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32 でもこの壁には秘密がある

「いや。大金持ちの家の令嬢かもしれないと思って。じゃなきゃ、プレシャスパスでこんなに何度も宮殿に来ないと思って。身なりは普通だけど、実はどこかの国の富豪の令嬢だったりして」


「そ、それはあるかもしれないわね。私ももう少し友好を深めておこうかしら。今後のためにも」


ロザリオがうまく話を合わそうと口にした言葉に、サイラスが思いのほか食いついてきた。


「そうだよ。それはいい考えだ。ロザリオさすがだ。よし。さっそく昼食の席を設けよう」


「え? 今日? 今から?」


「そうだよ。こういうことは即行動だ。隣国との友好とオルビスのために! ロザリオすまないがセイラに頼んで、ほかの二人に昼食の件を伝えてもらってくれ」


サイラスは、あっけにとられとまどっているロザリオを廊下に残し、オルビスを追って鏡の間へといってしまった。


ロザリオは苦笑いを浮かべていたが、サイラスの行動力に感嘆していた。

サイラスは深いことは考えてはいないけれど、自分でよしと思ったことは即行動するし、その行動力と積極性で他国からの評判は上々。

その外交能力の高さは認めざるを得ない。

それに、案外人を見る目はあって、どんなに美辞麗句を並べられてもなにか思惑がある人には、絶対に心を許さない。


(花音やおりか、莉央たちのことは大丈夫な子たちと判断したのね。よし、これで花音たちと会う理由ができたわ)



**********


鏡の間は、今日は見学者は少なめだった。

花音はあの板壁部分の場所をじっくり偵察するつもりだったので、オルビスの同行は予想外だった。

でも、確認しないわけにはいかない


オルビスからそっと離れて、壁のほうに近づく。


するとオルビスもやってくる。


「鏡の壁に興味があるのですか?」


「ええ、まあ。ここまで鏡が張り巡らされた壁って初めて見るもので。豪華だし、技術的にもすごいですよね」


「でしょう。鏡の壁はほかの国でも見たことはあるけど、ここまで贅沢に鏡を使っている壁は見たことないな」


「でも、この壁には秘密がある」


オルビスの言葉にあとに、誰かの声が続く。

振り返るとそこにはサイラスが笑いながら立っていた。


驚く花音とオルビスを見ながら言葉が続く。


「ここ、この下の一枚だけ鏡じゃないんだ」


「そういえば……」


「そういえばって、お前気づいてなかったのか」


「いや、ここだけ違うなって思ったこともあったのですが、誰かがけとばして鏡が割れたのかと」


花音の心臓は高鳴った。


「なにか秘密があるんですか?」


「秘密ってほどでもないんだが」

そう言って、サイラスはオルビスと花音に顔を近づけ、まわりを見て人がいないことを確認して小声で言った。


「王族の隠し廊下がある」


「…………」


この言葉に二人が言葉を失っていると、サイラスがクスクスと笑った。


「といわれている。おれは使ったことがないが、大昔には実際に使ったとされている。王族の歴史の講義でそう習った。いざとなったらそこを使うって。使い方は忘れたけど。あっはは」


「言い伝えですね。もう脅かさないでくださいよ。それにそんな重要なこと、敵に知られたら大変じゃないですか」


オルビスがまわりを見渡しながら言う。


「この場に敵はいないし」


「……壁の開け方っては魔法とか、呪文かなにかあるんですか?」

極力さりげなさを装って花音が質問する。


「いやーさすがに王族といえども魔法は使えないよ。確か、板の隣か上だったかな、隙間に小さなフックがあってとかなんとか書いてあったかな。呪文じゃないことは確かだ。あっはは」


花音は

「この人、もう少し用心深くしたほうがいいって、ロザリオさまに言っておこう。私はラッキーだったけど」

と心で苦笑いをした。

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