プロローグ
照りつける太陽が颯爽と輝き、それに比例して蝉の鳴き声が大きくなる。暑く熱せられる道路を行き交う大小様々の車、都会の温度は30度を超えたとニュースでもやっていた。確かに半袖のTシャツを今すぐ脱ぎたくな
る程の暑さだ。
なんでも地球温暖化とかの影響が大きいらしい。やはり自然の猛攻には勝てないな。
休みを利用して都会に来たはいいが、何をしていいのかわからん。この日の為に用意した服も汗でびしょびしょだ。全く、何しにきたんだ俺は。
しっかし、こんな目まぐるしい数の人見ると、なんだか自分がちっぽけに見えてくるぜ。世界に何十億人もいる人間の中で、俺が知り合う数はほんの一握りだ。例え世界のどこかで誰かが死のうと、くたばろうと俺はそれを知らない。
出会いは必然とも言うが、こんだけの数で友達と巡り会う確率は1パーセントにも満たないだろう。
まぁ、俺は友達少ないけどね。
休憩がてら公園のベンチに座ってそんな事を考えてる俺って中二病かも知んない。暇潰しにはなるだろうが、貴重な高校最後の夏をこんなのに費やす何て不遇すぎる。軽いノイローゼになっちゃうよ。俺は太陽に当たらぬよう、頭を下げた。
あぁ〜〜〜、自由になりたい。何かもっと刺激が欲しい。眠気が吹っ飛ぶような楽しいことないかなぁ。
「君っ!危ない!」
えっ?
上を見ると、一台の大型トラックが騒音並みのクラクションを鳴らしながらすぐ目の前にいた。
ーーププッーーーーーー!!!!!
避けられるはずも無く、10トンの鉄の塊が俺にぶつかった。5メートル程吹っ飛ばされ、身体中の骨が砕けた。脳が大きく揺さぶられたにも関わらず、俺は正常な判断で状況を理解した。
俺、死ぬな。
刺激は欲しいと言ったが、ここまで痛いとは聞いてない。この熱さで頭も馬鹿になったっていうのに、今度は耳と骨も馬鹿になっちまった。くそっ、こんな冷静に考えられる自分が怖くなってくるぜ。
少し動くだけで、全身の骨が軋む。女性の叫び声も聞こえてくる。これは大事件確定かな?死の間際だって言うのに何を考えてるんだ俺は。
意識が遠のく、徐々に瞼が重くなった。走馬灯のような物が頭の中を駆け巡る。幼馴染と遊んだ日々や高校に受かった日、など時代は様々だ。
心臓の鼓動が遅くなる。死が目前にまで迫ってきた。
「起きろっ!もうすぐ救急車がくるからな!」
サラリーマン風の男性が声を掛けてくるが、もう遅い。
俺はゆっくりと意識を手放した………
♢♢♢♢
筈だった!
突如として覚醒した意識、光がまぶしく照らす。
目を開けると俺を覗き込む二つの影があった。
「あっ!起きたわ!」
「そうだな。うん!寝顔もかわいいぞ!」
「そうね、あなたにそっくりよ。」
「こいつぅ〜。」
状況が全く掴めない。俺の前で夫婦の営みをしている男女。当然夫婦なのだろうが、ちょっと待ってくれ!
両腕の手を伸ばす。プニプニとした防御力的に言えば1にも満たないであろう柔らかさだ。男の方が俺が甘えたと勘違いして騒いでいるが、そんな事どうでもいい!
これはまさか!
「ばぶーーーーーーーー!!!!!(赤ん坊になってるのかよーーーーー!!!!!)。」
「あなた!息子を怖がらせちゃダメよ!」
「ぼ、僕は何もしていないよ!」