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#29

「その声は……リーダー!?」


 リーダー!? え!? は!? 言須が!?


「ごめんなさい、みんな……こんな大事な事もまだ言えてなくて……」


「いや、リーダーってどういう事なのさ!?」


 言須は、申し訳なさそうに答えた。


「エンネイティアのリーダー……それは私の事なんです。戦争技術の研究をしていた私たちは実験に巻き込まれた後、各々超常的な力を手にしました。そんな中、私は霊体になって、近くにあった戦争用の兵器に魂が移ったのです」


 今度は爆発女……もとい、バンボヤという女性が答えた。


「リーダーの魂が兵器……最新型の巨大ロボットに移ったことによって、本来なら今の化学レベルじゃ動かせないようなロボットを動かすことができて、まごうことなき最強の兵器となった。多分、機械の力だけでアレを動かせるようになるには、あと1000年はかかるだろう。そんな超兵器だ。一度のパンチで街を滅ぼし、ミサイル1発で国を滅ぼす。まさに破壊の神だ」


 そんな化け物みたいな兵器が言須なのか……

 いや、今が魂の状態なら、違うのか。


 つまり、リーダーを呼び戻すというのは、その根幹となる言須の事……?


「バンボヤ。私、戻る気は一切ないよ」


「……私としては、貴方と会えただけで十分だ。これで、私の戦う理由はなくなった」


 彼女は俺たちに背を向け、ゆっくりと歩き始める。


「……もうバイトの時間だ。戦う必要もない。卑怯だと思うかもしれないが、私は帰るよ。それとも、私を殺すまで追ってくるか?」


「別に、敵対しないならどうだっていい」


「そうか、ならこれは餞別だ」


 彼女はニヤッとして一枚の紙切れを放り投げると、そのまま去っていった。


 片腕しかないのにどうやってバイトをするのか……いや、彼女なりの強がりだろうか。


 離れて見ていた文風が駆け寄る。


「怜太郎君……大丈夫?」


「問題ない。あまりケガもしてないし……それより、問題なのは言須の方だ」


「……黙ってて本当にごめんなさい」


 彼女は空中に浮きながら土下座のような姿勢をとる。


「アイツら、エンネイティアの連中ってお前の帰還を待っているみたいだが、方向性の違いで逃げ出したって言ってないのか?」


「はい、言ってないです。最悪、私の自我が消えても魂さえロボに入っていれば動かせるので、そうなったら嫌だなーって。さっきのバンボヤちゃんみたいに純粋に慕ってれる人ならいいんですけど、残りの3人はそうじゃないんで」


 あー……納得。


「そういえば、さっき彼女が落とした紙って……」


 文風は先ほどバンボヤの放り投げた紙を拾い上げ、俺たちの方に持ってくる。


「これは……住所?」


「あんな状況で投げ出すなんて……絶対重要な何かだ」


「とりあえず、行ってみましょう」






 途中タクシーを拾ってやって来たのは江戸川区のとある小さな旅館だった。


「ここ、調べてみたんだけど何年も前に閉館してるみたいなの。ただ、いざ解体しようとなると、立て続けに災難が起きて、呪われてるって事で今は作業が中止になってるらしいよ」


 外観は、非常に綺麗に整えられていた。

 しかし、その入り口には『関係者以外立ち入り禁止』の文言が書かれた札と共に、黄色と黒のロープで封鎖されている。


「確かに、身を隠すには絶好の場所だな」


「どうしよう……わたし入った方がいいのかな? 足手纏いにならない?」


 文風は申し訳なさそうに言った。


「あー……外で見張っててくれないか? それと、恵鞠との連絡を取って欲しい。それと、もし何かあったら連絡する。一応、入る準備だけはしておいて欲しい」


「わ、わかった!」


 彼女は両手拳をグッと握り、気合を入れるポーズをした。


「私はついていきます。時計に憑いていれば問題ないですし、壊されても霊体で出てこれます」


「あぁ、頼む」


 俺は、ロープを手で避かしながら、建物内に入ろうとする。


「え? え? 恵鞠ちゃん来るまで待たないの?」


「そりゃ……いくらかかるかわからないし……電話してみるか?」


「う、うん。電話かけてみる」


 文風はスマホを取り出し、電話をかけた。


 ツー、ツー。


「……なんか、電話に出てこない」


「よし、今向かってるって希望的観測の下、建物に入るか」


「判断早くない!?」


「エンネイティアみたいな連中に時間をやると何しでかすかわからなくて怖いからな」


 ロープをどけて、建物の中へと入っていった。

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