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33 宮殿に通う目的

「突然昼食に招待してしまい申し訳ない。うちのオルビスがお世話になっているようなので、お礼をと思いこの場を設けた」


来賓をもてなすためのゴージャスなダイニングルームに、サイラスの声が響く。


その隣には、優雅に微笑むロザリオ。


末席には、なぜこういうことになっているのか分かっていないオルビスが座っている。


「ご、ご招待いただきありがとうございます。このような場に私たちがいてよいのか……ねえ、花音」

おりかがしどろもどろに言葉をつなげる。


「よろしいのですよ。オルビスが花音さまには大変お世話になっているようで。ここ最近オルビスはとても楽しそうだし、パティシエたちとの新しいデザート作りにも力が入っていると聞きました。それも、花音さまがレシピのアイデアをくださっているからとか。そのお礼です。さあ、席にお着きになってください」


ロザリオが三人の目を見て、「大丈夫」というようにうなずきながら言葉をかける。


「ではお言葉に甘えて」

と、花音がオルビスの前の席に座った。

オルビスの顔がぱっと明るくなる。


おりかは、ロザリオの前、莉央はその隣に座った。


テーブルにはすでに料理が並んでいた。


「昼食だし、遠慮があるとよくないと思ったので、サンドイッチやパン、サラダ、スープを用意させてもらったよ。好きに食べてくれ。ただこのパン、王族だけしか食べることができない特別なもので……すごくおいしい。バターもジャムも特製だぞ」

と、サイラスが砕けた口調で、三人の緊張を解こうとしてくれている。


「口調もくだけた感じで全然かまわない。この場では友達だと思って」


「いや。友達だとは思えないでしょ」

思わず言ってしまいおりかが慌てて口を押えると、その場に笑い声が溢れた。


「おりかたちは、いつまでこちらに滞在されるのか」


「はっきりとは決まっていないのですが、二週間ほどを予定しています。ゆっくりと観光しようかと思っていて……」


「乗り合いの馬車を使って毎日のように宮殿に足を運ばれているようだが、宮殿好きなのか? 宮殿の研究でもしているのか?」


サイラスが聞いてほしくない質問を投げかけてくる。


「いや……研究とかではないのですが、古くから王族の方が住まわれている宮殿に興味があるというか、古い建築やデザインがすてきだなと思って」


「そういうことか。もっとなにか目的があって来ているのかと思ってたぞ。この宮殿は古い建築か……」


「あ。古いというか、歴史を感じる貴重な建築物という意味で……」


おりかの答えに、サイラスが少し不満を持つような表情を浮かべはじめたその時。


「私は、王族の方々を自分の目で近い距離で拝見できるのがすばらしいと思って……。王族ファンというか、王族マニアです……。王族の方々を見ることが今回の旅行の目的にひとつです」

と、莉央がはずかしそうに早口に言った。


「王族が好き、と」


「はい。サイラスさまも大変すてきです。そして、ロザリオさまがあまりに美しくて……。お会いできて光栄すぎです。しかも一緒に昼食を……。うれしいです」


そう言いながら頬を赤らめる莉央を見るサイラス。

その表情がよろこびに崩れる。


「だろうな。分かるぞ。ロザリオは本当に美しんだ」


「そこっ?」

またしても出たしまった思わずの言葉に、おりかが口を押える。


その一連のやり取りにロザリオはこらえきれずに、声を出して笑ってしまった。


「サイラスはわたしくが褒められるのが好きなのです。いつもそう。はずかしいわ」


「いや、褒めるとかでなく、本当のことを言ってもらえるのがうれしいんだ」


サイラスのその言葉に、場の雰囲気は一気に和やかなものとなり、笑い声が溢れる昼食会となった。


「あなたたちがこちらにいる間に、またお会いしたいわ。いつも令嬢たちばかりのお茶会には少しあきあきしていたの。新鮮だわ。いろいろな方との交流は、この国のためにもなるしね、サイラス」


「そうだ。俺はそう思っておりかたちを昼食に招待したんだ。それに」


「それに?」


「ロザリオと気が合いそうだと思ったから」


「ありがとう。さすがだわサイラス」


ロザリオはそう言うと、サイラスの肩に頭をこてんと乗せた。

そして、目の前に座っているおりかに向かって、舌をちょっと出して微笑んだ。


サイラスは顔を赤くしながら、うなずいている。


始まりから二時間ほどが経った頃、セイラがやってきて

「セイラさま、そろそろお時間です」

と、昼食会の終わりを告げにきた。


その言葉を受け、おりかたちも立ち上がり、挨拶をする。


「では、そろそろ私たちは部屋に戻ります。今日はお招きいただきありがとうございました」


「わかった。オルビス、部屋までお送りしろ」


「はい。かしこまりました」

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