いつも通りの朝
目を開くと、そこはいつもの私の部屋だった。
また、夢を見た。
私自身が望んだわけじゃない。けれど眠ってしまえば必ずやってくるのだ。
そして目が覚めた後に、毎回のように思うのだ。
"夢の中に出てくる人達は、幸せだったのだろうか"と。
私が見る夢は、私が思う幸せの形を手に入れる事は無く、まるで不幸に吸い寄せられるようだった。
そして私は思うのだ。私にとっての幸せは、不幸は、どこにあるのだろう、と。
答えを見つけられそうもない考えを巡らせていると、部屋の扉を軽くノックする音が聞こえた。
「お嬢様、朝です。もう起きていらっしゃいますか?」
「桜?うん、もう起きてる。入ってきてもいいよ」
私がそう言うと、部屋の扉を開いて、この家に居る三人の使用人の一人、桜が部屋の中に入ってくる。
桜は、私が自然体で話すことが出来るこの家で唯一人の人間だ。
……他の二人には、私は嫌われているようだから。
「……改めて、おはようございます。お嬢様」
「二人きりの時は、名前で読んでくれていいのに。おはよう、桜」
「私にとって、お嬢様はお嬢様です。もしかして、今日も何か夢を見たのですか?」
「あぁ……うん。いつもの事だけど、あんまり気分の良い内容じゃないから、あんまり眠った気になれないんだよね」
「……そうですか」
私が夢の話をすると、いつも彼女は黙ってしまう。
何かを考えているようにも見えるけれど、夢の中とは違って私に彼女の考えている事は分からない。
もしも、悩みがあるのなら私はいくらでも話を聞きたい。
この場所で私が私でいられるのは、彼女がいてくれるおかげなのだから。
……少しの間部屋の中が静かさに包まれてていた。
私は、この時間にさえ最近は幸せを感じるようになっていた。
何故かって、彼女のこの沈黙は、私を思っての事だと信じているからだ。
それがただ、嬉しいのだ。
そして彼女が言葉を口にすることで、いつもこの時間は終わる。
「申し訳ありません。また考え事をしてしまって。あまり遅くならないうちに朝御飯を食べにいらしてくださいね。」
「着替えは手伝ってくれないの?」
「……そこは自分でしてくださると」
「そっか、じゃあまた後でね」
「はい。それでは、失礼します」
そう言って彼女は部屋を後にした。
使用人と言っても、私の食事の用意や広い屋内の掃除等の良くある仕事以外はある程度自由なのだ。
あくまでも私が出来る限り不自由の無いように生活出来るようにする。ということが彼女達の仕事だ。
そしてそれを監視する者も居ない。
定期的に、仕事を怠っていないかを確認する人間がやってくるが、私にはそれさえも適当に見えてしまう。
使用人と共にこの場所に私を留めることが目的のようだから、それも仕方ないのかもしれないけれど。
……全部、全部、私の想像でしか無いけれど。
たまには、幸せな結末を迎える夢を見たいなぁ。なんてことを思いつつ、一日を過ごす準備をして、私は部屋を出る。
今日もまた、一日が始まる。




