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窓の外の世界

 私は日々、退屈な毎日を過ごしている。

 この家に四人しか住んでいないということに加えて、桜以外の二人が私に好意的ではないことも一つの理由だ。

 だから、いつの間にか新しく本が追加されていたりする図書室で本を読んだりするけれど、特に頭が良いわけではない私は、簡単なお話が書いてある本を読むことばかりだ。

 図書室以外での暇つぶしといえば、この家を探検することだった。けれど多くの日々を過ごしてしまった私は、すでにほとんどの部屋を散策し終えてしまっている。それでも、歩きまわってみると、小さな発見があったりするから、侮れない。

 外へ出る事が出来ないというのもあって、私はこういった事を繰り返すしか、出来ない。

 日中は、桜も何やら忙しそうにしていて、私が我儘を言うのは気が引けるし、咲や幸はそもそも見つからないことも多い。

 だから私は、ほとんどの時間を一人で過ごすしかない。


 私はこの日、なんだか図書室で本を読む気にもなれず、家の中を散歩することにした。

 外へ出られない私にも、運動は大切だし、体を動かすことはきっと、いいことだ。


 この家には、多くの部屋が用意されている。

 そのほとんどが同じような形になっていて、同じように家具が設置されている。

 私達以外が住むことは無いと思うのだけれど、その疑問には桜でさえ答えてはくれなかった。


 誰も居ない廊下を歩きまわっていると、窓の外に猫がいるのを見つけた。

 この家の周りには多くの木々が生えていて、まるで周囲に人の気配が無い。

 代わりに、野生の動物や鳥をよく見るのだけれど、犬や猫なんていった動物を見ることは滅多にない。

 私はそれが珍しく感じて、窓の傍で観察することにした。


「……貴方は、どこからやってきたの?」

 家の外を歩きまわる猫はこちらに見向きもしない。

 ただ、自由に。まるで私に見せつけるかのように。

「……貴方は、どこへ行くの?」

 誰も、答えてはくれない。

 窓の向こうの猫は、何も答えずに茂みの中に消えていく。

「私も、外で……外に出て、歩きまわりたいよ。もう一度、自由に――」

「――外は、だめだよ」

「……幸」


 いつの間にか、幸が傍にいた。

 いつだってそう。

 私がこの家の玄関や窓の傍に近づくと、決まって使用人の中の誰かがやってくる。

 どうしてか、私の部屋の窓だけは、近づいても誰もやってくることはないのだけれど。

 そして、今回やってきたのは、幸だった。


「幸、どうして私は外に出られないの? 貴方は知ってる?」

「何回同じ事を聞けば気が済むんだ? そんなの、あんたが一番知ってるはずさ。私達は本当の理由を知らされちゃいない。ただこの場所であんたを外に出さないようにと命令されているだけさ。……桜は、何か知っているのかもしれないけどさ」

「私が……一番知ってる」

 それだけを伝えると、幸はどこかへ行ってしまった。まだ仕事が残っているのだろう。


……同じ質問を何度も何度も聞いてきた。けれど幸に聞いても、咲に聞いても、返ってくるのは毎回、同じ答えだ。

 私自身が、答えを持っているはずだと。

 普段、きちんと会話を交わすことがほとんどない幸や咲も、この質問にだけは、答えてくれる。

 二人にした質問と同じように、桜に質問をすると、毎回いいようにはぐらかされてしまう。

 幸や咲とは違った反応だった。

 もしも、桜が答えを知っているのだというのなら、いつか、話してくれるのだろうか。

――私達が、この場所に居る理由を。

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