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第十三話

 ナーガ。あれが、ナーガなのか。

 天井と床から伸びた鎖で体を固定され、その無防備な体にはおびただしいほどの、拷問によってできた傷。

 唇はぱっくりと裂け血が滲み、殴打によってできた内出血の赤紫の痣は全身余すところなく広がっている。背の肉はささくれ立ち、血液ばかりか白色(はくしょく)をおびた体液までも流れ出ていた。

 そんな凄惨な状況を、カーマは数人の牢屋番とともに楽しげに見つめているではないか。

 カーマはナーガの長い髪を手に巻きつけ、彼を仰のかせた。

 ちょうど、灯りに照らされるかたちとなったナーガの顔を見たとき、ガルーダはわれを忘れ絶叫した。

「おじさんっ!」

 ガルーダは無我夢中で駆けよった。

「ガルーダ」

 カーマはつぶやくように言って目を細めた。

「ああっ、こんな、こんな・・・」

 涙で胸がつまり、それ以上言葉は出なかった。

 ガルーダは、ナーガの血まみれの顔に恐る恐る触れた。

 ああ、ナーガの顔―――彼の両目は潰されていた。

 おぞましいほどの水疱と、じくじくとした血膿にまみれたそれは、ひと目で火傷によるものだとわかる。

 熱によって破壊された表皮は焦げつき、そのしたの肉は赤々と蕩け、煮え爆ぜた眼球からあふれたおびただしいほどの液体は、ガルーダの腕にまで伝ってきた。

「お、おじさん・・・」

「目ばかりではないぞ、ガルーダ。そやつの両脚はもう使いものにはなるまい」

 そう言ったカーマの表情は凄艶であった。

 踊り狂う火影が浮きあがらせる、絶美の姿。

「どうして?カーマ。宝珠は渡したじゃないか。なぜこんなことを・・・」

「なぜ・・・」

 カーマは凍てた眼差しをガルーダに向け、くり返した。

「これが本当の私なのだ」

 カーマの顔に、凄絶な笑みが浮かんだ。

 ガルーダは背筋が寒くなるのを感じた。

 時は刻むことを忘れたかのように静止する。

 カーマの腕が、ガルーダを捕らえた。

 シャン―――という涼やかな音は、ナーガにはガルーダの悲鳴のように聞こえた。

 奔雷は、大地を轟かせた。

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