#12
人体切断トランプの降り注ぐ観客席は、最早地獄に等しかった。
今はまだ俺しかトランプに触れていない。
しかし、次に誰かがトランプに触れれば、その体が切断されるのは間違いないだろう。
摘んで止めようとしても、するりと指の間を滑って抜けてしまう。
「クイッカブル!」
体を加速させ、空中に散らばる全てのトランプの面を狙って蹴り、軌道を逸らせる!
トランプは軌道を大きく変え、人の人のいない場所で落ちていった。
そして、ステージ上で着地する。
「怜太郎、何をして……」
「文風! 恵鞠! 間違いない! アイツ、エンネイティアだ!」
『あららー、バレちゃった』
彼女はピンマイクを外して、踏み潰した。
彼女のただならぬ気配から俺の言葉を信じた文風が拳銃を構え、ステージに上がる。
「特装隊だ! 手を挙げろ! 恵鞠ちゃんは人々の避難を!」
「わかりました!」
観客席にいた人たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した!
ステージ上の彼女は、余裕そうな表情で手を上げた。
「わたしは”惨劇のエネリア”。パニックものの映画が好きなの。よろしくね」
「あなた、頭がおかしいんじゃないの? マジックショーには子供が多く集まってたのに」
文風が威嚇的に尋ねるが、彼女は淡々と返す。
「おかしくなんてないよ。だって、その方が惨劇的じゃない?」
彼女はそう答えるとシルクハットを外し、そこから噴射器のようなものが姿を表す。
「”麻射”」
噴射機から謎の粒子がばら撒かれる!
何か、黄色い粉末のようで、それを吸った瞬間、一気に不調が訪れた!
次回の7割は黒く塗りつぶされ、耳は遠く、触覚がない。
「一時的な麻痺毒。どう、気分は?」
「最悪だ」
「すっごく気持ち悪い」
「それなら結構」
彼女は文風に向け、1枚のトランプを投げた!
あれは、先ほどのトランプ!
「クイッカブル!」
体を加速させ文風の前に立ち、トランプを無理やりキャッチした!
摩擦がなく少し滑ったせいで、肉にトランプが僅かにめり込む。
「あれ? 止められるんだ? そっか……ならこれはどうかな!?」
今度は何十枚ものトランプを投げ飛ばしてきた!
これは流石にキャッチしきれない!
俺はすぐさま背後の文風をお姫様抱っこして、飛び上がった!
「怜太郎……くん……」
そのまま2階に着地し、文風を優しく地面に置いた。
「俺がアイツを止める。文風は休んでくれ」
「う……ん……」
そう言い終えると、文風は気を失い、目を瞑った。
2階の手すりの上に乗り、ピンク髪の野郎を見下ろす。
「覚悟しろよ、クレイジーサイコピンク」
「うーん、そこはエネリアって言って欲しかったなぁ……」
彼女は再びシルクハットを外すと、今度は何十匹もの鳩が現れる!
「”爆鳥”」
鳩はどれも爆弾を足に持っていた!
次々と爆弾を投下していく!
「させない。”スロアラウンド”!」
そう言い放つと、鳥たちの動きが非常に遅くなる。いや、それどころか爆弾の落下すらもゆっくりだ。
「クイッカブル!」
身体を加速させ、次々と爆弾をサイコピンクに向け蹴り飛ばす!
「”クイッカランド”!」
爆弾は音速で彼女に向かい飛んでいき、爆破する!
さらに! 爆破の煙の中から追い討ちの蹴りも放つ!
彼女は激しく吹き飛ばされ、壁に衝突しクレーターを作り出す!
「っ……! こうなったら!」
彼女は懐から小さな卵を取り出した!
コイツ……さては爆弾女みたいに怪獣を出して逃げ出すつもりか!?
しかし、その予想は大きく裏切られる形となった。
彼女は、卵を飲み込んだ!
噛みもせず、一口で飲み込んだ!
すると、彼女の肉体が膨れ上がる!
グジュグジュと肥大化していく!
僅か10秒後、彼女は300mレベルの超巨大怪獣となったのだ!
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