鳴を上げた。
少年はそれに続き残りの二人に影に攻撃を加えた。出遅れた2つの影は、身を引こうとした。だが少年は一気に影との間合いを詰め、一方には足をかけバランスが取れなくなった所を転ばせ、もう一方は殴りかかった拳を背負い投げで投げ飛ばした。
「へっ!この勝負俺の勝ちだな!」
「「「くそぉ。」」」
鼻の下を擦り自慢げの少年に対し、悔しさを表情に表す三人の影、もとい少年達。
「これで俺の10勝2敗だな。」
「ジュウドウを使うなんてずるいぞ!」
「「そうだそうだ!」」
「黙らっしゃい!勝てばいいんだよ勝てば!」
「くっ、覚えてろーーーー!!!!!」
捨て台詞を吐きながら他の二人を連れて逃げていった。去り際に「負け組乙wwwwww!!!」と言ってやったら遠くからでもわかるくらいに地団駄を踏んでた。いい気味だ。
「はぁ〜、何してんだ俺。」
この世界に生まれて5歳、精神年齢18歳の俺。ただいまいじめっ子達をからかいながら過ごしてます。もう一度言おう、何やってんだ俺。
♢♢♢♢
あの時、死んだ筈の俺は何故か赤ん坊になっていた。神の悪戯かはどうかは知らないが、二度目の新しい命をゲッツした訳だ。
不本意だけど、ここが重要だ。
そんな俺も5歳、まぁ精神的には23なんだが。
「全く!いつになったらいい子になるの!」
ただいま説教中だ。
あのガキ共、親にチクりやがった。ケンカは弱い癖に演技だけは達者なんだよなぁ〜。
「下を向かない!」
この人はこの世界の俺の母親のミー・クレヤンだ。優しい時は優しいが、怒る時はめっさ怖い。般若みたいに顔をしかめた表情は、ゴブリンをも震え上がらせるとか。
「まぁまぁ、お母さんも落ち着いて。」
「あなたはちょっと黙っていてください!」
「は、はい。」
このヘタ、オッホン!この不甲斐ない男は俺の父親のアレス・クレヤンだ。いつも俺に優しくしてくれる一家の大黒柱だ。頼りない所が目立つが立派にこの家族を支えている。職業はギルド管理だとか。
「ちゃんと話を聞いてるの!?しっかり反省「ママ、オシッコ。」あらごめんなさい起こしちゃった?」
眠い目を擦って現れたのは俺の1つ下の妹、長い髪が特徴的なレイラ・クレヤン。自慢の妹で、たまに甘えてくる時は断然顎を撫でる。
母さんに抱かれた直後、俺の方に向いた。
「(後で、おやつちょうだいね。)」
俺はサインで了解と送った。ちなみに腹の中は真っ黒の妹だ。
「じゃぁ!俺友達と遊ぶ約束してるから!」
「ちょっと待ちなさい!「オシッコ。」もう、ハンス!」
紹介が遅れた。
俺の名前はハンス・クレヤン。ただいま異世界ライフ満喫中である。