チェイスと敗北
さて、カーチェイスの前に戦力差を考えてみよう
新木サイド
人員 :2人
移動手段:改造車(性能不明)
武器 :バレットM82、ライフル状のナニカ
以上
<W>サイド
人数 :3人(ヘリ操縦者追加)
移動手段:ヘリ、特殊ローラシューズ
武器 :対物ライフル、ダネルMGL
以上
明らかに<W>が有利すぎる
人数、移動手段、武器が明らかにグレードが違うし、1人は特化スナイパーで後ろを取られて撃ちにくい
本来こちらは多少の仕返しが出来るだけで、簡単に死ぬ
しかし、邪道がここにいることがその状況を大きく覆す
理由は2つ
まず、この改造車が未知数
速計器が180km/hオーバーあるし、思い返せば排気口が明らかに1つ加えられていたし、座席横のレバーが2つあるし、フットレバーも6つあるし、見たことがないスイッチが10個はあるし、所々に武器が隠してあるし、ギアが15個もあるし、フレームとガラスは一度は対物ライフルでも止められる、もしかしたらまだ隠された見えていない性能があるかもしれない。移動手段もグレードが違うと言ったが実はそんなことないのではないか?
と、まあ<影組>でも乗りこなす人物は邪道を加えて2人しか居ない(というか、誰も練習したがらない)車である
次に、邪道の運テクがオカシイ
いや、正直に言おう。イカれてる
俺は現在のような爆走した状態の車に二度乗ったことがある
その時は90度の壁を垂直走行したし、ドリフトでキッチリ3600度回転して直進したし、タイヤのゴムを摩擦で燃やして文字通り火の車で人を跳ねたし、段差無しで空を飛んだし、段差使わせたら上下に1回転して着地するし、1輪でほぼ垂直に立ったこともある。というより1万人に1人の割合でしか運転できる者は現れないだろうモンスターカーを運転できる時点でどうかしている。いや、作る時点でも、かもしれない。
そしてようやく時を動かそう
さしずめ、サラッと言われたダネルMGLが連射式グレネードランチャーで第2射が車のド真ん中に着弾しそうなところから始めよう
「まあ、所詮熱と衝撃が襲うだけで別段どうしたわけ………」
「どうかする。避けろ。前フリ勿体ないだろうが」
「なんのこと!?」
本気の殺気を放つとようやく車を動かした
ド真ん中という絶対に避けられない状況下で邪道はギアの上に付いているターボスイッチを押した
そして速計器が200km/hを越した
お陰で当たることなくさらに爆風で加速する
「おい、宙に浮くから一発撃て」
「サー」
それだけ言うと窓から体を乗り出し後方に向けて構える
次の瞬間何かに乗り上げ宙に浮いた
そして運がいいことにスコープのその先にいた女スナイパーを撃った
不安定な状態で撃ったため対物ライフルの衝撃が恐ろしかったが、風圧と車内に残された足で力を逃がす
それが予想以上に時間がかかり、異常なまでに長かった滞空時間が終わっていた
そして30m先にトンネルを抜けて男が迫っていた
「どうだ?殺ったか?」
「なぜそこでフラグを建てるのか。そしてトンネルに乗り上げて1区間空を飛んでいたのか。滅茶苦茶質問したい」
そして再び登場シーンと同じように爆音を上げてヘリがやって来る
「チッ、ヘタレが」
「10発中5発が的はずれな方向へ飛ぶあんたに言われたくない」
第一、当たってはいる。ヘリに
「男、10m前方」
「くそ!後で色々文句言ってやるからな!」
全くもってこっちの台詞だが今は俺もほっとく
おそらく俺らの動きを封じる爆弾だと思うが相手が悪い。その程度どうにかするのが邪道だ
ハンドルを右に切り
6つあるフットレバーの内1つを踏んだ
そして200km/hの速度で空を再び飛んだ
しかも前はそれで精一杯だったのに真横に飛んでいる。しかも結構高めに
そして即座に構えた銃で邪道が撃った
そして
そして
そして
そしてやはり先ほど言った通りはずれな方向に飛んでいった
で、俺はというと、どうせ外すだろうな。っと予想していたのでボックスに入っていた手榴弾を男に向けて頬り投げた
そして2つの爆風が車を襲った
本来、車は道路左の崖に転がり落ちていたはずだった
しかし、それでも車は煙から道路を伝って出てきた。赤いフォルムが煤だらけになっても多少ボロボロになりながらも出てきた
「お前、当たらないなら撃つな」
「当たる!10発中5発は当たる!」
まあ、文句たらたらだが、爆発のショックを和らげるため回転した判断は良かった。お陰でたんこぶ3、4個で済んだ。にしても、回転の仕方が異常だった。想像しやすく表現するなら
ミニカーのフロントガラスから真後ろまで突き刺して、お手製の道路に垂直にしてクルリっと回転してもらえば分かりやすいだろう。
それにしても車はあの瞬間すでに宙に浮いており、どこにも力点など作れなかったはずなんだが
「まさか、その銃どこかで見たことあると思ったらヘーカトⅡか………?」
「え?気づかなかったのか?」
「お前、ついに銃まで改造しやがったのか」
バレットM82と同じ対物ライフルである
本来900mmあるはずのそれは600mmにまで短くなっている。おかげでKar98kに間違えそうになった俺に責任はないだろう
「まあ、短くなって振り回しが利く分、弾が1発になったり反動が酷く強くなってるけどな」
その言葉は俺の頭に鈍い痛みを与えた
察した。ヘーカトⅡ(改)の反動のせいで車ごと傾いていたところに爆風が靡き車が回転したことを
「………帰りたい」
「おい!急に自暴自棄になるな!次を教えろ!」
「前輪」
その瞬間ギアチェンジと共に左に落ちた
いや、それでは言い方が悪い
道路から逸れて崖を走っている
地面から90度詰まるところフリフォールの壁を走っている
「この世界そんなにSF感無かったはずだがっ」
「下の回転刃で支えてる感じだな」
「それ取れたら死ぬよな?」
「死ななきゃ儲け!」
「じゃねぇ」
生きてても不幸だ!
