表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

第三話

「う・・・」

 目を開けると、そこは冷えた石の部屋であった。

 明かりは天井に穿たれた小さな窓からしか、射し込んでこない。

 体を動かそうとして、ガルーダは両手を鎖に繋がれていることに気づいた。

「目が覚めたようだな」

 声をかけられ、ガルーダはそちらを向いた。

 三人の男が、入り口のところに立っている。皆、いやに細い目とひょろ長い体躯をしている。

 ガルーダは身震いした。

 蛇族には、こんな陰気な顔をした者がうじゃうじゃいると思うと、ガルーダはあらためて独りぼっちだということを実感し、泣きたくなった。

「さっきはよくも、やってくれたな。見ろ。オレの顔をこんなにしやがって」

 そう言う男の顔には、無残にも五本の爪痕がついている。もっとも、傷のあるなしに関係なく、見映えのよい顔ではないのだが。

「くそっ。なんだ、そのツラは。べそなんかかきやがって。さあ、どこに傷をつけてほしい?」

 短剣をつきつけられ、ガルーダは本当に涙をこぼした。

「子ども相手に大人気ないとは思わないか、カーリヤよ」

 重みのある声であった。

 三人のうしろから、数人の配下をつれ現れた男は、ひと目で、一族の長なのだとわかった。

 威厳がある。

 なにより、日に焼けた肌におおわれた隆々とした筋肉。すらりと伸びた背。精気あふれる両眼。

 その男の風格が、ただ者ではないと告げている。

「ナーガ様・・・」

 三人の男は畏れおののき、うしろにさがった。

 ナーガはガルーダを見つめた。

 ガルーダは、ある衝動を必死に抑えていた。

 ―――変身してしまう。

 今ガルーダの体は、いつもの人間の姿であった。だが、肩のあたりが熱い。そこから、ざわざわと羽毛が広がりつつある。

 ナーガはガルーダの肩にすっと触れた。

 ガルーダはあっ、と叫ぶと体を前に曲げようとした。

 しかし、頭上で腕をひとまとめにされ鎖を巻かれているため、首を垂れることしかできなかった。

「おお」

 数人が驚きの呻きをあげた。

 ガルーダは変身した。

 黒い翼と鋭い爪をもつ、半人半鳥の姿に―――。

「見よ。これがわれらをかくのごとき身の上に落としめた怪鳥の姿だ。われらの安穏な日々を、再び奪いにきた悪魔の姿だ」

 ガルーダは荒い息をついた。

 変身するのはこれで三度目だ。一度目は、もっと幼かったとき。二度目は先ほど、そして今。

 慣れない負担に体は悲鳴をあげている。背中がずきずきと痛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