#1
「怜太郎……本当に行っちゃうの?」
王国の姫が俺の手を握り、涙を浮かべながら、俺をが行こうとするのを止めようとする。
「俺には帰る場所がある。俺のいた元の世界に戻らなくちゃ」
「わかりました……では、達者で……」
彼女は一歩引き、涙を拭きながら別れの挨拶を済ませる。
そして、俺の足元の魔法陣が光り始めた。
「また、会えますよね!」
彼女は大きな声で、手を振りながら言った。
「あぁ、絶対だ!」
俺も手を振り返して、大声で返した。
足元の光がどんどん強くなり、やがて視界が完全に光で覆い尽くされた。
これから、俺のいた世界に戻る。
短い間だったけど、異世界は楽しかった。
魔王を倒して役目を全うした俺は、姫に残るよう懇願されたが、元の世界に戻らなくちゃいけない。
この俺、”三津 怜太郎”は前世で過労死し、異世界へと送られた。
そんな中で俺にはたった一つ、現世でやり残した事があった。
異世界での生活にも代え難い、ただひとつの約束だった。
それを守るため、俺は元の世界に戻る決断をした。
……魔法陣の光が消えたようだ。
そよ風が肌を撫で、小鳥の鳴き声が耳を潤す。
目をゆっくり開いた。
その視界にまず映るのは、身長100mを優に超える爬虫類の超巨大怪獣だ!
怪獣は口から炎を吐き、東京の街を焼き尽くす!
さらに! 鞭のようにしなるその尻尾はリニアモーターカーよりも速く! 風圧だけでいくつもの建物を空へ打ち上げ、瓦礫の雨を降らせる!
な……なにこれ……? ドラゴン……いや、怪獣? 何故こんなところに?
……一度、そんな事は置いておこう。
しばらく見ない間に、世界情勢が変わったのだろう。
ということは、こんな怪獣を倒す技術だって当然生まれて……
次の瞬間! 空から赤いボディが目を惹く超巨大ロボットが現れた!
その身長約150m! 怪獣との身長差は僅か数十メートルまで縮まった!
「おぉ! これがこの世界の戦うための技術!」
ロボットは力強いパンチを怪獣に向け放つ!
しかし! 怪獣はそれを片手で受け止め、そのまま鉄の拳を握り潰し、スクラップとする!
ロボットは怪獣からの強烈なパンチを腹部に受け、その場に倒れ込む!
腹部の損傷は激しく、ボディの下の機械部分さえも丸出しとなってしまっている!
「ダメじゃねぇか!」
俺はすかさず助けに入ろうと魔法で自身を強化し、地面を強く蹴って飛び出す!
怪獣までの距離を一気に詰め、その顔面に強烈なキックを叩き込んだ!
怪獣の顔面が大きく抉れ! よろめき! そしてその場に倒れた!
砂埃が舞い、街を覆い尽くす。
あまり強くなかった……きっと、さっきのロボも量産レベルの弱い機体だったのだろう。
俺はすぐさまロボットの近くに向かった。
そして、腹部の損傷部の近くを見てみると、コックピットのようなものが見える。
まさか人が生き埋めに……!
すぐさまコックピットの蓋を力技でこじ開ける!
すると、中から出てきたのは1人の少女だった。
スポーツキャップを被り、赤いポニーテールをし、デニムのホットパンツを履いた17歳くらいの少女だ。
「大丈夫か?」
彼女の手を掴み、コックピットから引っ張り出す。
「エ……エ……」
「エ?」
「恵鞠は見ました! お兄さんが1人であの怪獣を倒す姿を!」
少女は目を輝かせながら俺を見つめる!
「どうか! 恵鞠を弟子にしてください!」
彼女は俺の手を強く両手で握りしめた。
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