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わたしに! なんでも願いを叶える魔法の力を授けてください!

作者: シロクマ
掲載日:2026/02/21

 前略、わたしは異世界転生することになりました。


「あぁ女神様! わたしを望み通りに転生させてくれるだなんて、本当ですか!?」


「ええ、あなたには願いを叶える才能があります。さぁ、どんな来世を望みますか」


 わたしは考えました。

 これまでの人生はけっして悪いものではなかったけれど、このままじゃイヤ。


 わたしは素晴らしい来世を歩むにふさわしいと、女神様はおっしゃるのだもの。

 とびっきりの来世にしなくっちゃ。


「では、わたしに! なんでも願いを叶える魔法の力を授けてください! なんでも、そして何度でも願いを叶えられるように!」


「素敵ね。いいでしょう」


「けれど、そうね。魔法ついでに――」


「うん?」


「どうせ生まれ変わるなら、今よりさらにわたしを魅力的に! ハリウッドスターみたいになりたいの! 魔法がなくたって、だれもがわたしを求めてやまず、とっても人気者! けれど、そう、それでいてたったひとりの素敵な旦那様に巡り会える! そんな来世にしてください!」


 女神様は「ふむ……」と悩み、スマホらしきもので「ハリウッド…ハリウッド…」となにかお調べに。


「……よくわかりました。では、目を瞑って、祈りなさい」


「はい、女神様」


 わたしは祈る。

 もちろん、調子に乗って破滅したりするほど愚かじゃない。


「女神様、わたしはなんでも願いを叶える魔法の力を、私利私欲にばかり使わず、きっと人助けのために使うと誓います」


「よい心がけです。あなたの来世に、幸あらんことを」


 そうしてわたしは深い祈りに身を委ねて。

 来世へと旅立った――。










 異世界転生して、早五十年。

 ずっと真っ暗闇の中、わたしは老いることも飢えることも退屈することもなく。


 なにか、どこかに閉じ込められていた。

 五十年ずっと寝ていたのかしら。


 なんやら外が騒がしいことに気づいて、わたしは闇の中でうーんと背伸びする。

 すると闇の蓋が開いて、わたしはついに外に出ることができた。

 やっと素晴らしい来世がはじまる!


「やったぁ! 外に出られたわ!! ひゃっほーい!!」


 わたしは夢中で、空を舞うほど喜んだ。

 そうしているとひとりの美青年が、わたしのすがたに見惚れているのに気付いた。


「あら、美人……!」


 ああ。

 もしや、彼こそ運命の人!


 ああ。

 もしや、彼こそ素敵な旦那様!


「あなたがわたしを助けて下ったのですか!? ああ、お待ちしておりました」


「き、君は! 君は伝説の、願いを叶えるという――」


「ええ、わたしこそは、願いを叶えるという魔法少――」


「魔神か!!」


「……魔神!? ううん!?」


 わたしは魔神と呼ばれて、まわりを見回した。

 ここは砂漠のオアシス。ラクダやナツメヤシが目につき、そしてわたしのからだを辿ってみれば、このカラダはなんと金色に輝く魔法のランプからもくもくと湧いて出ていた。


 なんたるこっちゃ。


挿絵(By みてみん)



『あなたには願いを叶える才能があります』

『なんでも願いを叶える魔法の力を授けてください!』

『たったひとりの素敵な旦那様に巡り会える! そんな来世にしてください!』


「そーゆー解釈っ!?」


 想定の範囲外だ。

 まさか、ランプの魔神として転生することになるだなんて。


「……いや、待てよ。イケメン御主人様に願いを叶える魔神ときたら、これは、ひょっとして、薔薇色の人生ってやつじゃーないの……?! しゃー! サンキュー女神様!」


 わたしは転生の女神に心から感謝した。

 きっと前世での行いがよかったんだろう。そうに違いない。

 心機一転、わたしはランプの魔神として素敵に生きるのだ。


「こほん。さぁー御主人様! なんなりとご命令を! あなたの願いをなんでも、そして何度でも叶えて差し上げましょう!」


「では、魔神よ。ぼくの願いを叶えてくれ」


「はい、慎んで」


「ぼくを、愛する王女様と結婚させてほしい! おねがいだ、魔神!」


「……はぁー!?」


 意味不明。

 イケメン御主人様はこのハリウッドスターのような美しいランプの魔神に興味がない。


 おかしい。

 絶対におかしい。


「御主人様! わたしを見てください! なんでも願いを叶えられる魔法使いの美女ですよ! どうしてそんな願い事をおっしゃるんですか!?」


「び、美女だって……!?」


 御主人様は困惑しつつ、そっと湖を指さした。


「オアシスの水面はきっと真実を映すだろう。さぁ、自らの目で確かめておくれ」


「どれどれ」


 わたしは澄んだ湖の清らかな水面に、その美顔を映した。

 そして理解した。


 ああ、女神様――。

 貴方様こそ、願いを叶える才能にいささか欠けているのではないでしょうか。


『ハリウッドスターみたいになりたいの!』


 誰も、面白黒人の名男優ウィル・スミスにしてくれとは言ってません……。

お読みいただきありがとうございます。

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