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第4話 クラメクの大木 2

———翌朝。


「で、八神を除名された、とそういうことですか…」

朝起きると、トキとルアが部屋に来て、昨日の夜の出来事を聞かされたセリアが呆れた口調で言う。

「八神と言っても、そこまで大袈裟なものではなくてな、精霊達が自分たちの中から優秀な者たちを選び、8人の代表者という感じだ。まぁ、いわゆる八大精霊だな」

「え?八大精霊じゃ駄目なんですか?」

不思議そうなセリア達にトキが言う。

「精霊の誰かが自分は神であると言い出したのが始まりで、深い意味はないとかあるとか?」

「そんな曖昧な…」

呆れたように言うセリアにトキが言った。

「まぁ、意外とこの世界はゆるい所があるからな。皆、神さまに憧れているのだ。まぁ、怒られるかもしれんがな。それよりセリア、元の口調に戻っているぞ?どうした?」

「わ、私は元からすすすす、すべて、この口調です!!……た、たぶん…?」

セリアは途中からどこか自信の無くなったように言った。

「昨日は、『ルアくん、元気になったんだね!』と言っていたではないか」

トキがセリアの言った言葉の部分をセリアに似せた声で言った。

「なっ、なんですか!?それ!!」

トキがこれまでに起こったことを説明した。


「「お、覚えてない!?」」

セリアの言葉を信じられず、トキとルアが驚愕の声を上げた。

「その、記憶が無くて…」

セリアが申し訳なさそうに言った。

「ま、まぁ、衝撃的なことがあった後だし、記憶が無くなることもあるよ」

「いや、怪しい。そんなはずあるわけがない」

セリアにフォローを入れるルアにトキがきっぱりと言い切る。

セリアは冷汗をかいた。

「…」

「…」

両者無言で見つめ合う。

先に音を上げたのは頬に冷汗を滲ませたセリアだった。

「だって、恥ずかしすぎますよ!! 母の教えを受け、世界樹としてカッコよく今まで敬語を徹底してきたのに、気が動転して忘れるだなんて」

ガーと一息に言い切ったセリアは赤面して顔を隠した。

「そんなこと気にするな、敬語だなどと。私は目上の者にも一切敬語など使っておらんぞ」

トキはそんなことどうでもいいと言わんばかりにあっけらかんと言った。

「それはあなたが気にしなさすぎるんです!!」

そこにルアが割って入る。

「でも、その、僕に言ってくれたんですよね?僕は別に気にしませんよ?セリアさんの方が年上だし」

古傷に塩を塗るとはこのことなのか。

実は年上と言われるのが苦手だったセリアはダメージを受けた。そして、何かボソボソと小さな声でつぶやいている。

「そりゃあ、私は世界樹だし、何百年も生きているし、私よりも年上の人なんていないし…。」

年上と言われたことをセリアが凄く気にしている。

「僕、何か余計な事言ったかな?」

ルアが、申し訳なさそうにトキに視線を向けた。

トキはルアから視線を逸らすとセリアの方に目を向けた。

「子供に気を遣わせてどうするっ! お前の年も、私の年も、ルアの年も、私たちがいくつ離れていようが年齢など関係ないだろう!!」

トキの声にセリアが顔を上げる。

「そ、それはそうだけど…」

口籠るセリアにトキは真っすぐに視線を向ける。

「私たちは気にしないと言っている」

「うっ、でも慣れてしまって、突然はやめられない、から」

しどろもどろになっているセリアは途中敬語じゃなくなっていたことに気づいていない。

「…わかった。ゆっくりでいいよ」

突然の事に心の準備が出来ていないセリアを気遣ってか、トキが優し気な口調で言った。


それから、間を開けてセリアが口を開いた。

「私、じゃなくて、世界樹は今どんな状況なのかを見てこようと思います!」

「!?」

ルアとトキが顔を見合わせる。

「今は警備も厳重なので、警備が手薄な昼の食事時がいいですよ」

「そもそも、セリアは隠密に向いているのか?」

「隠密、ですか?えっと、それは」

明らかに当てがないという顔をするセリアにトキが言った。

「ルアに教えてもらうと良い」

「え?ルアくんに、ですか?」

不思議そうな顔をするセリアにルアが説明する。

「トキと一緒に魔術の特訓をしていたんです。例えば、変化」

ルアの服装から髪型、瞳、髪色に至るまで、全てが元のルアとは似ても似つかない姿に変わった。

「トキ様が使っていた変化ですか? 私も使えないのに、ルアくんも使えるんですね」

「それと、隠れ蓑術をルアに教えて貰い、世界樹の様子を探ってくればいい」

(な、なるほど。姿を変えて変装をしたり、姿を見えなくしたりすれば、こっそり世界樹の様子を見に行くのも成功率が上がるかもしれない、とそういうことですね)

「わかりました!ルアくん教えてください!!」

「えっと、それはいいですけど、僕に教えられるでしょうか?」

「というか、私、やり方を教えてもらえれば直ぐに使えるようになると思います」

あっけらかんと言い放ったセリアにルアがぽかんとしている。

「そんなに直ぐに使えるようになるでしょうか? まぁ、取り敢えず、魔術の本を見ながら実践してみましょうか」

(直ぐに変化も隠れ蓑術も習得できますと、簡単に思っていた私がいけなかったのでしょうか…。)

