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#17

 今日も特装隊の事務所へとやって来た。

 地下の格納庫には、先日のロボが置いてある。


「これ、よく建物内に入るよな」


「この建物、すっごく地下深くまで作ってありますからね!」


「いや、特装隊ができたのって2ヶ月前だろ? なんでそんな短期間でこんなに地下深く……」


 少なくとも、あの赤いロボは全長300メートル弱はあった。

 そんんなモノを格納するなんて、東京タワーの全長くらい深い地下を掘らなくてはいけない。

 化石とか井戸とか掘ってる間に見つかりそうだな。


「この建物は譲り受けたものらしくて、その頃から地下数100メートルあったらしいんですよね。普通に違法建築ですけど、今はそれどころじゃないんで普通に使ってます」


 違法建築の域を遥かに超えてるよ。


「建物の壁には譲ってくれた方の会社ロゴとかが書いてあるんですよね」


 そう言って彼女が壁を指差すと、そこには小さく「陽奈山化学鋼業」と書いてあった。


「有名な家電メーカーのHinayamaとは違うみたいです」


 Hinayamaは家電メーカーで言うと世界規模で見て5本指の中に入る有名企業だ。

 ま、俺はIR◯S製品ばっかり使ってるが。


「それはいいとして、先輩! 今日もトレーニングしましょう!」


「よし! この前、お前がロボットを操縦した事であの3バカを見返してやれたんだ! 次はエンネイティアを倒せるくらい成長するぞ!」


「おー!」


 彼女は右手の拳を高く上げた。


「……あの、」


 声をかけられた方を見ると、部屋の扉から、3人の男が出てきた。

 さっきも話した3バカパイロットだ。


 別にバカなわけではないけど、恵鞠を馬鹿にしていたのに、今や軽く見返されたから勝手にそう呼んでいる。


「よければ……俺たちにも参加させてください!」


 ……え?


「俺たち、強くなりたいんです!」


「前のロボを破壊されたのは笹羅が弱いせいだと思ってた……でも違った! 本当に弱かったのは戦わなかった俺らだった!」


「もうこれ以上街のみんなを失いたくないんだ!」


 彼らの燃えるような瞳からは確かな情熱を感じる。


「……真似しなきゃ勝手に真似しな」


「「「押忍!!!」」」


 押忍……?






 夜になって、家へと戻り、庭に出ていた。

 もう夜遅い時間なのだが、やらなくちゃいけない事がある。


 今現在、俺は恵鞠や3バカに対して一丁前に戦い方を教えているが、俺だってウカウカしてられる状況なのか?


 ……そんな訳ない。


 いくら、この世界では常軌を逸した力を持っているとしても、カバーし切れない所だって当然ある。


 昨日、敵のトランプを全て防ぐのだってギリギリだった。

 火力もこのままで足りるかは不明だ。


 昨日の夢……いや、ある種の現実だな。あそこで得たヒントを元に何か新しい技を考える必要がありそうだ。


「……瞑想でもするか」


 その場に座り、目を閉じる。

 夜風が耳を通り、全身を初夏の暑さが撫でる。


 ……魔力が全身を巡る感覚がした。


 俺のクイッカブルは体の一部だけに適応する事もできる。

 代わりに、一部だけ加速すると血液を押し出す力が強くなって、高血圧にある。

 ま、魔法の追加効果で肉体が強化されて、これといった支障はないけれど。


 クイッカブルの性質、一歩戻って考えてみるとは言っても、一体どうしたものか。


「とにかく、色々と試してみるか」


 立ち上がり、色々な方法で体に魔法をかけ、シャドウボクシングをする。


 これで何か糸口を得られるといいのだが……


「……何してるの怜太郎君?」


 振り返ると、窓から文風が顔を覗かせていた。


「起こしちゃったか?」


「いや、普通にスマホ見てた」


「あぁ……そうか」


 シャドウボクシングを再開する。


「……ねぇ怜太郎君、数年前の約束覚えてる?」


「……あぁ、『いつか互いに仕事が落ち着いたらフランスに行く』だろ。その為だけにこっちの世界に帰ってきたんだ。いずれ、異世界にも戻るつもりだが」


「やっぱり、戻っちゃうんだ」


 文風は靴を履いて庭に出てくる。


「まぁな、ここは俺がいちゃいけない。生物的パワーバランスが崩壊する」


「別に、ずっといてもいいんだよ」


「なぁに、どうせこっちにも戻ってくるさ」


 何か、自分の中で色々と変わっていってるような気がした。

 しかし、依然として力の成長はなかった。


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