夢幻の世界
その少女は絶望していた。 別に家庭環境が悪いとか、イジメられているとかそんな事は無い。温かな家に、多くはないが仲良くしてくれる友達。彼女は満たされている、ように思われる。
しかし迫りくる子供でいられる時間、直ぐに返さなければならないSNSに流行りに付いていけねば感じる疎外感。
彼女は人間関係と将来の不安に、そして昨日と変わらぬ今日が繰り返される日々に疲れ、退屈していた。
(何処でもいい、何でもいい。ただ、欲しい。この日々を変えてくれる刺激を)
とある日の晩秋の候、彼女はそう思いながら学校からの帰り道を歩いていた。
すると目の前で一匹の猫が毛づくろいをしていた。
(可愛いなぁ~)
彼女はそっと近づいた。触れてみようと思ったのだ。
猫はにゃあと鳴き声を上げて走って何処かに行こうとする。
彼女は猫を追いかけた。いつもの帰路を外れて。
「はぁはぁ・・・・・・あれ? おかしいな、見失っちゃった? ん? ここは?」
猫が入っていった林道を抜けた彼女は、辺り一面を夕日に照らされた、灯篭の有る古びた門の前に来た。彼女もまた夕日によって暖色に染められた。
その門の上には月が浮かんでいた。
「こんな所在ったんだ、立派だなぁ。ちょっと近くまで行ってみよう」
彼女は感心しつつ、開いている門の近くまで寄ってみた。すると、
「うっ・・・・・・」
突然の頭痛が彼女を襲った。
思わず目を閉じる彼女、その時彼女の頭の中に幾つもの映像が浮かんできた。
華を見て泣く少女、社の前に鎮座する二匹の狐、月を背に舟を漕ぐ兄弟、獅子の絵の前で踊る羽衣を纏う少女、不気味な遊園地、狼、鯨等々。
(なに・・・・・・今の?)
動揺する彼女、その時彼女の頭に声が聞こえた。
「君は手繰り寄せられたんだ、この場所に」
「手繰り・・・・・・寄せられた? えぇ・・・・・・誰?」
「おいでよ、この門の向こうへ。そしたらさっき見た世界が何かの答えが分かる」
(・・・・・・私を満たすモノがこの先に)
彼女は声に導かれるまま、先には何も無い筈の門の中に消えた。
ーようこそ、夢幻の世界へー




