Part Ⅲ
なんだかよく分からないが、妖狼の屋敷へ連れて行かれた。
「…で、なんで俺達をこんな場所まで連れてきたんだ?」
ちなみにイフリートはいまだに寝ている。
「お前はいつまで寝てるんだよ!!」
「んー…? あれ、ココ何処?」
『なー…話してええか…?』
「「あ、どうぞどうぞ」」
二匹は二人に、まず名を名乗った。
『ウチは“青空”。この山の主、“西山狼神”っちゅう者や』
『私は“紅椿”。東の山の主、“東山狐神”と申します』
「ふーん…山神ねぇ…」
『お前さん等、元は人に近い姿をしておったんやろ?』
「よく知ってんな…」
『仮の姿っちゅうもんは、要はその世界に適応し易い姿に変わることやな。
お前さん等の場合、魔力が大き過ぎたんでしうなってしもうたんや』
「おう。全然意味が分からねぇ」
『まあ分からんでもええわ』
その時、座敷の外から声がした。
「失礼します」
『…入り』
障子が開き、青い着物を着た少年が入る。
「母上。例のことで…
…って、また元の姿になっておられるのですか…紅椿様まで」
『おう。すまんな』
『すっかり忘れておりましたわ』
思い出したかのように、二人は人の姿に変わる。
『んで、どうやった“瑠璃”』
「はい。里の者に、噂を流すように伝えました」
『どんな噂や?』
「その辺りは里の者に任せました」
『…まあ、ええか』
「…おーい…一体何の話だ…?」
青空と瑠璃の会話にイブリースが口を挟む。
「…誰だ、貴様」
「…あ?」
初対面にもかかわらず、二人は睨み合っている。
『止めんか…』
「ちょっ…姉さん…いきなり初対面でそれは…」
「…母上、僕はこれで失礼します」
瑠璃はそのまま立ち去った。
イブリースは、去っていく彼の背を思いっきり睨み付ける。
「何だあいつは…なんか物凄く腹立つ…」
『ああ、ウチの子や』
「「はあっ!?」」
青空の言葉に、驚きを隠せずにいた。
(いやさっきから言ってたやんか…)
『…用事がある以外であんま人前に出かがらんから、多少失礼なとこあるんや。
許してやってくれ』
「…けどn「あ、そういえば」…おい」
イフリートが唐突に何かを思い出したらしく、イブリースに話を重ねた。
「さっき二人は、人に変化していたよな」
『ええ、まあ…』
「もしかしたら…本来の姿に戻れなくても、それに近い姿にはなれんじゃないのか?」
「…あ」
『まあ、お前さん等の魔力ぐらいなら可能だとは思うで』
『そうですわね』
「…なら、教えてくれ。俺達がお前らみたいに、人に変化できる方法」
イブリースが二人に頼むと、二人は相談し始める。
『…どうする?』
『そうですね…もうそろそろ、深緋も薄緋も独り立ちする頃ですし…』
案外早く話が終わったらしく、イブリース達に話す。
『分かりました。これからあなた方には、私のもとで修行していただきます』