第三話
「ねぇ、一緒にグランツローゼ入ろ!」
アイリーンは明るい笑顔でそう言った。
「えっ……グランツローゼに……?」
困惑するマリベル。
まあ驚くよね……
しかもアイリーンがマリベルをグランツローゼに誘うなんてシナリオは無い。
が、今はなりふり構っていられない。
ラルフに出会うため、マリベルには何が何でもグランツローズに入ってもらわないと困るのだ。
「一緒に目指そうよ! きっと楽しいわ!」
多分アイリーンならこう言う。
アイリーンは単純で、楽観的で享楽的なお嬢様だ。
深く考えず思ったことはすぐ口に出る。
本編だとそれが嫌な方向に行くことも多いが。
「グランツローゼって、すごく大変そうなイメージがあって……私に入れるかどうか」
「大丈夫よ! あたしが教えてあげる!」
ああ我ながら根拠が皆無。
本当に楽観的なのよね、このキャラクター……
そんなことを思っていたらマリベルが口を開いた。
「で、できるだけ、やってみます……!」
「! そうこなくっちゃ!」
さて。
教えてあげると偉そうに言ったものの、ここは画面の向こう側ではない。
ボタン一つで学力が上がるなんてそんな都合のいいことはない。
地道に愚直に努力するしかないのだ。
そんなわけで特訓は正直言ってきつかった。
授業は毎日姿勢よく集中して聞き、放課後はマリベルと図書室で復習と予習。体術だっておろそかにしてはいけない。走り込みやストレッチもマリベルと共に行った。
ちょっとコマンド選択したらポンポンステータス上下してたのってめっちゃ楽だったんだなあと遠い目をする日々。
そして、二人図書室で勉強していたある日。
「あ、数学の本戻さないと……」
勉強が終わり片付け途中、マリベルがボソッと言った。
「ああ、じゃああたしが……」
言いかけて止まった。
「アイリーン?」
「……あっ、お化粧なおさなくっちゃ! ねぇ、あたしのも片付けておいて」
そう言って自分の借りたテキストもマリベルの本の上に置く。
うわ、今のムーブちょっと意地悪な令嬢っぽい。
若干申し訳なさを感じつつも、自分は図書室から出る。
そして扉の影から中の様子を見る。
だってこれから起きるのは……
「きゃっ、ご、ごめんなさい……」
「失礼。怪我はないか?」
そう! オルガとマリベルの接触イベント!
本を戻そうとウロウロしてるマリベルとオルガがぶつかって会話を交わす!
これがあるとグランツローゼ加入後のイベントも楽なのよねー
ナイスよマリベル!
「お……オルガ様と会話しちゃいました……!」
席に戻ってきたマリベルは顔が赤くなってる。
よし、いい感じだ。
「えぇ~、マリベルいいなぁー」
図書室から戻ってきたアイリーンは唇を尖らせた。
そしてアイリーンの目が光る。
「グランツローゼに入ったら……もっとオルガ様とお話できちゃうかもね」
「え、も、もっと……?」
マリベルが戸惑いの表情を見せた。
でも自分にはわかる。その表情に嬉しさも入ってるでしょ。
「だって新入生代表でスピーチしてたでしょ。オルガ様もきっとグランツローゼに加入するわ!」
「!」
マリベルにも動機が必要だ。
グランツローゼに確実に加入するため、己の研鑽を欠かさなくする動機が。
「……。もう少し、勉強頑張ってみようかな」
ぽつりとマリベルが言った。
よっし!
「じゃあ一緒に頑張りましょ!」
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文字通り死ぬ気で努力した結果。
前期末の試験結果は総合2位だった。
ちなみに3位はマリベル。
1位は当然オルガ。
とりあえず試験結果は二人とも合格ラインだ。
後は日頃の素行がどう見られているか……
そして数日後、各自に封書が届いた。
厚みのある上質な封筒。封蝋には校章が押されている。
アイリーンはそっと封を切る。
貴殿のグランツローゼへの加入を認める。
内容はそれだけだったが、アイリーンにとっては大きな一歩だった。
「アイリーン!」
マリベルの声だった。
笑顔でこちらに近づいてきている。手には例の封書。
おそらくマリベルも認められたのだろう。
よかった。ようやく本格的に動き出せる!




