決着と祟り
さて、勘違いしてほしくないことが1つある。
まず、俺、新木真は強くない。それこそ清藤の蹴りで倒されるほどだ。だが、強くなければ邪道相手に戦うこともできないし、多人数で襲われて対処できているはずもない。ゆえに俺は力を増やし強力なものへ変換する技術を身に付けた。力を溜め解放し放つ。簡単に言っているが、行うにはさらに細かく動かなくてはいけないし、そもそも瞬発の力では力のゴリ押しに弱い。それだけをうまく使えても決め手に欠けるのだ
ここでもう1つ勘違いしてほしくないことがある
俺の武器は木刀でもなければ拳でも掌でもない
本当の武器は『心』である
『心眼』は相手の心を読む力。だが、それを利用すれば最強の武器になる
心というのは、これまで生きてきた中で積み重ねられた経験や癖というのが出る。好きな食べ物、趣味、だけではなく、どんな行動が好き、どんな戦い方が好き、どんな流派を使う等々が分かるのだ
つまり
「なぜ……当たらないのですか!!」
心の最奥部、最も癖がついている深層心理を見る絶対回避
それと
「胴、面、胴、小手、ちゃんと教えてるのに当たりまくってるぞ。避けようとする努力見せてよ」
行動を制御による深層心理の癖で隙をつくる絶対攻撃
その2つこそが戦闘における俺の武器だ
雑魚が武蔵野を攻撃してる間に襲いかかる
その男の襟首を掴み肉盾にする。それを見て途中で武蔵野は剣速を落とす
そんなことをすれば簡単に隙が出来る
腰に木刀が突き刺さる
「ガハッ!」
「甘いねぇ。ちゃんとトドメ差さないと被害者増えるよ」
中途半端に苦しむ男を集団の中へ蹴り飛ばす。しかしそれでも止まらず2階から落ちる
「人でなし!」
「それで?どうした?」
木刀を正眼に構える。胴を狙って武蔵野の横に動いた。奴の木刀を左手で掴む
「だけどな。好意を拗らせ憎悪に変える人間よりはマシだ」
「そんなの自己の肯定だ。どんな人間でも盾のように使う人間は許せん!」
「だが、お前より強い。だからお前は俺を襲った。そうだろうバトルジャンキー」
武蔵野が木刀を手離し突きから逃げる。奪った木刀で突きを伸ばし追撃する
「グ!……そうするしか…………ないじゃないか……!」
『心眼』が彼の言葉を先取りする
『僕だってこんなことしたくない!』
「僕だってこんなことしたくない!」
武蔵野は落ちていたバットで横に凪ぐ。それを下がって避ける
「でも、強くならなければならなかった。じゃないと部長として示しがつかないだろう!」
「清藤に負けたんだろ」
「そうだ!だから今度こそ勝たなきゃならない!」
そう、剣道部の部長である武蔵野に勝った<キャプテンキラー>は清藤なのだ
清藤が剣道部部長に勝った事は学校中に広まっていた。彼は去年全国ベスト8に上り詰めた実力の持ち主。それを倒した清藤は全国優勝を狙えるのではと噂されていたのだった
「だから清藤より弱いと思った俺を襲った」
実際に清藤は強い。深層心理にたどり着けば心の声が聞こえるようになる。その後に俺に攻撃を当てることなど困難だ。それでも清藤は俺に蹴りを入れたのだ。今現在深層心理にたどり着いても攻撃を当てることが出来る者は清藤と邪道だけだ
「その通りだ!お前を足掛かりに清藤を倒す!」
「足掛かりにさせねぇよ」
すでに刀の応酬に巻き込まれ雑魚は倒されている
俺には余裕があり、武蔵野にはもう余裕がない
俺を倒す気があるなら次で決めると心が言っている
「今出せる俺の流派の全力、それを出す!」
武蔵野がバットを正眼に構える。俺の2本の木刀の先は右を向いて独特な構えをする
そして時は動く
武蔵野は一足で距離を詰めバットを降り下ろす。俺はそれを下がって避ける
ードガン
「無駄だ」
死角となった下から現れたバットを俺は逆手に握った木刀で斜めに流す。その時に生まれた運動エネルギーが俺を右に回す。そして裏拳のように穿たれた木刀は武蔵野の腹に入り吹き飛んだ
「お前の心は見切った」
●●●
その後、たまたま(狙い済ましたように?)現れた俺の担任に奴らは連れていかれた
そして俺は武道場にいた
「木刀返しにきたぞ」
「お、結構早かったね!」
そんな元気な声をだしながら駆け寄るのは突然俺の手の中に現れた木刀の持ち主清藤だ
まあ、簡単に説明すると清藤が投げたときの救済の感情に気が付き、武蔵野の死角から現れた木刀をキャッチしただけというシンプルな話である
「もとはと言えば、お前のせいでこんな騒動起きたんだがな」
軽く宙に放った木刀は放物線を描き、清藤の手に収まった
「失敬な!私が悪役のような言い方を!」
「は?実際そうだろ。清藤ファンクラブ30人に、清藤にプライドをズタボロにされて向きになった男だぞ。どう考えてもお前が悪い」
「どう考えても私悪くないよね!?」
まあ、コイツに悪気がなかったのは重々承知している
