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#5

「只今戻りました」


 昼間、ビルで爆発を起こしていた張本人である”バンボヤ”はとある和室に来ていた。


 彼女の目の前には長机が置いてあり、5つの座布団が置いてある。

 しかし、1番奥の上座と手前のひとつの座布団には誰も座っていない。


「まさか、尻尾を巻いて逃け゛て来たんし゛ゃないよな?」


 座布団に座る屈強そうな男がバンボヤに問いた。


「まさか、まだ奥の手を見せたくないだけだ」


 そう言って彼女は手前側の座布団に座る。

 バンボヤが口にタバコを咥え、指を鳴らすと火がついた。


「こんなところでタバコとは……和の心がなってないんじゃないか?」


 メガネをかけた和服の男が彼女を軽く叱責した。


「おいおい、タバコは少なからず江戸時代の頃からあったぞ? まだギリ私の中には和が残っている」


「わたしタバコの煙きらーい!」


 そう声を上げるのは桃色のサイドテールをした10代前半らしき少女だ。


「ガキは黙れ」


「はぁー!? わたしは今年でもう25なんですけどー!」


「ガキにしか見えないけどな」


 バンボヤはぼんやりと外の景色を見る。


 庭の池は満月を反射して、非常に風流だ。

 さらに、その周囲には蛍も飛んでいる。


 こぉんと、ししおどしの音が辺りに鳴り響く。


「……なぁ、私はてっきりワンサイドゲームで終わると思ってた」


「ああ、俺もそう思っていたそ゛」


 屈強な男は低い声で同意する。


「だけど、少し面白くなりそう」


「ふーん、めんど」


 歳の割に見た目が若い少女は気怠げに言った。


「いいじゃないか、流石にワンサイドゲームじゃ良心が泣いてしまう」


 と、メガネ和服男が言った。


「本当はみし゛んもおもってないくせに」


「あーバレちゃったか」


「ほんとーにアンタは嫌な男ね!」


「……風流がないのはコイツらの方じゃないか」


 彼女はタバコをふかしながらぼんやりと上座の方を見た。






 特装隊本拠地・長官室。


「さて、例の男の件はどうなった?」


 ひとりの男が革製の豪華な椅子に座っている。

 政府が緊急で立ち上げた機関、特装隊の長官だ。


 そして、1枚の資料を持った女性が、彼の前に立っている。

 先ほど、怜太郎に尋問をしていたマロン髪の女性だ。


「取り調べによりますと、名前は”三津 怜太郎”、年は忘れたと言っています。海外の紛争地域でボランティアをしていたらしく、エンネイティアについては知らないと言っています」


 長官の表情が険しくなる。


「そうか……で、他にわかった事は?」


「本人は実験で巻き込まれて超常的な力を手に入れたと言っていました」


 長官は「ふーむ……」という言葉を漏らし、じっくりと考え込んだ。


「……どの経歴もにわかには信じられないな。まず、エンネイティアに関しては知らない人などいないに等しい。いくら情報統制された国だったとしてもな。それに、実験に巻き込まれただなんて、空想上の話のようだ」


「そうですかね?」


 マロン髪の少女は首を傾げる。


「お前……いい加減人を疑う事を覚えろ。ひとまず、その三津怜太郎に関しては厳重注意として監視を置こう」


「誰に任せます?」


 長官は黙って考えたのち、言った。


「……お前がやれ」


「へ? わたしですか?」






 朝。


「あーよく寝た」


 勢いよく起きようとすると、二段ベットの上のベットに頭が衝突した!


「痛ッ……」


 思わず衝突した鼻を手で押さえる。

 寝起きの一撃が1番きついんだ。


「あ、先輩〜! 起きましたね〜! 一番弟子のこの恵鞠が朝ごはんを作りましたよ〜!」


「弟子を取った覚えはない」


「またまた〜! 照れちゃって〜!」


 彼女は食卓に米と味噌汁、そしてもやし炒めを置いた。

 昨日の夜と一緒だ。


「あ、言須ちゃんは盛り塩ね」


 相変わらず酷い!


「……あれ、言須どこにもいないんだが?」


「え? あ〜、言須ちゃんは慣れるまでは夕方から夜にしか見えないんです。でも慣れたら朝にも見えるようになるますよ〜」


 彼女が盛り塩を置くと、その上の部分がちょこっと減った。


 え!? 食べたの!? 幽霊が盛り塩を!?


「先輩〜! 今日も1日怪獣討伐頑張りましょうね!」


「え? あぁ、まぁ……」


 別にそれは目的じゃないが、怪獣が出て来たらどうせ見過ごせないし、否定はしないでおいた。


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