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#4

 取調室。


「で、あなたは何者なの? あんな人間離れした事して……まさか、”エンネイティア”の一員じゃないでしょうね?」


 マロン色の髪をした女性が対面で座り、問いかけてくる。


「エンネイティアって何のことだ? 長らく遠くの国に行っていたせいで知らないんだ」


 彼女は「ドンッ!」と机を叩いた!


「知らないだなんて言わせない! 世界中がエンネイティアのせいで大混乱してるのよ!」


 遠くの国にいたって嘘は悪手だったか。

 余計怪しそうな感じになってしまった。


 でも、今更嘘だと言うわけにもいかない。


「紛争の絶えない地域での支援をしてたんだ。何年間だったっけな。その国の情報統制のせいで普通のラジオやテレビは通じない。入ってくる情報は国が流してる電波のラジオだけだ」


「そう……有り得なくはない話かしら……」


 大分無理はあったが、納得させる事ができた。


「……話を戻すわ。あなたはなんであんな超常じみた力を?」


 ここで、正直に異世界と言っていいものだろうか?

 ……正直、そこら辺は慎重にいきたい。


「紛争地域にいた頃、研究所の事故に巻き込まれたんだ。それ以上思い当たる節はない」


「そう……ならこれ以上問い詰めても仕方ないのかしら……」


 この人は、もう少し人を疑う事を知った方がいいんじゃないかな?


「もう十分だわ。取り調べはこれで終わり。建物の入り口までは別の子が案内してくれるらしいから」


 別の子が案内?


 次の瞬間、取調室の扉が蹴り破られた!


「先輩! 恵鞠が迎えに来ました!」


 またしてもあの赤髪ポニーテールの少女だ。


「先輩……? あなた、知り合いなの?」


「いえ、知らない人です」






 取り調べを終え、無事に出る事ができたが、例の赤髪ポニーテールの少女、笹羅 恵鞠がずっと付いてくる。


「ねぇ先輩〜! 言いましたよね〜! 恵鞠は地獄の底まで追いかけるって〜!」


「あぁ……本当だな」


 さて、次はどうやって追い払おうか?


 道を歩いていると、突然彼女に服を引っ張られた。


「ついた! ここが恵鞠の家!」


 そう言って彼女が指差すのは、今にも倒壊しそうなひとつの荒屋だった。


「……ナニ……ココ?」


「何って、恵鞠の家だよ!」


 家……家かな……?

 物置小屋よりもボロいような……?


「さ、先輩! 入って入って!」


 彼女に無理やり腕を引っ張られ、荒屋の中に連れ込まれる。


 中に入ると、外見とは違い意外と整っていた。

 リビングにはカーペットが敷かれており、小さな丸い机や二段ベットが置かれている。


 ただ、それ以外には何もない。


「廊下とか、和室はもう倒壊しちゃったから、生活スペースはもうここしかないんです。ただ、裏口に回ればキッチンと洗面所にも入れますよ」


 改めて、大丈夫なのこの家?


「先輩はお客さんなんで、ゆっくりしてってください! 恵鞠は今から夕ご飯の準備をします!」


 そう言って、彼女はリビングの窓から外に出ていった。

 入って来た時もそこからだったし、玄関も既に倒壊したのだろう。


 ……どうしよう? どうやって暇を潰すか。


 多分、ここでこの厚意を受け取らないと、もう数日は食事にありつけないだろう。

 なら、今晩だけはこの厚意を受け取るとしよう。


「……あのー」


 急に背後から声をかけられた。


 とっさに振り返ると、そこにいたのは体が半透明で白い和服を着た少女で、その足はなく……


「……幽霊!?」


 すぐさま距離を取り、壁を背にした。


「クソッ! 異世界でも幽霊は見かけなかったってのに、なんで現世に戻ってから見かけるんだよチクショウ!」


「あ、あの、わたしは悪い幽霊じゃないですよ〜」


「悪いかどうかはどうだっていい! 幽霊がいる事が衝撃なんだ!」


 幽霊は肉弾戦が効かなそうだから手の打ちようがないんだよチクショウ!


「わたし、この家の地縛霊をしている”言須ことす”と言います。以後お見知り置きを……」


 なんか、coc●’sみたいな名前の幽霊が出て来た。


「あのっ! 恵鞠ちゃんは少しウザいところあるんですけどっ! どうか見てやってくださいっ!」


 彼女は一生懸命にそう言った。

 やっぱり他人評価でもちょっとウザいと思われてたんだ。


 そんな事を考えていると、リビングの窓が開いた。


「先輩〜! ご飯ができま……あ、言須ちゃん。いたんだ」


 恵鞠がお盆に食事をいくつか載せ、戻って来たようだ。


「いたも何も、地縛霊だから動けませんよ」


「ふーん」


 恵鞠はお盆に乗せた料理を小机の上に乗せていく。


「味噌汁と〜、ご飯と〜、もやし炒めです! あ、言須ちゃんは盛り塩ね」


 無慈悲!


「うぇ〜ん、今日も成仏できなさそうです〜」


「あと盛り塩何杯でいけるかな?」


 少なくとも量の問題ではないのでは?


 ひとまず俺は、久しぶりに箸を使い、久しぶりの和食を嗜む事にした。


 ……あ、美味しい!






 結局、その後も恵鞠の押しに負け、止まっていく事となった。


「むっふふ〜ん。ようやくこの家の二段ベットが真価を発揮する日が来たよ〜」


 彼女は二段ベットの上の方に陣取り、そのまま布団にくるまった。

 俺は残った下のベットで睡眠をとる事にした。


 なんか、現世に戻って来たのに別の世界にやって来たみたいだ。

 なんか怪獣が蔓延っているし、それでいて魔法っぽい爆発を使ってる人いたし。


 ……この先、一体どうなっちゃうのか。


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