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終わりのない歌(2)

 僕はその時、確かに少女と会話をした。

 とても短いやり取りだったけれど。

 ただ、ただ。君の歌う歌が好きなのだと。

 それだけを少女に伝えたのだ。

 問われるままに。


 次にその場所へやってきた時にも、少女は変わらずに同じ場所で歌を歌っていた。

 少しだけ違っていたのは、少女の歌を僕が聞きに来た事に気づくと、微笑んでくれるようになったということくらいだ。

 それを僕はただ受け入れて、その度に少女の歌を聞いた。

 けれどそれでも、少女の歌に足を止める者は僕の他に誰も居ない。

 まるで少女の歌が他の誰にも聞こえていないかのように感じられるほどに。


 誰も、誰もが、この素敵な歌に気づかない。

 こんなにも素敵な歌声にさえ。

 だから、せめて僕だけでも、少女の歌を聞き続けようと思った。


……そんな風に思っていたのに。

 どうしてだろう、その場所には、少女の姿がない。

 毎日同じ場所で、歌を歌っていた少女が。

 体調を崩してしまったのだろうか。

 何か悪い事件に巻き込まれてしまったのだろうか。

 色々な考えが僕の頭の中で渦巻いていく。


 けれどこの事態に気づく者は僕以外は居ない。

 誰もが少女の歌に耳を傾けなかったのだから。

 誰も、誰も居ないのだ。

――僕は気づいてしまった。

 そもそも、この場所は誰も通ってなどいなかったのだと。

 現にいまも、ほら、誰もこの道を通らない。

 人の気配も、音も、何もしない。


 この場所にあるのは、地面にあいた大きな大きな、穴だけだった。

 底は真っ暗で、何も見えない。

 穴からは、風の音さえもしない。

 ただ、その場所には穴があるだけだった。

 他には、何も、無かったのだ。


……最初から?

――いいや、僕はあの歌を知っている。

 この耳で、目で、沢山聞いたんだ。

 だから彼女はこの場所に、間違いなく、存在したんだ。


 それから僕は、毎日、この場所に通い続けた。

 少女の歌をもう一度聞くために。

 このどうしてか誰も通ることの無い道の隅っこで。

 少女がまた、僕に歌を口ずさんでくれることを願って。

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