第十二話
なんだろう・・・。
ガルーダはふと、部屋の中を見回した。
灯りは寝台の横においてある蝋燭しかなく、光りのとどかない範囲は真っ暗であった。
ガルーダはおのれの肩を抱いた。
先ほどから震えがとまらない。
カーマの言葉に、まだ高ぶっているのだろうか。
そうだ。カーマは今宵、自分を愛してくれるのだ。今まで、どれだけ待ちこがれたことか。
だが―――
一生をかけて慕うであろう人ができる。蛇族の長である、あの人も助かる。だのに、なぜこんなにも不安なのだろう。
胸に手をやり、宝珠がないことに気づいた。カーマに渡したのだ。ナーガを助けるために。
ガルーダは耳をふさいだ。
ナーガの声が、聞こえたような気がした。
「おじさん・・・!」
ガルーダは部屋をとび出した。
暗い廊下を走った。
冷気といってよいほどに、通り過ぎていく空気は冷たかった。
ガルーダは階段に足をかけた。
底に広がるは、悪魔のうごめきのような闇。
嫌な予感がした。
―――どうか、どうかちがっていて・・・
ガルーダは目をつむり、ゆっくりと階段を降りていった。
どれだけ足を動かそうとも、地下はまだ先だ。
いったいどれほど深いのか。
だが、鼻をかすめる湿り気をおびた黴のにおいは、地下につくられた房まであとすこしだと告げていた。
明かりが見えた。
戸の隙間から漏れたそれは、ゆらゆらと不気味に揺れている。
その縦に一文字の隙間から中を覗いた瞬間、ガルーダは倒れてしまいそうになるのを感じた。