3 光のリフォアナ現れる
石壁の間の大きな鉄の門をくぐると、こじんまりとはしているがよく磨かれた木のカウンターの受付があり、そこにいた男性に案内所で書いてもらった紹介状を渡す。
「『スクリュート』を選んでいただきありがとうございます。女性三名さまのご宿泊で承ります。こちらにお名前とご住所をお書きください」
そう言われて、おりかがリフォアナから教えられた住所と三人の名前を書く。
「ではお部屋にご案内いたします。宮殿がよく見えるお部屋をご希望とのことで、そのお部屋をご用意いたしました。ごゆっくりおくつろぎください」
三人は五階建ての建物の最上階の角部屋に案内された。
部屋に入ると、その正面の窓からは、宮殿が絵画の景色のようにはっきりと見えていた。
「うわー、すごいきれい。テレビで見たヨーロッパの古城みたい……」
ため息まじりに莉央が言う。
「あそこに忍び込むんだよね。大丈夫かなー私たちで」
おりかは不安そうに窓の外を見ながら言う。花音はなにも言わずにじっと宮殿を見つめている。
「あ、リフォアナさんに連絡しないと。宿に着いたら連絡するって約束だから」
はっとしたように莉央がライフを取り出して、なにか呪文のような言葉を唱えてリフォアナにコンタクトを取り始める。
すると莉央のライフから光がの塊のようなものが溢れ出し、そこにゆらゆらと揺れるリフォアナの姿らしきものが現れた。
「えっ。リフォアナここに来れるの?」
おりかが驚いたように言う、
「行けないわよ。これはなんていうか、意識の光というか、ホログラフィーみたいなものね。でも、自分がそちらにいるみたいに動けるの。その場にいるように景色も見れるのよ」
光のリフォアナはそう言うと、部屋の中を歩いて窓辺まで移動する。
「あそこが宮殿ね。思っていたより遠いな。お部屋はすてきじゃない」
そう言いながらあたりを見回す。
「ちょっと心配だから、部屋に結界をはっておくね。あなたたち三人がいない時には、勝手には部屋に入れないようにするし、あなたたちの声や物音も部屋の外には聞こえないようにするから安心して」
光のリフォアナは、話しながら部屋の隅々を確認しながらテキパキと結界をはっていく。
まるでその場にいるかのようだ。
そして諸々の作業を終えると、地図が広げられている一つのベッドに三人を集めた。
「じゃ、地図を見ながら位置と任務の順番を確認していきましょう」
そんなリフォアナを見て莉央が
「リフォアナさん本当にここにいるみたい。もうホログラフィーでいいから一緒に行動すればいいじゃないですか。そのほうが私たちも安心だし」
と言った。
「だめよ。こうして姿を映し出せる時間には限りがあるの。ものすごいエネルギーを消耗するんだから。それに姿を映し出しているだけで、物体には触れられないの。ほら」
そう言って、花音の肩に触れると、リフォアナの手は肩に置かれることはなく、通り抜けていった。
「……そうなんですね」
花音ががっかりとした声を出す。
「いろいろ話したいけど時間がないので、任務の確認! 今いる場所はここでしょう。まずは、赤いギャロファーを置く場所が、一番行きやすそうね。地下室よね。明日、この場所を確認しにいってみて。宮殿ではくれぐれも観光客としてふるまってね。様子を見てもらってから、作戦を考えましょう。じゃ、もう時間切れ。がんばってね。なにかあったら、いつでもライフで連絡してきて。声だけなら、少し長い時間でも大丈夫だから。それじゃ……」
リフォアナの声がだんだんと小さくなり、光は消えた。
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