変化も隠れ蓑術もあまりの難易度の高さにセリアは自分の考えの甘さに苦しめられた。

「ま、まぁ。人間誰しも失敗はありますから」

(うっ)

そうセリアは人間ではなく、世界樹である。

「ルア、セリアは人間ではないだろう?」

「あ! そうでしたね。というように誰にでも間違いはあるんです」

それから、セリアは特訓を重ね、丸々4日程で、変化と隠れ蓑術を習得した。

「でも、4日で使えるようになるなんて十分速かったですよ」

「ルア、私にはいつも通りで、セリアには敬語、と使い分けるのが大変だろう。どうだ?これを機にセリアもルアとはこの4日間でお互いのことがわかっただろうから。そろそろ、敬語を止めたらどうだ?」

「でも、素の私でいいんですか? 失礼な事を言うかもしれませんよ?それでもいいんですか?」

「だから、良いと言っている」

「うん、良いよ」

トキがセリアの方を見ながら目でほらなとでも言っているようだ。

トキとルアの言葉にセリアが一つ深呼吸をする。

「えっと、じゃあ、よろしく ルアくん、トキ様」

「私は呼び捨てで構わんよ」

「それなら、僕も呼び捨てで良いよ。僕もセリアと呼ばせてもらうね」

「う、うん。トキ、ル、ルア」

「あっ!」

唐突に声を上げたセリアにトキとルアが不思議そうにする。

「なんだ?」

「どうしたの?」

「別に、何でもないよ?」

セリアは口元が緩みながら思いついたことについて考えを巡らせている。

「ふふふん」

セリアはスキップしながら、部屋を出て行った。


「あの、何処か借りてもいいお部屋はありますか?」

セリアは鍵屋の店主の妻、もといルアの母親のマレナに声をかけた。

「まぁ、セリアさん。体調はどう? 他にも何かして欲しいことがあればすぐに言っていいですからね」

にっこりと笑って落ち着いて話すマレナにセリアがお礼を言う。

「はい、部屋を貸してくださりありがとうございました。ご心配おかけしました」

「主人の作業部屋の他にもう一つ作業台のある部屋があるから、そこを使っていいですよ。案内しますね」

「ありがとうございます」

マレナに案内された先は植物などがあり、落ち着いた素敵な空間だと感じた。

「わぁ、ここをお借りしていいのですか!?」

セリアが目を輝かせて部屋中を見回す。

世界樹であるセリアにはとても心地の良い部屋だった。

マレナが作業台に手を触れながら言う。

「えぇ、今は使っていないので。私は隣の部屋に居ますので何かあれば呼んでくださいね」

「はい、わかりました」

マレナが部屋から出て行き、セリアだけになる。

「よ、よーし。作るぞ!」

そう、セリアが先程思いついたことそれはルアに渡した世界樹の葉。それを髪飾りにして贈ることだった。

「こういうのは本人に内緒でこっそり作って、サプライズで渡すと良いと聞いたことがあるもの」

セリアは世界樹の枝から採った葉を2枚用意する。

水の魔術で雫の形をした宝石のレプリカを作った。

それに世界樹の葉を上手く接着し、髪飾りが完成した。

(これで、肌身離さず持ち歩けるし、守りの魔術をかけたからルアの身を守ることもできる。一石二鳥!!)

