第七話
ガルーダは体を小刻みに震わせ、痙攣していた。
ナーガはガルーダの顔を仰のかせ、その唇におのれの唇をあわせた。
いくばく、そうしていたか。
ガルーダは、びくりと肩を震わせ激しく咳き込んだ。
ナーガは寝台のわきにある椅子に腰かけ、ガルーダの苦しげなさまを見つめた。
「こんな、こんな珠なんていらない。なんでぼくだけ、こんな思いをしなければならないのさ」
ガルーダは寝台の上にうずくまり、しゃくりあげた。
「ひどい、ひどい!こんなの、あんまりだ」
信じていたのに、とガルーダはつづけた。
ナーガはおのれの弱さに驚愕した。
「すまなかった。ガルーダ」
ガルーダは驚いてナーガを見た。
涙にぬれた目もとは、くっきりとして愛らしい。表情は怯えでこわばっていたが、幼い子ども特有の好奇心の色も、そこにはあった。
「いいよ、もう。あやまってくれたから、おじさんはいい人だ」
そう言って、にっこりと笑うではないか。
先ほど感じた清さは、まことであった。
この子どもは心ばかりか体も、無垢なままだったのだ。
これほどまでに美しい子どもを、なぜカーマは抱かぬのか。
―――惚れたか・・・
「おじさんも、やさしい人だね。カーマもだ。カーマも、ぼくを慈しんでくれる」
「その青年を、おまえは好きなのだな」
うん、とガルーダは頷いた。
ナーガは笑い、ガルーダの頭に手をおいた。
ガルーダは照れたように体をよじった。
「おじさん、とうさんみたいだ。とうさんとかあさんが生きてたら、きっと、こうしてくれたよね」
ナーガはガルーダを抱きよせた。
敵であるはずのこの子どもを、憐れまずにはいられなかった。
幼い子どもがたったひとりで、禍の根元ともいうべき宝珠を守り、誰からも顧みられず生きてきた、その心中はどんなだっただろう。