54 時計櫓の中
無限の間を出て、ダイニングで食事をとりながらも、協力者は誰なのかという話が続いていたが、結論は出なかった。
しかし、最後の任務であるおりかの紫のギャロファーを格納することが、急がれるため、そちらの計画を進めなくてはならない。
協力者については、もやもやする気持ちは残りながらも、四人は次の計画実行へ向けての話し合いに移らざるを得なかった。
「リフォアナが姿を現していられる時間が、だいぶ短くなってきたことからも分かるように」
おりかが少し神妙な表情で話し出した。
「リフォアナのエネルギーが減っていってる。つまり、ラウラレ界に早くギャロファーを持って帰らないといけないと思う」
おりかの言葉に莉央ははっとし、花音は分かっているというふうにこくりとうなずいた。
「紫のギャロファーの置き場所を確認したいわ。ギャロファーの置き場所の地図を今一度確認してみないと。わたくしの部屋へ行きましょう。セイラ。お茶の準備をお願い」
ロザリオはそう言うと、すっとイスから立ち上がり、ダイニングをあとにした。
テーブルに広げられたのは、ギャロファーの置き場所が記されている宮殿内の地図。
紫色の印がついている所が、おりかの持つ紫のギャロファーを格納する場所だ。
その場所は、宮殿の屋上の時計櫓の鐘の周辺。
「この時計櫓へはわたくしはのぼったことがないの。外から見る限りでは、普通の櫓で複雑な構造をしている感じはしないわ」
「時計櫓の下は誰かのお部屋なんですか?」
おりかが聞いた。
「いえ。部屋ではないわ。個人の部屋ではないと言えばいいのかしら……」
「どういう場所なんですか?」
「書館よ」
ロザリオの言葉に、おりか、花音、莉央は顔を見合わせると、そのあとにおりかが前のめりに言った。
「じゃあ書館の窓から時計櫓にのぼることは可能ということですか?」
「無理ね。だって書館には随時係の者いるし、貴族や王族の関係者が使う場所だから、警備の者も常駐しているわ。それに窓から上にのぼるって……。外から丸見えじゃない。時計櫓は観光客から人気の撮影場所だから、誰かしら写真を撮っているわ」
ロザリオの返しに、おりかが顔を赤らめながら下を向く。
「じゃあ時計の場所に行くには、宮殿の三階まで行って、そこから屋上へ行ける階段をあがらなくていけないということですか?」
今度は、花音が質問をする。
「それしかないと思うわ。……そういえばセイラ、あなた、子どものころにあそこへのぼったことがあるという話をしていなかったかしら」
ロザリオから話をふられたセイラは、記憶をたどるような表情をし、少し間が空いたあとに言った。
「はい。行ったことがあります。ロザリオさまよくそのような話、覚えていらっしゃいましたね。だいぶ前に一度話をさせていただいただけでしたのに」
「その話を聞いた時、行ってみたいと思ったことを覚えているのよ。セイラすごく楽しそうに話していたから」
「それでどんな感じだったのですかっ?」
ロザリオとセイラの話に割り込むように、おりかが食い気味に聞いてきた。
「時計の中って感じでした。鐘の下に小さな部屋があって、その部屋には歯車がいくつもあり、それらが宙に浮いているような造りになっていました。その歯車の下を通れるようになっていたんです。だから、下からも横からも歯車が動いているところを見ることができて、おもしろかったのです」
「小さな箱とか……、壁にくぼみのようなものはなかったですか?」
おりかは、セイラに次々と質問を投げる。
「……もう何十年も前のことです。そこまで覚えていません……」
「ほかの部屋への入口みたいなものは? 歯車の間になにか怪しいものが置いてあったとか」
「…………」
しばし考えるセイラ。
「あ。でもそういえば」
セイラのその言葉に、ロザリオもほかの三人も、いっせいにセイラを見つめた。
「歯車の下の床に、丸だったか、四角だったかは忘れましたが、ふたみたいなものがあったんです。私、回る歯車が少し怖くて、下を通る時、床を見ていて。その時、なでこんなところにふたがあるんだろうって思ったこと、覚えています」
「それだ!」
おりかが大声で言った。
「それはもしかしたら、下との出入口がそこにあったのかもしれないわね。おりか」
ロザリオも声を熱くして、おりかを見る。
「見学者を喜ばすためかもしれないけど、歯車をあえて浮かせているっていうのもちょっと不可思議だし」
花音がひとり言のように言う。
「セイラさん、すごいです。すごい情報をありがとう」
おりかがセイラの手を取り、その手をぶんぶんと上下に動かして感謝の意を伝える。
「まだそこに出入口があるとは断定できないわ。でも、可能性はあると思う。明日、書館に行って確かめてみましょう。そういえば、書館の天井は、木の格子みたいな複雑なデザインが施されていた気がするわ。そこをおりかがスケッチしたいと言っていることにして……」
四人は、先ほどまでの宮殿内に協力者がいるかもしれないという疑問と不安など、すっかり忘れてしまったように、次の任務に燃えていた。




