7 王族たちの部屋
二階へ上がる階段の下は、一階とは違い厳重な警備がなされていた。
三人はグレイシャスパスを見せて、持ち物検査の上、二階へと案内された。
「二階、三階は王族の居住区となっており、警備が厳しくなっております。見ることができるお部屋も制限されておりますが、一階とは違い見学者が少ないのでゆっくりと見学していただけると思います」
二階は、主に女性の王族関係者が使う部屋が並ぶ。
見学できる部屋は限られているが、本を読んだり、勉強する際に使う「光泉の間」、お茶を飲む部屋「麗しの間」、新しいドレスを選ぶ部屋「笑みの間」など、どこも大きな窓から太陽の光が降り注ぐ明るい部屋だ。
使われている木材も一階とは違い、柔らかい色合いのもので、全体的に優しい雰囲気になっている。
三階は男性の王族関係者が執務に使う部屋と、王族が暮らす場所となっていて、見学できる部屋はさらに少なくなっていた。
王が人々と面談を行う「謁見の大広間』、夕食をとる「晩餐の間」、貿易品や装飾品などを王族に献上する「絢爛の間」など、どの部屋も一階に比べると大理石が多く使われ重厚な造りになっていた。
奥に進むと、廊下も狭くなっていき窓も少ない。
まるで洞窟の中を歩いているような雰囲気だ。
ところどころに小さな部屋が並んでいる。
「こちらは、王族とごく親しい方々がプライベートで会われる部屋です。すべては見ることはできないのですが、このお部屋はご覧になっていただけます。どうぞお入りください」
その部屋の前には、衛兵らしき男性二人が立っており、そのうちの一人がおりかたち三人のあとについて部屋に入ってきた。
かなり警備が厳しい。
部屋の中には、テーブルとブルーの布地に美しい金色の刺繍がほどこされたソファが置かれていて、窓には美しいレースのカーテンがかけられている。
照明はシャンデリではなく木材を繊細に組み合わせて作られたものが使われていて、絵画は大きな葉が写実的に描かれたものがいくつも飾られていて、落ち着いた空間になっている。
「美しいお部屋ですね。私、このお部屋が一番好きです」
と花音が言った。
すると、案内係の女性は笑顔になり
「そうですか。私が言うのも変なのですが、うれしいです。このお部屋は建築家でなく、現在の王と亡き王妃の要望でデザインされたお部屋なのです。すてきですよね。私たち平民も仕事での功績が認められるとこちらへよんでいただき、王たちとお茶をご一緒することもあるんです」
と言葉を返してくれた。
そのあと、残りの部屋も案内してもらい、午前中が終了した。
一階に戻ると、案内の女性が立ち止まり言った。
「お部屋のご案内は以上になります。お昼はぜひ先ほどご案内したダイニングエリアへどうぞ。宮殿料理を召し上がることができますので。そして、みなさまが二週間お使いになっていただけるお部屋は、こちら『群青の間』でございます。どうぞお入りください」
そう案内された部屋は、十畳ほどのシンプルな部屋だった。
テーブルと三人掛けのソファが二脚、窓には美しいドレープの群青のカーテンがかけられていた。
「ご自由にお使いいただけますが、鍵をかけることはできませんことご了承ください。困ったことがあれば、受付の者に聞いていただければと思います。私はこちらで失礼いたします。ではすばらしい一日をお過ごしくださいませ」
三人は女性が去ると、どさっとソファに腰を下ろした。
「広い。ずっと歩きっぱなしで激疲れた」
と、おりか。
「最初はすごいと思って見てたけど、だんだん同じような部屋に見えてきて、ちょっと退屈でした」
と、莉央。
「……一階に倉庫みたいな場所はなかった。やっぱり地下だね」
花音が考えながらの表情で言った。
「あ。私の赤い石を置く場所」
莉央が声をあげる。
「そう。ここには観光に来たんじゃない。ギャロファーのエネルギーを補充しに来たんだから。早く石を置く場所を見つけないと……。でも……、お腹空いたね……」
花音の言葉に二人もうなずき、とりあえずダイニングへと向かった。