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6 宮殿の中へ

「こちらのシャンデリアは遠く昔、魔女が作ったといわれております。まあ、それは言い伝えであって、魔女が作ったと思われるほど、大きくて立派ということでございますが」


案内してくれている女性は、そう言いながら宮殿入口すぐにあるホールの天井からまばゆい光を落としているシャンデリアの説明をしてくれた。

莉央、花音、おりかの三人は、そのあまりの荘厳さに言葉が出なかった。


「では、こちらでグレイシャスパスと案内図の説明をさせていただきます」


女性はそう言って三人をホールにあるソファに座るよう促し、受付で渡されたパンフレットのようなものをテーブルに広げ説明を始めた。


「この一階の水色の部分は、誰でも行くことのできる場所になります。お庭は自由に散歩していただけますが、衛兵が立っている場所には立ち入れませんので、気をつけてください。


そして、二階、三階のこの薄い赤色のところですが、こちらは今からお渡しするパスがなければ入れない場所です。ここには、係の者が立っておりますので、その者にパスを見せてください。みなさまのパスは、今日を含め二週間分のパスになります。くれぐれも紛失されないようお気をつけください。


また、のちほどみなさまがお使いにるお部屋を案内させていただきます。お食事は、この青いエリアのダイニングで召し上がれますので、係の者にお申し付けください。先ほど入ってきた門からの出入りは自由となっております。お帰りの時間になりますと、大きな鐘が鳴りますのでそれが聞こえたら、お帰りくださいませ。なにかご質問はございますか」


「私たちにお部屋を貸していただけるんですか?」


莉央がおそるおそるといった感じで質問する。


「はい。グレイシャスパスをお持ちの方にはお部屋をご用意させていただいております。お部屋の場所はこの案内図に丸をつけておきますね。もし分からなくなってしまった際は、パスかこの案内図を係の者に見せてください。お部屋までご案内します。ほか特にご質問がなければ、最初ですので、案内図にそって宮殿内をざっと案内させていただきますが、いかがでしょうか」


「「「よろしくお願いします」」」


最初に案内された一階の大部分は、通常のパスあがれば誰でも見学可能。

人間界のヨーロッパの中世の宮殿のようだが、壁や床などは大理石メインでは造られておらず、濃い色の木材が多く使われていた。


「なんか日本のお寺とかアニメで見た昔の中国みたいな、ちょっとアジアを感じるよね」

と、おりかが小声で莉央にささやく。


「そうですね。ヨーロッッパとアジアが混ざったみたいな建物ですよね」


案内の女性は小声で話す二人のほうをちらりと見たが、なにも言わず次々と部屋の説明をしていく。

そしてひときわ明るい部屋に入る。


「こちらがこの宮殿で一番広い『光の間』になります。実際に王族主催のパーティなどに使われております」


光の間の窓の外には広い庭園が広がり反対側の壁は全面に鏡がはめ込まれており、実際よりかなり広さを感じる。


「すごい……。太陽の光だけじゃなくて、シャンデリアの光が鏡に反射してめちゃくちゃ明るい」


おりかが感嘆の声をもらすと案内の女性は、うれしそうに微笑み

「そうなんです。ここが『光の間』と名づけられたのは、そのためなのです。こちらで行われるパーティは、それはそれは豪勢で、何度も見ている私たちもうっとりしてしまうほどです」

と声をはずませた。


花音はおりかとは違い部屋の隅のほうをじっと見ていた。そして女性に質問をした。


「この鏡の部分、こことあそこだけ木の板が使われているのは、なにか理由があるのでしょうか」


「あぁぁ。それは……私も分かりません。建築家の趣味なのではないでしょうか」


「そうなんですね。分かりました。ありがとうございます」


女性が花音から離れると、会話を聞いていた莉央がすっと寄ってきて


「あの木の板のところ、なにか秘密がありそうなんですか?」

と花音の耳元で言った。


「そう、ね。まあ宮殿だからいろいろ秘密はあるでしょう。王族が住む場所だもんね」


「では、次のお部屋に進みましょう。一階だけでお部屋の数大小合わせては五十以上ございます。その中で見学ができるお部屋は二十ございます。急いでまわらなければお帰りの時間になってしまいます」


案内係の女性は、急ぎ足で進んでいった。


壁や天井に戦いに勝利する場面が描かれた「勝利の間」。

ここでは戦いに行く前に壮行会が行われる。


王族や貴族の子どもたちがおやつを食べたり遊んだりする「小鳥の間」には、森や湖でたわむれる天使や動物の絵が描かれていた。


今も実際に使われている王族が朝食を食べる部屋は縦長で、天井には小ぶりのシャンデリアがキラキラと輝いており、庭に面したバルコニーからは朝日がさし込むよう設計されているとのことだった。


そして、一番奥の部屋の前まで来ると女性が言った。


「このお部屋は、通常は見学できるのですが、本日は王族や貴族の令嬢の方々がお茶会を開いておりますので、見学ができません。『ガーデンの間』になりますので明日ご覧くださいませ。では、これからグレイシャスパスをお持ちの方だけが見学できる二階をご案内いたします」


三人はあまりの宮殿の豪華さに、ため息が止まらなかった。

異世界百物語シリーズ第一弾はこちら↓

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「異世界百物語「光を失った石」~謎を解くのは異世界令嬢と現し世女子三人~


異世界へ来るまでの主人公たちの能力を高める訓練や悩みのストーリーです。

よろしかったらぜひぜひこちらも読んでみてください。

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