雲への投影
視界には空しかない。
こんな都会の中で邪魔をするものが何もなく空を見上げることが出来るのは珍しい。
いい場所を見つけることが出来た。
「うちの学校の屋上がこんなに広かったなんてな」
「…そういえばあんたいたんだっけ」
隣から聞こえて来た声に不機嫌になっとしまう。しかたない、せっかく雲が流れていく様をのんびりと眺めていたのに邪魔をされたのだ。
「チョコだな、チョコ」
「何が?」
唐突に言われてもわかるはずがなく、聞き返してみる。
「雲の形だよ。ほら、あの雲。板チョコっぽいじゃん」
彼が指を指した方を見てみると長方形に近い雲があった。
「あれを板チョコと思うあんたの感性が分からない」
食い意地がはりすぎている。
「じゃあ、何に見えるんだ?」
「四角」
「いや、物を言えよ。物を」
「…写真」
「それも凄い答えだな」
ぱっと思い付くものというのはやはり大切な物なのだと改めて思った。
だが、そこから考えると彼の大切な物はチョコレート。なんだか物悲しくなってきた。
都会の雲に想いを乗せた。
三題噺を使って初めて書いたもので、一際短い作品です。
女の子のざっくりした答え方が気に入ってたりします。
駄文を読んで下さりありがとうございました!
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