#27
高速道路に乗り、車を走らせる。
向かうは東京、正直なところ戻りたくはない。
だってさ、戻ったら恩知らずの特装隊から命を狙われる訳じゃん。ただ、エンネイティアが暴れ出したら見過ごせないし、結局は戻って来るんだけど。
「ところでなんだが……どこに泊まる予定とかはあるのか?」
「……実は、ないんだよね」
「あー……そりゃお尋ね者を泊める場所なんてないよな」
じゃあ、今はどこに向けて車を走らせているのか。無論、東京だ。いや、そうじゃない、東京のどこに向かっているのかだな。
「一応、アテがない訳じゃないんだよね。もういっそ、今日が決戦の日になってくれれば楽なんだけど……」
突然、車体が大きく揺れた!
そして後方と右側……もとい追い越し車線側が黒い車によって囲まれる!
後方の車が衝突してきているようだ!
「……っぱ、バレてるか」
「多分、特装隊の人だよね。なんか乗ってる人全員スーツだし、なんなら銃持ってるし」
追い越し車線側の車の窓が開く。
なんと、その助手席から銃を持った手が伸びてきた!
「これは穏便にはいかなそうだな……」
シートベルトを外し、助手席から車体の上へと登った。
時速80キロほどの風が力強く吹く。
そして、右手の親指を使って人差し指を弾く!
クイッカブルによって加速された空気弾が、男の脳天に命中し、気絶させた!
男は仰け反るように運転手側に倒れ、運転を阻害する。
そこから段々と右側の車は減速し、リタイアだ。
「次はお前らだな」
車上で助走をつけ、後方の車、そのフロントガラスにドロップキックを放つ!
ガラスは砕け、車内に入り込むと、運転席と助手席の男を蹴り、気絶させた!
素早くボンネットに乗り移り、そこから力一杯跳び、元の車に戻った。
そして、開けておいた窓から助手席に戻る。
「すごいね」
「そりゃどうも。アイツら、一応同僚だろ? 死なない程度に痛めつけたし、あの感じなら多分事故にもならない」
「丁寧な気遣いだね」
「戦いのプロだからな」
誰もいない高速道路を車で走り抜けていく。
しかし、次の刺客はすぐに来た。
しかも、逆走で。
「速ッ!」
車同士が正面衝突した!
幸いにも相手も多少減速していたらしく、エアバックだけで助かったが、車はもう使えなくなってしまった。
「正面衝突とか、馬鹿かお前ら!」
俺たちが車から出ると同時に、もう一方の車から2人の黒服が銃を構えながら出てきた。
俺たちは静かに両手を上げる。
「三津怜太郎! 栗ヶ楽文風! お前らを本部に連れて帰るよう命令が出ている! 大人しく捕まれ!」
「やっぱり、わたしも捕縛対象なんだね」
「当然だ!」
黒服の男は声を荒げながら言った。
……ひとりを制圧するだけなら余裕だ。ただ、2人目を倒すまでの間に文風が撃たれる可能性を考えると、かなり難しい。
「さぁ、大人しく同行してもらおうか!」
……近づいてきたタイミングで同時に殺ろう。
彼らは一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。
次の瞬間! 彼らを押しつぶすようにひとりの人物が空から降ってきた!
その身は炎を宿し、黒服たちを燃やし尽くし、地面に直径5メートルほどのクレーターを空けた!
「……デパート以来の久しぶり。三津怜太郎」
その場に現れたのは、名前の知らない赤い爆破女だった。
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