夜、12時
「あ"ーー疲れた。ユウなんでそんなに体力あるんだよ」
部屋にある2段ベッドにダイブしたリュウを視界に入れながら、僕は薄く笑みを作る。
「おかしいな、体力には自信ないんだけど」
「嘘だろ、汗ひとつかいてねーじゃん」
「汗、かかない体質なんだよ」
僕とは対照的に、黒くやけた肌が湿って水滴まで付けているコイツにタオルを投げる。
パシッ、と良い音が響いてニヤリと笑うコイツが憎たらしい…
格好つけやがって
「お前、太ったんじゃねーの?
汗かきすぎなんだよブタ」
「はぁ?!ユウが細すぎるんだって。
しかも白いし。本当に俺と同じ仕事場なのかよ…筋肉もねーしよ」
上体だけ起こして、僕の二の腕に伸びた手をピシャリとはたき落とす。
リュウの触り方、なんか気持ち悪いんだよ…
なんて正直に言ったら、きっとこいつは拗ねるけど。
「今日はどうする?リカ達の部屋、行く?」
「んー、いや。今日はこっちに来てもらおうぜ」
疲れたし。
なんて言葉を漏らしたリュウにデコピンをお見舞いする。
額を抑えながら、何か言いたげな視線を送るこいつを無視して、靴を履く準備を進めた。
「疲れてるのはあいつらもだろ。
なら、あいつらより少しは体力の多い僕たちが移動したほうがいいに決まってる」
「お前の場合、どっちが体力あるのか不安だけどな」
「余計なお世話だ」
そらそーだ。
豪快なリュウの笑い声が部屋に響く。
僕は時計を確認して、12時を指した丁度に重たいドアを開けた。
【島のルール:夜、12時以降は出歩かない】
「いくぞ」
コクッと頷きあって、音を立てないように移動を開始する。
12時以降、警察はいつも何か話し合いをしていて、街を見回らない。
【島のルール2:異性の部屋に立ち入らない】
この隙をついて、僕たちはまさに異性の部屋を訪れる。