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金平糖缶

夢幻の世界

作者: 羽黒鷹丸
掲載日:2026/03/01

 その少女は絶望していた。 別に家庭環境が悪いとか、イジメられているとかそんな事は無い。温かな家に、多くはないが仲良くしてくれる友達。彼女は満たされている、ように思われる。

 しかし迫りくる子供でいられる時間、直ぐに返さなければならないSNSに流行りに付いていけねば感じる疎外感。

 彼女は人間関係と将来の不安に、そして昨日と変わらぬ今日が繰り返される日々に疲れ、退屈していた。

(何処でもいい、何でもいい。ただ、欲しい。この日々を変えてくれる刺激を)

 とある日の晩秋の候、彼女はそう思いながら学校からの帰り道を歩いていた。

 すると目の前で一匹の猫が毛づくろいをしていた。

(可愛いなぁ~)

 彼女はそっと近づいた。触れてみようと思ったのだ。

 猫はにゃあと鳴き声を上げて走って何処かに行こうとする。

 彼女は猫を追いかけた。いつもの帰路を外れて。

「はぁはぁ・・・・・・あれ? おかしいな、見失っちゃった? ん? ここは?」

 猫が入っていった林道を抜けた彼女は、辺り一面を夕日に照らされた、灯篭の有る古びた門の前に来た。彼女もまた夕日によって暖色に染められた。

 その門の上には月が浮かんでいた。

「こんな所在ったんだ、立派だなぁ。ちょっと近くまで行ってみよう」

 彼女は感心しつつ、開いている門の近くまで寄ってみた。すると、

「うっ・・・・・・」

 突然の頭痛が彼女を襲った。

 思わず目を閉じる彼女、その時彼女の頭の中に幾つもの映像が浮かんできた。

 華を見て泣く少女、社の前に鎮座する二匹の狐、月を背に舟を漕ぐ兄弟、獅子の絵の前で踊る羽衣を纏う少女、不気味な遊園地、狼、鯨等々。

(なに・・・・・・今の?)

 動揺する彼女、その時彼女の頭に声が聞こえた。

「君は手繰り寄せられたんだ、この場所に」

「手繰り・・・・・・寄せられた? えぇ・・・・・・誰?」

「おいでよ、この門の向こうへ。そしたらさっき見た世界が何かの答えが分かる」

(・・・・・・私を満たすモノがこの先に)

 彼女は声に導かれるまま、先には何も無い筈の門の中に消えた。

ーようこそ、夢幻の世界へー

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