少しだけ違う夜
夕飯の時間まで、私は何も何も見つけることが出来ないまま、歩き回っていた。
これに何の意味があるのか、なんて私にも答えられない。けれど私に出来る事なんて、元から限られているから、したいことをするんだ。
夕飯にも、幸と咲は現れない、食事の場に居るのはいつだって私と桜だけだ。
彼女達が意図的に避けているのか、偶然か。前者だと思うほどにため息が出そうになる。
それならばと、私もいつも通りに桜へ言葉を。
一緒に食事がしたいと、それだけを伝える。
桜もいつも通りに、柔らかく、私がなるべく傷つかないようにと、謝罪の言葉を告げる。
そう、いつも通りに、私は一人で食事をする。
食事が終わり、美味しかったと桜に伝えると、桜も笑顔でそれに応えてくれる。
そして、この家の一日が、また終わるのだと、思っていた。
桜は私と別れる時に、いつも通りとは違う、言葉を私に伝えた。
「今夜、お話があります。就寝前に一度、お嬢様の部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか」
「……うん」
「ありがとうございます」
私は、桜との時間が少しでも増えることが嬉しくて、了承した。
後に、何を告げられるのか、私は分かっていなかったけれど。
お風呂に入って、一日にする事を全て終わらせると、私は桜が来るまでの間、いつものように窓の傍で月を眺める。
どうしてか、ここから見える月はいつも綺麗に丸くて、まるで偽物でも見せられているようだった。
だけど私はこの月をどうしても見てしまう。
とても、とても、綺麗で。私が求めているものがそこにあるような気がした。
それから暫くの間、月を眺めていると、部屋の向こうから桜の声がした。
「お嬢様、遅くなってしまい、申し訳ありません。まだ起きていらっしゃいますか?」
「……うん、起きてるよ。私は大丈夫だから、部屋、入ってもいいよ」
そう言うと、桜は静かに、私の部屋に入ってくる。
なんだか、夜に私の部屋で桜に会うのは、久しぶりのような気がした。
私はベッドの方へ行き、そのままベッドに腰を下ろす。
そこで桜に手招きをして、ベッドの上に座るようにと催促をした。
桜は少しだけ困ったような顔をしていたが、私が折れる様子がないのを見て、私の横にそっと腰を下ろした。
「それで、今日は何の話があるの?」
そう言うと私は桜の方に体を倒して、桜の温もりを感じることにした。
あまり接触を許してくれない桜にしては珍しく、私をそのまま受け入れてくれた。
「実は、話というのはお嬢様の見ている、夢についてなんです」
「え?」
私は、少し驚いた。
私の夢の話を、普段から桜は極力避けていたからだ。
その桜が、夢について、話があると言ってきた。
いつも通りだと思っていた今日は、最後の最後で、いつもとは違う日になるようで、私は少しだけ、顔の力が抜けるような感じがした。