清藤は回りから黒髪美少女と弄ばれ、いつの間にか作られた『彼女にしたいランキング』という選ばれた本人達からしたら迷惑にしかならないようなランキングで1位になっていた
お陰で勝手にファンクラブが設立していたのだ
しかも中々に執着深く、清藤が俺にストーカー被害を相談するぐらいだ。そのせいで俺が彼氏疑惑を持たれてこっちまで被害(実質、怪我もなかったが)を被った
「第一、あれ私が認定してないし完全否定接触拒否なんだよ!あ、あと、ほら剣道の試合なんだから真剣にしないと迷惑でしょ!結構な実力者って聞いてたからちょっと本気出しちゃったの!」
それ、『ちょっとの本気で倒せるくらい弱かったの』に聞こえるのだが………
「ったく、木刀は返したからな」
「それにしてもよく取れたわね。変なところに落ちるかと思ってた」
「ちょっと動いたらどうにかなったよ」
そうそう、脳天一直線コースだったのを右に一歩進んでどうにかしたからな
●●●
さて、お楽しみはこれからだ
目の前には一人のの青年がいる。先程のファンクラブの一員だ。部屋の中には俺と彼、そして付き添いとしてイヤホンをして音楽を聴いている邪道しかいない
この前に校長先生、学年主任、邪道を巻き込んだ話し合いにより、今回の計画者全員一人ずつ謝罪の時間を設けられている
「ごめんなさい」
「心がこもっていない」
「ごめんなさい」
「言い方が変」
「ごめんなさい」
「ふてくされてる。もう一度」
「ごめんなさい」
「態度が悪い」
「ごめんなさい」
「目を見てない」
「ごめんなさい」
「雑」
「ごめんなさい」
「ウザがってちゃ駄目」
「ごめんなさい」
「心が浮わついている」
「いい加減にしろ!」
彼はイスを投げ出し立ち上がる。その様子を見た邪道は無言のまま聞いている音楽のボリュームを上げる
そして俺は笑みを浮かべて言う
「じゃあ、話を聞いてくれるなら謝らなくていいよ」
それは黒い漆黒の笑顔
応答にもはや興味などなく静かに耳の近くに口を寄せる
「まず、死んだらいいと思うよ。非公認のファンクラブに入って仲間と和気あいあいと話し合うのは罪じゃないと思うけど、周りから見たら変態集団の集まりなんだよね。すごく気持ち悪い。気分害する。いっそ消えて消滅してほしいくらい。それみんな思ってるから友達グループからはずされているの気づいてないの?ボッチは自分がボッチだと気がつかないって聞くけど本当だったんだね。いや、君の場合ボッチ同士が集まってるからまだマシなのかもしれない。けどボッチはボッチなんだよ。どんだけ集まってもボッチなんだよ。人の輪には入れない。協調性がない歯止めが聞かない。みんなでやれば怖くない。さらに悪化してるよね。第一、俺が清藤に話しかけられたのはお前らが気色悪いからどうにかしたいっていう相談されてたんだよ。自分達が話す原因つくっておいて、それが嫌だから暴力に訴えるとか愚の骨頂だよね。しかも作戦も愚策で戦い方も愚直で数の利でさえもうまく扱えない愚かさ、ここまで駄目な奴初めて見たよ君らの事を愚か者というのだろうね。しかも30人も用意しといてたった1人に負けるとか一生の笑い者、もしかしたら学校中で後ろ指指されるかもね。『あれが多人数で襲ってたった1人に返り討ちにされる弱者です』ってな。しかもさっきまで変態集団だったのに今回の件で犯罪予備軍扱いだよ。良かったね格上げ。これから誰も寄り付かないよ。だからね何が言いたいかって言うと、居るだけで気分害する悪化してるボッチで愚策で愚直な愚か者の弱者である変態な犯罪予備軍に生きている価値あるの?無いよね?結論最初に言ったけど、死んだらいいと思うよ」
耳から離れる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
そして目の前には現れたのは暴言の数々に傷つき灰人と化した状態でも何かに逃れたい一心で謝り続ける青年だった
これこそ俺の武器『心』の真の力である
「………おい、これ治るのか?」
「安心しろ1週間で治る。この手の加減は得意なんだ」
『これで加減してるのかよ』
「これでも壁や地面に頭を打ち付けてないだけありがたいと思ってほしいところなんだけどな。あと『心眼』使うな」
「素直な心の声だったのですが?」
そしてそのまま残り29人廃人にした
この頃から『触らぬ新木に祟りなし』という裏学訓が生まれたらしい
●蛇足●
「そういや、自転車壊れたよな。送っていってやるよ」
「あ、もしもし龍か?今から学校に迎えに来て」
「俺の息子に頼るな!そんなに俺の車嫌か!?」
「嫌だ」
「クソが!ちゃっちゃと乗れ!」
「断固拒否する。……あれ?龍?おい、ちょ、待て切るな。この車に乗りたく無いんだよっ」
真)さて、今回は俺の無双話だったがいかがだったかな?
春)私が悪かったです。許して下さい
真)あれ?さっきまで「私は悪くない」って言ってたのにどうした?
作)許せ………読者、いや許して下さい読者様ぁ!!
真)あ………(察し)