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#6

「先輩先輩〜! ここが恵鞠の職場です!」


 彼女が指さすのは、昨日取り調べをされたビルだ。

 なんで俺手錠まで付けられたのに警察署じゃなくてこっち来させられたんだろ?


「先輩〜! 絶対に恵鞠から離れないでくださいね!」


 そう言って彼女は俺の腕を抱きしめた。


 そして、そのまま引っ張られるように建物の中に連れ込まれる。


 中に入ると、1階はエントランスホールで、至って普通のビルだった。

 そこからエレベーターに乗り、地下10階に降りる。

 東京って結構地下鉄とかあるから10階も地下を掘れるだなんて珍しい気がする。


 エレベーターが下った先、扉が開く。


 その視界に映ったのは、超巨大なロボの格納庫だった。


「これは……昨日のロボ?」


「いや、違います。これは別の人たちのロボ。スペアのロボです!」


「じゃあやっぱり弱いのか」


「はい!」


 正直なのはいいけど「はい!」はまずいんじゃないかな?


「おいおい、無能野郎が男連れてノコノコ帰って来やがったぜ!」


 突然、部屋の隅から3人の男がやってきた。

 宇宙服を着ていないときの宇宙飛行士みたいな、厚手で単色な装いだ。


「この前は派手にロボ破壊しやがってヨォ!」


「ただの弱いパイロットのくせに!」


 男達は口々に暴言を吐く。

 腕に抱きつく恵鞠の手が力んだ。


「あはは……先輩、あの人たち恵鞠ちょっと苦手なんですよ……多分恵鞠を殴ったら満足して黙ると思うんで、そこで待っててください」


 そう言いながらも、俺の腕を掴むその手は強く握りしめられ、離れない。


「……別に殴られる必要なんてない。少し待ってろ」


 そう言って、優しく彼女の腕を払い、3人の男に近づく。

 すると、3人のうちの1人が俺に近づいてきた。


「なんだお前、やる気か?」


 男は挑発的にそう言った。


「そっちがその気なら構わない。正当防衛になって楽だ」


「舐めた事言ってんじゃねぇ!」


 男は拳に体重を乗せて殴りかかる。


 それを避けるように一歩引くと、彼は盛大に地面に倒れた。


「滑稽」


「なんだと?」


 男は立ち上がり、再び殴りかかろうとした。


 そのとき、突然エレベーターが開いた!


「あら、喧嘩かしら?」


 それは、昨日助けた兵のうちの一人、マロン髪の女性だった。


「あぁ、”文風もんぶ”か」


「な、なんでわたしの名前を……!?」


 驚愕してすぐ、彼女は自らの頬を両手で優しく叩き、表情を戻す。

 そして、ゆっくりと俺らの方へと近づいて来た。


「今日は話があって来たんです」


「”栗ヶ楽(くりがら)”先輩! コイツが殴って来たんです!」


 盛大に転んでいた男は先ほどまで殴りかかろうとしていたその手で俺を指差し、すぐさま虚偽の報告をした。


「ふーん、わたしには君が殴りかかろうとしているように見えたけど」


 彼はその顔を逸らした。


「ま、ただの喧嘩って事で不問にしよう。それよりも、怜太郎君、恵鞠ちゃん、君たちに用があるの」


「恵鞠達に……ですか?」


 恵鞠がポカンとした表情で彼女に問い直した。


「うん。君たちにだよ。どこか近くの人がいない場所で話そっか」


「なら、作業場にしましょう。同じフロアですし、防音ですし、今日は博士が休みです」


「うん、わかった。それじゃあ2人とも行こっか。あなた達は筋トレでもしてて」


 そう言って、彼女と共に部屋を去る。

 先ほどイキっていて男達は、部屋の隅に戻りスクワットを始めたのだった。




 隣の部屋にやって来た。

 扉は厚くて、音を少しも漏らさなそうだ。

 また、部屋には金属を変形させる機械や、基盤を作る機械、それに多種多様なパーツなどが置いてある。

 きっとここは、ロボを作ったり改造したりするための場所なのだろう。


 彼女はその場にあった椅子に腰をかけた。


「さて、早速本題に入るわ。単刀直入に言うと、あなた達を監視、観察するよう命じられたの」


 監視と観察……それって潜入捜査的なやつじゃない? 言っちゃっていいの?


「だからね、わたしはしばらくあなた達と同じ部屋で寝食を過ごすことになるわ。これからよろしくね」


「ま、待て! あまりにも急だし、俺に関してはそれに従う義務ないじゃねぇか! 恵鞠の家だって昨日たまたま泊めてもらっただけだし!」


「そうですよ! 先輩は無関係です!」


 2人で講義をすると、彼女は軽くため息をつき、小さな声で言った。


「恵鞠ちゃん、給料上げちゃうよ」


「!?」


 あからさまに恵鞠の表情に動揺が走った!


「さらに、食費支援もしちゃう」


「!?!?」


 あ、ダメだこれ。あとひと押しで堕ちる。


「さらに、社員食堂、無料で使わせてあげちゃう」


「んひゃぁ! 文ちゃん先輩! これから3人で頑張りましょうね!」


 彼女の目は今までで1番キラキラしている!


「いや、だとしても俺従う義務ねぇからな!」


「それじゃ、しばらくの間よろしくね」


「はい! 文ちゃん先輩!」


 俺に人権はないのか?

 一回死んでるからなかったわ。


「改めて自己紹介、わたしは”栗ヶ楽(くりがら) 文風もんぶ”。特装隊の隊長で趣味は料理とパズル。よろしくね」


 ごめんだけど知ってる。やっぱ絶対に前世の知り合いだわ。

 俺は転生して姿形が変わっちゃったから、相手からは気づかれないだろうけど。


「じゃあ便乗して恵鞠も! “笹羅ささら 恵鞠えまり”! 特装隊の新型重機械部のエースで〜す! 好きな四字熟語は果報は寝て待て! よろしく〜!」


 四字熟語でことわざ出して来たよこの子!


「あー、”三津みつ 怜太郎れいたろう”だ。仕事は特になし。趣味とかも……特にはない」


「つまんな!」


 つまんな!? 急に恵鞠が毒吐いて来た!? なにこの子怖!


「それじゃあ、しばらく3人で怪獣討伐頑張りましょうね!」


「お〜!」


 次の瞬間、突然施設のランプが赤くなり、ブザー音と共に音声が流れた!


『新宿区にて怪獣が発生! 直ちに急行せよ!』


「話をすれば……すぐだったな……」


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