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41 訪れてくる者たち

「ロザリオ。こんなところでなにをしてるの?」


クラリスが階段の下に立つロザリオを見て驚いたように言った。


ロザリオは膝を曲げ、頭をさげて挨拶をする。


「ごきげんうるわしゅう。ロザリオさま。本日は、サイラスとわたくしの友人が宮殿内の絵を描くということで、宮殿の案内を務めております」


「絵を描く友人? あなたがそのご友人?」


クラリスが階段をおりながら、おりかのほうを見る。


「は、はい。おりか・デラージュと申します」


おりかはどうしていいのか分からずに、膝を曲げ頭をさげたままでその場でじっとしていた。


「顔をあげて。わたくしもこっそり出歩いているので、かしこまらなくていいわ。部屋用のドレスでごめんなさい」


おりかはそっと顔を上げる。


ロザリオの横に、薄い紫色の生地の上に、ゴールドの美しい刺繍が施されているレースがたなびくドレスに身を包んだクラリスが、優しく微笑んでいた。


部屋用のドレスというそれは、華美なデザインではないが、皇太子妃の高貴さと美しさを十分に醸し出していた。


(二人ともものすごい美人だわ。震える)


ロザリオの頬がうっすら赤く染まっている。

クラリス妃を目の前に、少し緊張しているようにも見える。


「クラリスさま、こちらは莉央・デラージュです。このお二人はいとこ同士です」


そういっておりかの後ろで縮こまっている莉央を紹介した。


「この方も絵を?」


「いえ。莉央さまは付き添いです。もう一人いとこの方がいらっしゃるのですが、今オルビスとともに厨房に行っております。シェフがなにか新しいメニューを開発中らしく、その味見係というかアドバイスをしにいっております」


「一人は画家で、一人は料理人? おもしろいわね」

クラリスが口に手を当てて、ふふふと笑う。


莉央は、クラリスが笑った瞬間、まわりの空気が浄化され清らかになっていくように感じた。

心なしかギャロファーの力で光っている壁や床の光が、より強くなったようにも見えた。


(この方も魔法が使える?)


「ところで、こんな奥まった場所の絵を描くなんてめずらしい方ね。ほかの国の方にとって、なにかめずらしいデザインでもあるのかしら?」


(まずい。なんてこたえていいのか分からない)


おりかがこたえに窮していると、ロザリオがおりかに近づいてきて言った。


「おりかさまは、宮殿の華やかさでなく、あまり観光者が行かないような場所をあえて絵描きたいそうなのです。宮殿の中でも歴史や重みを感じる場所を探しておられると聞いたので、わたくしが案内してさしあげております。ね。おりかさま」


「そうなんです! この階段も王族の方専用とお聞きしたので、ぜひ描いてみたいと思ってロザリオさまに無理をお願いしたのですっ」


「ふふ。そうなのですね。変わった方。ではロザリオ、一般の方が興味を持たない場所を、いろいろ案内してさしあげてね。ふふ」


「ありがとうございます。クラリスさまはどちらへ?」


「わたくしはロイヤルガーデンに。三十年に一度咲くというめずらしいユリの花が開いたというので見にいくの。ロザリオもあとでサイラスと一緒に見にいくといいわ。では」


そう言葉を残すとお供の者を連れ、ドレスを優雅に揺らしながら庭へと続く回廊を歩いていった。


その姿が完全に見えなくなると、莉央はその場に座りこんだ。


「クラリスさまのオーラがものすごかったです。圧倒されて力が抜けました……」


莉央の言葉を受け、おりかも壁に寄りかかりながら言った。


「分かる。なんかクラリスさまの声を聞くと、すごくしあわせな気持ちになるっていうか。ぼーっとしてしまった」


そんな二人を見て、ロザリオが誇らしげに言う。


「でしょうね。クラリスさまにはなにか神秘のパワーがある気がするわ。魔法のようなものも使えるとおっしゃっていたし。わたくしの憧れの女性です」


しかし、三人にはそんな夢見心地な時間に浸っているひまはない。


おりかが自分に喝を入れるように、スカートをパンと叩いた


「そうだ。階段が動いた話の続きをしないと」


そう話し出した時、今度はオルビスがやってきた。


「みなさん、パ・ス・タのご用意ができましたので、お迎えにあがりました」


「あ、ありがとう」

おりかが戸惑いながら返事をした。


「なにか問題でも起こりましたか? みなさんご様子が少し変かと」


「そんなことはないですが、さきほどクラリスさまがこちらを通ったので、その緊張がまだ抜けていないのです」


おりかが疑われないよう、冷静に状況を説明する。


「クラリスさまが! お会いできるなんて、めったいにないことです。それじゃあ様子も変になりますよね。お美しかったでしょう」


「はい。もう言葉がでないほど」

莉央がうっとりとした表情でこたえた。


そんな莉央を見て、オルビスは、そうだろうそうだろうと言わんばかりの表情でうなずきながら、三人を昼食へと促す。


「ではみなさま、お食事のお部屋にご案内いたします」


本当はまだここにとどまって、階段の状態を詳しく見たかったが、こちらからお昼のパスタの件をふっておいて断るわけにもいかないので、ロザリオ、おりか、莉央は案内される部屋へと向かった。

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