第十一話
ガルーダは何度も何度も、カーマに哀願した。
なぜ、なぜ、こんなことをするのか。あの優しかったカーマが―――。
皆殺しなど、あまりにも惨い。
あの民はただ、平穏に暮らしたいだけなのに。
「カーマ、カーマ。お願いだ。おじさんを助けて!なにも悪いことなんかしていないじゃないか。約束をやぶるなんて、ひどいっ」
カーマはなにも言わず、ガルーダを見下ろした。
この思いはなんだ?
大地の轟きが胸にこだましているかのような、六腑を焼きごてで掻きまわされたような、この感情はなんなのだ。
「穢らわしい。互いに相容れぬ種族の長に心を許すなど」
「いけないことなのっ?おじさんはぼくを、あわれんでくれた。やさしくしてくれた。ぼくはそれに報いたい!お願い。なんだってするから、カーマっ」
カーマは目を細めた。
「なんでもすると?」
彼はガルーダにずいと寄ると、その肩をつかんだ。
「ならば、その宝珠を私にくれるか。如意宝珠を、この私にくれるか」
ガルーダは首飾りのとめ具に指をかけた。
宝珠よ、宝珠。どうか、はずれておくれ。おのれは、なにも望みはしない。ただ、あの人を助けたい。
それだけを、このときガルーダは切に願った。
「おお・・・」
ガルーダの胸から滑りおちた首飾りは、涼やかな音とともに、カーマの手中にはいった。
「なんと美しいことか。これが、如意宝珠・・・」
ガルーダはおのれの首へ手をやった。
はずれた。
物心ついた頃には、もう、おのが胸に輝いていた珠が―――。
「ガルーダよ、私の可愛いガルーダ」
そう言い、カーマはガルーダの形のよい顔に、手をそえた。
「カーマ、ぼくは・・・」
「ぼくなどと言ってはいけない。今宵、おまえは本当のおまえを知るのだから」