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#10

 ショッピングモール、実に数年ぶりに来た場所だ。

 異世界から戻ってきてからずっとワイシャツにベルトで締めるズボンだった。

 このセット1着でよく頑張ってきたものだ。


 ただ、定期的に洗わなくちゃいけないから、一緒に暮らし慣れてきた頃からは寝るとき下着姿で過ごしてたし、土日で洗濯物を干してる時は俺も恵鞠も下着で一日過ごしていた。


 監視役だってのに、土日は文風が耐えきれずに1,2時間ほど散歩に行った時は、流石に申し訳なく思った。


「先輩! 服がいっぱいです!」


「……俺らドレスコードにひっかかったりしないか?」


「別にしないよ! ユニ◯ロは余程の事じゃないと入店拒否されないと思うよ!」


 俺と恵鞠の服は、ずっと着古していたせいでボロボロだ。

 少しばかり他の客からの視線を感じる。


「先輩! これとかどうですか!」


 恵鞠はデニムのホットパンツを持ってきた。


「……? 今着てるのと同じじゃないか?」


「はい! 恵鞠は動きやすい服が好きなので!」


 そう言って今度は、彼女が今着ているモノと同じ色、同じ材質の上着を持ってきた。


「怜太郎君……怜太郎君はちゃんと服選ぶよね……?」


 そう文風が言ったとき、俺はさりげなく手に取っていたワイシャツを棚に戻した。




「とりあえず、こんなもんか」


 俺たちは服を買ってきて、トイレで着替え出てきた。

 別に家に戻ってからでいいとは思ったが、文風が「視線が気になるから今着替えてきて!」と言ってきたから、仕方なくな。


「先輩! お似合いです!」


 俺の服装は上着を脱いだ社会人みたいな格好から、白シャツに黒い上着を着てデニムのズボンを履いたものへと変わった。


 恵鞠はというと……先ほどのものと一切変わっていない。


「それじゃあ、お昼にしよっか」


 文風が先導して、フードコートへと連れてかれる。


「先輩! 肉! 肉!」


 恵鞠は目を輝かせヨダレを垂らしながらステーキ屋を指差す。


「落ち着け、並べば買えるから」


「先輩! 恵鞠はしゃとーぶりあんってものを食べたいです!」


「売ってないぞ」


 俺たちは席を見つけ、ハンカチを置いて席を確保する。

 そして、各々行きたい店へと向かっていった。

 俺と恵鞠が向かったのはステーキ屋、文風が向かったのは健康意識が高そうなランチの店だ。


「先輩! 何を頼みますか!」


 2人で店先に置いてあるメニュー版を見る。


「そうだな……俺はシンプルにステーキとライス、あとコーラだな」


「ならなら! 恵鞠も同じやつの大盛りにします!」


 2人で列に並んだ。

 あまり待機列は長くなく、ものの3分程で注文するところまでありつけた。


「ご注文をお伺い……」


 店員と目が合う。


 なんと! その店員は先日ビルで爆発を起こしまくっていた女だった!


「!?!? おま……」


 彼女は慌ててその手で俺の口を塞ぐ!


 そして、耳元で小声で話しかける!

 

「頼む私がここで働いてるのは黙っててくれ! バレたらマズいんだ! ここで戦うわけにもいかない!」


 いやー、ただ黙ってるわけには……ねぇ?


 俺は冷たい視線を彼女に送る。


「……クッ、わかった、サービスしてやる! 奢ってやるから!」


 俺はニヤッとした表情をして、彼女から少し離れる。


「……サーロインとライスとコーラ、全部大盛りで」


「!?」


「あ! 恵鞠もそれで〜!」


「!?」


 彼女は物悲しそうな表情で財布を取り出し、レジにお代分のお金を入れた。




 俺らは受け取ったサーロインを平らげ、食器を片付けようと席を立ち上がる。


 すると、ダウナー系の服を着た爆弾魔の女が近づいてきた。


「……バイト終わったのか」


 彼女は、静かにコクンと頷いた。


「怜太郎君、その子知り合い?」


「……あぁ、少しな」


 彼女は俺の耳に近づき、耳打ちした。


「ひとつ良いことを教えてやろう。エンネイティアの一員がこの建物内に隠れている。あと1時間ほどで暴れ始める」


 !?


 ……いや、落ち着け。こういうときこそクールに、だ。


 俺も小声で彼女に返す。


「お前は暴れないのか?」


「まさか、ここでバイトをしているのがバレたら大問題だ」


 そう言って、彼女は人混みの中へと消えていった。


「怜太郎君……今の人は?」


 文風が不思議そうな顔で俺の方を見た。


「……ちょっと知り合い。でも大したことはない」


「ふーん」


 彼女は懐疑的な様子で俺を見つめる。


 あと1時間……どうやってエンネイティアの連中を見つけ出すか……


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