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50 メモ

「今、わたくしが群青の間に行くのは、得策ではないと思うわ。もし、おりかたちが連行などされてしまったとして、その子たちの部屋にサイラスの婚約者がいたとなったら大問題で、王族にも迷惑がかかってしまう。セイラだってそうよ。今、頻繁にあの部屋に出入りするのは危険だわ。誰が見ているか分からない。どうしたら……」


困った表情で、ロザリオとセイラは顔を見合わせる。


すると、書館の中に数人の衛兵たちが入ってきて、大声で言った。


「先ほど、宮殿内で揺れが発生しました。こちらでは揺れはなかったと報告は受けたのですが、念のため退避していただきます」


と、ロザリオが一人衛兵の顔を見て彼に手を上げ、声をかけた。


「ダヴィッド」


ダヴィッドは王族関係者担当の衛兵部隊の隊長を務めており、ロザリオとは顔なじみだった。


「ロザリオさま。こちらにいらしていたのですね。すぐに控室かサイラスさまの執務室のほうへご移動ください」


「なにが起こったというの? 書館では揺れもなにも感じなかったわ。ここは大丈夫よ」


「はい。ただそうはいっても、また揺れが起るかもしれませんし……」


「揺れの原因は分かったの?」


「いや。今、宮殿警護部隊と軍の者が総力をあげて調査中です」


「なぜ警護部だけなく軍も?」


「あーいやー。その……」


「ダヴィッド。そんなあいまいな言い方、わたくしは好きではないわ」


「はぁ。そうですが……」


「わたくしは、サイラスの婚約者。将来の……」


「分かりました。分かっております」

ダヴィッドはそう言いながら、勘弁してほしいという表情を浮かべ、ロザリオがいる上の階へとあがってきた。


「これはまだ内密なことですので、この場だけの話として、他言無用です」


「分かっているわ」


「また、異常なエネルギーが感知されたのです」


「前回、地下で観測されたというものと同じものなのかしら」


「同じかどうかもまだ分かっておりません。揺れがあったのは、鏡の間なのですが、エネルギーが発生したのもどうやら鏡の間周辺らしいのです」


「だから軍も動いているのね」


「二回目ですので、今回は機械の故障というわけではないことは確かです。これから軍をあげて原因究明が行われるかと思います。先ほどの揺れも気なるところです。前日にも鏡の間で揺れがあったという情報もありますし。というわけですので、ロザリオさまたちは、お部屋に引き上げてください。そうしてくださらないと、私の立場が……」

大きな体のダヴィッドが、背中を丸めてロザリオに懇願する。


「分かったわ。ありがとうダヴィッド。あなたがわたくしの警護をしてくださっていること、いつも感謝しています。わたくしもセイラも、あなたのことをとても頼りにしているの。ありがとう」


めったに聞かないロザリオの誉め言葉に、ダヴィッドの顔が赤くなる。

そんなダヴィッドに、金髪のポニーテールを揺らしながら大きな微笑みを返し、すっと席を立つロザリオ。


「ではセイラ、サイラスの執務室へ移動しましょう」



「なんでセイラさん、あんなに驚いていたのかしら。ロザリオさまから、今なら衛兵たちがかり出されていて、地下の警備が手薄になっているから、赤いギャロファーを回収してくるチャンスってメモがきたのに。セイラさんは知らなかったの?」

花音はぶつぶつとつぶやいていた。


そしてしばらくすると、莉央とおりかが戻ってきた。


ふたりに駆け寄る花音。


「大丈夫だったみたいね。ギャロファーは?」


「このバッグに入れてあります」

莉央の息が少しあがっている。


「回収する時は、ギャロファーは光らなかったって。多分異常なエネルギーは発生しなかったと思う」

莉央の背中をさすりながらおりかが言う。


二人の話を聞いて、花音が何度もうなずく。


「地下への階段周辺と地下の倉庫周辺には、衛兵は一人もいなかったです」

莉央がそう言い、おりかが続ける。


「私は階段の上で待っていて、何人か衛兵は通りかかったけど、私はなにも聞かれなかったし、地下へおりる兵はいなかった。鏡の間の揺れと、異常なエネルギー発生のほうが大変だもんね。さすがロザリオさまの読みは正解だった」


おりかのその言葉を聞いて、花音は先ほどのセイラの様子をふたりに伝えた。


「セイラさんに私たちが地下にギャロファーを回収に行ったことは伝わってなかったみたいなの。もう限られた時間の中だったから、ロザリオさまもドアの隙間からメモを入れるがせいいっぱいだったのかな」


花音の言葉を受けて莉央がしっかりとした口調で言った。


「きっとそうだと思います。私と別れる時も、『早く部屋に戻って』と言ってくれる時間しかありませんでした。あの前にメモを書いてこの部屋の前まで来ていたなんて。よほどよほど急がなければできないと思います」


「それとあのメモ、読み終わったらすっと消えたもんね。さすがサイラスさまのご婚約者。ロザリオさま慎重だと思った」


花音の言葉に二人は静かにうなずいた。

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