まあ、しかし撃ちやすくなったのは事実だ。窓を開けて身を乗り出し射撃すればいい
問題は1つ
ミニカーを左にフリーフォールしてもらえば分かる通り、運転席からでしかポジション的に射撃できない
前記のようにこいつは的外れ野郎だ。そう簡単に渡したくない
だが、
俺は邪道に銃を放り投げ右手右足で運転を変わる
邪道が窓から乗り出し狙う
しかし、相手もただ撃たれる的ではない
相手からの弾丸はすでに発射されていた
今までいつ弾丸が来るか分かっていた俺らしくないと思われるだろうか?
否
そんなことはない
俺は不要になったヘーカトⅡ(改)を空いた左手に持つと槍投げの要領で投げた
その直線飛道は正確に邪道の額を掠り、弾丸を弾いた
だが、完全ではなく流された弾丸は邪道のもみ上げをかっさらい飛んでいった
それと同時に邪道が放った弾丸は狙い済ましたように、こちらを狙う銃口に入り銃を破壊した
「さすが50%50%の確率」
「いや~、それほどっすよ」
「実際それほどしかないんだけどな」
10発中5発を的から外すこいつは………
だが、残り5発は必ず当てる
たとえそれがπ平方cmしかない的であっても必ずだ
ゆえに知ってる奴等はこう言う
「当たるかどうかは運次第。狂った戦いにピッタリのギャンブル」だと
●●●
「何とかなったな」
「まだ何かあるって言ったらどうする?」
「そりゃ勘弁願うよ」
邪道はそう冗談のように笑いながら車を車道に戻す
「左後輪」
「ん?何か………!?」
その瞬間ボンッという軽快な、しかし物騒な音共に左の後輪が爆発する
「お前避けろよ」
「いやいやいや終わる雰囲気だっただろうが!」
「だからわざわざ言ったじゃないか「まだ何かあるっていたらどうする」って」
「わっかりにくいわ!」
心を感じることができる俺には相手が死んだか、生きているか、戦う気力があるか、この場を引く気か、手に取るように分かる
だから忠告してやったのに馬鹿かコイツは
「第一爆発ってことはあのボマー生きてるのかよ!」
「まあ、体制崩してかなり差が付いてたけど追い付いてきたみたいだな」
「みたいだなじゃねぇ!そういうのは早く言え!」
「急な横回転に異常なロッククライミングが行った誰かさんのせいで言えなかったと明記しておこう」
「記すな!言え!」
だが、これで振り出しに戻るどころか振り出しより悪化した感は否めない
「お出迎えするから、虚偽と虚空出せ」
俺の本命武器と言っていい2振りの小太刀を邪道に要求する
ちなみにお出迎えとは迎撃の隠語である
「あれ乗せてない」
「は?」
「メンテ中」
「邪道さんや?今回初めて<W>戦だよな。それなら当たり前のように俺の小太刀は未使用のはずだ。それならあまり手入れに時間はかかるまい
さて、本題なのだがどうしてメンテ中なのかな?」
「ちょっと色々ありまし………」
『別の車に』
その瞬間右の2本の指が唸る
邪道の瞳乃前に停止すると言った
「辞世の句ぐらいなら聞いてやらんこともない」
「それはまだ早すぎるかな。奥の手あるし」
「さらばだ」
「ぎゃあぁああ!?」
それはまだ
早すぎるかな
奥の手あるし
字余り
0点
最期の時も残念なモブだったな
「まだ死んでねぇぇぇぇ~」
「こいつ生命力だけはゴキブリ並みだよな」
かなりムカつくが(敵も邪道も)
自他共に認めるクソ野郎な俺でも命が惜しい。一旦話を脇に置きバレットM82を構える
「あ、構えなくていいぞ。奥の手ですぐ終わらせる」
「は?どういう意………」
少し視線を邪道にやる
その時にはすでにハンドルの横に増設された赤いボタンに邪道の指が乗っていて………
「ポチっとな」
●●●
瑠璃里新聞
瑠璃里市A町の道路にて大規模な爆発がありました。警察では今回の爆発に関して車のガソリン引火である可能性が高いと発表しており。更なる調査をしているそうです
今回の件で死傷者は………
●●●
ドゴンッ
その音は100先の宿泊場にまで聞こえた
「あっちって私達が移動してた方向じゃない?」