それから、マレナに終わったことを告げ、ルアに髪飾りを渡すことを教えると、マレナも一緒に行くということになり、二人で部屋に戻った。

「ルア、これ世界樹の葉の髪飾り。これを付ければ、絶対安心だよ」

「え、これを僕に?こんなに素敵な物貰っていいのかな?」

ルアがとても嬉しそうに髪飾りを見つめる。

「私から、ルアへのプレゼント。前に渡した世界樹の葉は申し訳ないけれど、危険かもしれないから預かってもいいかな?」

「どうぞ」

ルアから返された世界樹の葉は綺麗で大事にされていたのだとわかる。

「ありがとう」

「こちらこそ、セリア、素敵な髪飾りをありがとう」

ルアの笑顔にセリアも嬉しくなる。

「付けてみるね」

髪飾りを付けるとルアにとてもぴったりだった。

「うん。ルアに凄く似合ってる」

ルアの耳の近くで髪飾りが揺れる。

「じゃあ、私は隠れ蓑術を駆使して世界樹の元にいってきま~す!」

直ぐに出発しようとするセリアをトキとルアが止める。

「待って、セリア。僕たちも一緒に行くよ」

「そうだ。私たちも一緒に行くぞ」

「ありがとう。2人とも」


世界樹付近の木々に隠れながらセリア達は世界樹の周りに立っている騎士達の様子を窺う。

「私たちは何をすればいいんだろう?」

セリアが唐突に呟く。

「……」

トキとルアは考え込んでいる。

「私、考えたんだけど…。直接騎士達に何故こんなことをしているのか聞きに行こうと思うんだよね」

そんなセリアをルアが止める。

「それは、危険だよ!!もし、セリアの正体がバレたら大変なことになるよ」

トキがセリアとルアの間に割って入る。

「それなら、あの木が世界樹ではないという証拠を提示して帰ってもらうのはどうだ?」

「そんなことできるかな?」

不安そうなルアにセリアが言う。

「もう、藁にも縋る想いよ。少しでも可能性があるなら私はそれに賭けたい!」

セリアの言葉を聞いたルアがわかったと頷く。

「わかったよ。じゃあ一緒に作戦を考えよう」

「ところで、私思ったんだけど、ルアって本当に7歳?」

セリアがこれまでの疑問をぶつける。

「あ、今日、11月9日が僕の誕生日だから。8歳になったよ」

サラッと重要なことを口にするルアにセリアとルアが驚く。

「え?今日?今日なのか!?」

「と、いうことは図らずも私は今日ルアに誕生日プレゼントを渡したと。私、そういう予知能力か何かに目覚めたのかしら?」

驚くトキと誕生日にプレゼントを渡せていたことに喜ぶセリア。

「セリア、敬語で気付かなかったが、意外と愉快な奴だったんだな」

「だね、ふふ。セリア、面白い」

喜ぶセリアと、それを見るトキとルア。

そして、一通り喜び終えたセリアが自分の考えた案を話し始めた。

取り敢えず、ルアの家へ一時帰宅とし、先程セリアが借りていた部屋で3人の意見を言い合う。

それぞれの考えを紙にまとめ、作戦を考える。

その日は、皆それぞれの部屋で早めに眠りについた。


———翌朝


いつもより早く起きたセリアが、ルアの部屋に向かった。

『コンコン』

ノックをして部屋に入ると、ルアはもう身支度を済ませており、読書をしていた。

「おはよう、ルア。準備はできた?」

「うん、セリアは?」

セリアはウインクして言う。

「私もバッチリ!」

セリアは、両手で覆える程の大きさのガラス玉をルアに手渡す。

「これ、お願いね」

「あぁ、あれだね。わかった」

ルアの受け取ったガラス玉は中に何か入っているようだが、ぼんやりとしていて見えない。

「じゃあ、私は一足先に丘に行ってくるね」

「いってらっしゃい。気を付けて」

セリアが手を振って部屋から出て行き、ルアがそれを見送った。


世界樹のある丘に着くと、セリアが隠れ蓑術を使って姿を隠す。

木の陰から世界樹を見るが特に誰もいない。

現在の時刻は朝6時前頃だ。

セリアはこれ幸いと世界樹に触れる。その瞬間、一瞬だけ世界樹が揺れたか光ったか、絶対に()()()()()()()

セリアは変化で姿を変え、隠れ蓑術を解いて、丘を降りる。

その時、セリアは誰かに声をかけられた。

「おい、お前!どうしてこんなところにいるんだ!!」

セリアが振り返ると、そこには騎士が二人いた。

「すみません、眠れなかったので少し、外の空気を吸いに来ただけです」

「なんだ?お前、何かその木にしていなかったか? 何かしたんじゃないのか?」

今にもセリアの胸倉を掴むのではないかと思うような形相で騎士がセリアに詰め寄る。

「いいえ?()()?」

「クロッカス、落ち着きなさい。 お嬢さん、すみません。これは血の気が多いもので」

もう一人の騎士はクロッカスの襟元を掴み後ろに下がらせる。

「おい、サティウス!これとはなんだ、これとは!! 後、手、離せよ!!」

サティウスと呼ばれた騎士がクロッカスを掴んでいた手を離す。

「はぁ…、ったくよー」

「彼は私が押えているので、その間にもう行っていいですよ」

「何!?」

サティウスの言葉にクロッカスが震えあがる。

セリアはその間に気配を消してその場を立ち去ってそのまま、鍵屋に戻った。


帰宅後、セリアはルアの部屋を訪れる。

「セリア、これ」

ルアは先程セリアから受け取ったガラス玉を見せる。

セリアはぼんやりとして見えにくいそれを覗くと頷いた。

「うん、問題ない」

どうやら、対象者以外が覗くと中が見えない仕様になっているようだ。

「準備万端だね」

嬉しそうに言うルアにセリアも頷く。

「うん、上手くいくと良いけど」

少し、自信なさげなセリアに、ルアが声をかける。

「だいじょっ…」

その時に突然ルアの部屋に勢いよく入って来たトキがセリアの背中を強く叩く。

「セリア、弱気になるな。きっと大丈夫だから」

「痛っ、ちょっとトキ、強いよ」

「そのくらい普通だ」

トキの言葉に緊張が解れたのか、セリアに笑顔が戻る。

「ふふ、何それ」

それから、作業部屋の方に移り、それぞれ休憩したり、仮眠をとったり、読書をしたりした。


約2時間程たち、それまで黙っていたルアが口を開く。

「じゃあ、そろそろ。出発しようか」

「あぁ」

「うん!」

セリア、ルア、トキ、各々の準備ができ、世界樹のある、丘へと向かったのだった。

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