表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/68

47 早く。早く。早く

莉央は右手を大きく左右にふると、口の中でなにかを唱える。

すると、手から流れるように光の粒が出てきて、鏡の間にいる人の上にふりかかる。

粒を浴びた人たちの動きが止まる。


「次、ここにフィルターを張ります。おりかさん、壁をっ」


おりかの出番だ。

ライフの収納ボックスの中から、折りたたまれた壁のもとを取り出す。


そして言った。

「『ぶるーとす』いくよ。壁を仕上げるよ」


おりかと『ぶるーとす』は、折りたたんであった壁を次々と本物の壁の前へと並べて、足りない部分を描き足しながら、一枚の大きな壁へと仕上げていく。


「三分経過。おりか、どう出来上がった?」

花音が聞く。


「うん。出来上がった。二人とも私の隣へ。『ぶるーとす』おつかれさま。ありがとうね」


おりかのその言葉で『ぶるーとす』の光が消えていった。


本物の壁を背にした三人の目の前には、偽物の壁が出来上がっていた。


「莉央、あそこを見て。奥の壁の一番はじに隙間をあけてある。そこから出られるから」

おりかが莉央の肩に手をのせ、その場所を指さす。


安心している時間はない。


おりかの言葉を聞きながら、花音が板壁のフックを上下左右に動かす。

と、右に動かした時に、カタンと板が外れた。


そして板を壁から抜き出すと、その奥には暗い空間が広がっていた。


「あった。……この中にギャロファーを格納する箱があるのね。莉央、行くよ」


花音はしゃがんだ姿勢で莉央の手を取る。

そしてライフの画面を光らせ、真っ暗な空間を照らしながら壁の奥へと入っていく。


空間は細いトンネルのようになって、奥へと続いていた。

足元や側面をライフで照らしながら二人は進む。


「……ないね」


花音の声が少し焦る。


すると莉央が言った。

「見てください。右のところ」


莉央の言葉のほうを見ると、右側面に凹みがあり、その部分になにかが立てかけられていた。


莉央がそれ近づきライフの光で確認し、花音の顔を見た。

「花音さん。これです。格納する箱です」


花音はうなずき、少し震える手でその箱を側面から取り出し、足元に置いた。


そして、まわりの汚れを手で払い、ふたを開ける。


すると、そこにはくぼみがあった。

花音はバッグからギャロファーを取り出すと、そこへそっと置いた。


その瞬間、ギャロファーはまばゆく光り、そしてもとの石へと戻っていった。


呆然とし動きが止まる花音。


しかし時間はない。


莉央は、指先から魔法の糸を出し、花音の体に何重にも巻きつける。


巻き終わると、莉央は花音に向かって早口で言った。


「早く。花音さんは、早くここから出て群青の間に行ってください。時間がないです。多分また異常なエネルギーが発生したと思うから。急いでください。部屋で待っていてください。早くっ」


花音にせかされ、花音は来た道を戻り、壁の中から鏡の間へと戻っていった。

莉央を振り返る時間はなかった。


花音が壁から出ていくと、そこにはおりがが待っていた。


「ギャロファー置けたのね」


花音はうなずく。


「じゃ、この板壁をもとに戻してと。花音は急いで部屋に戻って、飛んでくる花音を受け止めてね。私はこの偽物の壁を消して、少しここで様子を見ておく。さ、行って」


おりかが花音の背中をぐっと押す。

その手は熱かった。


花音は無言でうなずき、群青の間へと走った。




真っ暗だ。

壁の外の音もほとんど聞こえない。

ライフの画面の明かりしかない。


莉央は小さな声で、ライフ越しに

「リフォアナさん、リフォアナさん」

と話しかけてみた。


ライフからの反応はない。


(ライフはつながらない。でも、さっき指先から魔法の糸は出たから、魔法は使える。結界が張られているわけではないよね……)


花音が出ていったら、五分後ぐらいに意識を探ることになっている。

ライフで時間を見る。

あと一分。




その頃、おりかのいる鏡の間では、凍らせていた時間が溶けてきたようで、壁から遠い人から順に動き始まっていた。


(そろそろ偽の壁を消さないと)


『ぶるーとす』を手に持ち下に向けたまま、それをさっと振ると、壁が消えた。


すると壁が消えて数分もたたないうちに、衛兵たちが広間に入ってきた。


(やっぱり、異常なエネルギーが発生してしまったみたいね)


おりかは、大勢の人込みに紛れて、庭園のほうにすばやく移動した。

さらに早歩きで庭園の奥のほうへ歩みを進め、団体の観光客の集団の中へ混じった。


振り返ると、鏡の間への通路が閉鎖され、鏡の間の扉が閉じられるのが見えた。


(あぶなかった)


もし、すぐに移動していなかったら、おりかは鏡の間から出られず、また事情聴取をされることになっていただろう。


そうなったら、前回のエネルギー発生問題の時にもその現場近くにいたおりかが、またここにいる。

今度こそ疑われることは目に見えていた。


(本当によかった……)


そのあと、おりかは団体客と行動をともにし、しばらく庭園を散策した。




群青の間に戻った花音は息を整え、莉央から預かったリップをぎゅっと握り、それに意識を集中させる。


真っ暗な空間が視える。


さらに意識を集中させる花音。


いつもならこのあたりで、持ち主の映像が視えてくるはずだった。

でも、今日はまだ視えてこない。


ただただ真っ暗な空間しか視えない。


(莉央、莉央、莉央、念を飛ばして。もっと強く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