それは誰の言葉だったのか。確認するまでもなく白煙の上る方向に私は走った
●●●
まず言っておく
ってか言っていた
邪道に殺されかけた
あともう少し早く俺が目を邪道に向けていたら心眼の情報が増えて自爆ボタンを押すのを止められていたはずだった
あともう少し遅く邪道に目をやっていなければ心眼の情報が足りず謎のレバーがパラグライダーのグリップだと気が付かず爆発に飲まれていただろう
で、現在爆心地から直線100m先上空500m
苦なるフライトもまもなく終わる
小さな路上駐車場に着陸する
そこには1人の人物が待っていた
「あれ?真くん!?何で空から来たの!?しかもパラグライダー命綱なしとかどういう神経してるのよ!」
清藤だった。なんで空から来たのとは失礼な。空から来ていいのは少女だけの特権ではないだろう。パラグライダー使いなら乱歩ドイルくんがいるじゃないか
「おい。邪道どこだ」
「怖い怖い怖い!お父さんみたいに怖いよ!」
なるほどこの前の殺気で唯一意識保てた理由はそれか
邪道ですら呼吸がキツくなる制限なし手加減なしの本気の殺気を怖いで済むとは清藤父の英才凶育とかどんなんだよ
「あー、でもお父さんが2倍怖いかな」
「………俺、清藤父に会いたくなってきたわ」
まあいい。ここでムカついても仕方がない。清藤に八つ当たりするほど無作法な俺ではない
「ところで清藤、なんでお前ここに居るわけ?」
「それは爆発音が聞こえて咄嗟に………」
「アホか」
「………言い訳のしようもありません」
危機を察したら所構わず駆けつけるとは、コイツはヒーロー気質があるのだろう
「しゃあない。宿泊場に行くぞ。案内しろ」
「上から目線!?第一、写道先生は?」
「アイツは100の弾丸が降り注いでも生き延びる男だ。安心しろ」
「いやいや心配でしょ!」
「心配?しなくていい。………いっそこのまま死んでくれれば好都合」
「今なんか聞こえたよ!死んでくれればって聞こえたよ!」
「良いから行くぞ。あ、案内看板あった。先行くな」
「へっ!?ちょっと待ってよ!」
俺が少し先行して道を歩く。あれほどの爆発ならあっちも大打撃だろう。追っ手も来るまい
その時清藤の携帯が鳴った
「あ、写道先生。今どこですか?」
『今、宿泊場だ。清藤が俺らを探して出てい………』
「あれ?真くん!?いきなり全力疾走!?ちょっと待ってよ!」
『真!?そこに真が居るのか!?』
「居ます!今、私が追い付けないほどの全力疾走でそっちに向かってます!」
『ごめん!命その他もろもろの安全を確保するため電話切るぞ!』
遅い。あっという間に100m前だ
「ニガサナイ」
「お父さん率75%突破!?」
だから誰だよ。お父さん
駐車場に突入すると既に高校の集まりが見えた
「邪道はドコダ?」
「あ、あ、あちらに行かれました」
問答無用制限なし手加減なし、そして限界突破した殺気を方向に向ける
怯え発見
それは海岸の路上
「ミツケタ」
その瞬間俺は飛ぶ。宿泊場の屋根を踏み、屋根の上の助走から踏み切り、100m以上の飛距離を記録して邪道の前に立つ
しばらくの沈黙
「あの、許してく………」
「ドリフト右輪浮き、爆風加速、200kmターボ、1区間トンネル越え、ドリフトジャンプ、改造銃に、フリーフォール運転、無確認射撃、挙げ句の果てには自爆と、座席吹っ飛び、命綱なしパラグライダー等々やりやがって、今更許して貰えるとか思ってるのかクソが。地の果て、空の果て、海の果て、世界の果て、世の果てに飛んで逝け。火車流手刀技、八式」
弧を描くように伸ばされた手刀が
八式と名付けられた正拳突きが腹に突き刺さる。邪道の体は海を3度ほど跳ね、堕ちた。魂だけでも数多の果てに逝ってくれることを願う
語彙が残酷なのは故意だとここに明記する
作)というわけでスペシャルゲスト写道です!どうぞ
写)ごぼ、あが…………
真)とりあえずクソ虫カス男に住民票変更してくるわ
作)え?マジで行っちゃった
写)待てや、ゴラァ!!(緊急復活&乗車)
作)ドゴン!(ひき逃げ)あ、あんまりだぁ~!




