第十六話
ガルーダは身じろぎした。
動いたせいで、嫌な感触がからだ中をはいまわり、吐き気をもよおしそうになった。
ガルーダは目を閉じた。
幼かったとき、朝に日に働かされ疲れきったガルーダは、仕事の途中で倒れてしまったのだ。
誰も、顧みてはくれなかった。
水を―――
つぶやきは、乾いたあつい砂のうえを、虚しく、はうだけであった。
ふと、日陰ができた。
やっとの思いで見あげれば、何者かが陽を遮るようにしてガルーダの様子をうかがっていた。
まだ、若い男だったような気がする。
着ているものは砂だらけ泥だらけであったが、僧のまとう衣だった。
僧は、うしろに控えている何人かの男のひとりに、二言三言ささやいた。
しばらくして、うつわにいれられた水がもってこられ、若い僧はガルーダにのませてやった。
ただの水のはずなのに、甘露のように甘かった。
―――ありがとう。
ガルーダは言った。
僧は笑ってうなずいた。
その瞳は、澄みきっていた。
彼はガルーダの眼を見つめ、宝珠を見た。
そして、宝珠に触れ、言葉を紡いだ。
美しい声以上に、美しい言葉であった。
あの時ガルーダは、頬に涙がつたうのを感じたのだ。
いま、ガルーダは目を閉じている。
それを、ゆっくりと開いていった。
「如意宝珠・・・」
ガルーダは、小さくつぶやいた。




