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26 ガゼボの下の秘密

ゴリゴリ。ゴリゴリ。


少し間があく。


ゴリゴリ。ゴリゴリ。


音がだんだん近づいてくるように感じる。


音はロザリオが座っているベンチの下から聞こえてくる。


ゴリゴリ。ゴリゴリ。


すると、ベンチになっている部分の足元の大きな石が少しずつ動いている。


「え、なに?」


「花音こちらへ。セイラ! セイラ!」


どこにいたのか、ロザリオの声でセイラが花音を守るようにすっと現れる。


ロザリオは、ドレスの下からナイフのようなものを取り出す。


音がだんだん大きくなり、石が押し出されてくる。

あたりに緊張が走る。


ガタン。


大きな音がなると、石がベンチの下から押し出され外れた。


そして、その中から、なんと莉央が這いだしてきたのだった。


「莉央っ」


ロザリオはナイフをすっとドレスの下に戻すと、莉央に駆け寄る。


「どうしたのですか。こんなところから。どうやって……」


「ロザリオさま……」

莉央はそう言うと、ぽろぽろと涙を流した。


「倉庫での話は聞いたわ」


「……倉庫の奥に隠された道があるってリフォアナさまの声が一瞬して。ヒック。急いでそこに入ったのです。ヒック。でも、入口がしまってしまうともう開かなくて。ヒック。ライフもつながらなくなってしまったし、魔法も使えなくなっていて。ヒック。仕方ないので、とにかく道というか、洞穴みたいなところを進んできたら。ヒック。どんどん狭くなってきちゃって。ヒック。そしたらなにか文字みたいなものが書かれている石の扉があってそれを押してみたら。ヒック。動いたんで。ヒック。押し続けていたら、ここに出てきたんです。ヒック」


「そういうこと。これはなにか有事があった際の王族の脱出の道のようね。見たことはないけど、小さい頃お母さまから聞いたことがあるわ」


ロザリオは注意深く辺りを見回し、莉央が出てきたところに石を押し戻そうとしたが、石が重くてなかなか動かない。

それを見ていた花音も、一緒に押そうと石に手を触れた。


その瞬間、花音の目の前に情景が浮かんできた。

 

きれいな女性が洞窟の中を歩いている。

目の前は土や岩の壁。

それを鼻歌を歌いながら手から放たれる光でどんどん掘り進めている。


掘っ掘って、目の前が明るくなると、そこには荒野が広がっていた。


そしてその荒野に手の光を投げると、地面いっぱいにまるで花柄の大きな布を敷いたように花々が咲き溢れた。


「花音、花音。大丈夫。しっかりして」


ロザリオの声で、はっと意識が戻る。


「今、石に触ったら、景色が。この道、きれいな魔法使いのような女の人が掘ってました」


「視えたのね」


無言でうなずく花音。

動けない。


石はロザリオとセイラが急ぎ押し戻した。


「セイラ。今、服がこんなに汚れている莉央を連れてお茶会に戻ったらまずいわよね」


「そうですね。目立ちますね。しばらく私がここで一緒に身を潜め、お茶会が終わった頃を見計らって帰る方々にまぎれてお部屋にお連れすればよろしいでしょうか」


「そうね。それがいいわ」


ロザリオとセイラの会話を聞いていた莉央が

「私の服が汚れていなければお茶会の会場に戻っても大丈夫でしょうか」

と、聞いてきた。


「まあ、いっぱい人がいるし、観光者もいるので大丈夫だと思うわ。あなたに会った理由は適当につければいいし」


「それなら」


莉央はそう言うと、両手をあげ光のシャワーを自分に浴びせた。

すると、汚れていた服も顔も手足も何事もなかったようにきれいになった。


「汚れをきれいにする魔法は使えるようになってたんです」


「まあ。すごいわ莉央。これで問題ないわね。では、戻りましょう」


お茶会の会場は先ほどより大勢の人で溢れていた。


ロザリオが、より混雑するようプレシャスパスがない観光客も、希望すればお茶会に参加できるようにしていたことが功を奏した。。


会場にはサイラスの姿はもうなく、莉央はセイラに連れられ怪しまれることなく部屋に帰れた。


花音はオルビスに呼び止められ、強引に部屋に戻ると怪しまれると思い、お茶会が終わるまでその場にいることにした。


莉央が部屋に戻ると、おりかが泣き顔で抱きついてきた。


「ごめんね。ごめんね。ごめんね莉央。一人にしてごめんね」


「おりかさんは悪くないですよ。あやまらないでください」


「うんうん。うんうん」


「それに、ちょっと楽しかったんです。自分でなんとかしなくちゃって思うと、結構度胸が座って。絶対に大丈夫。なんとかなるって思えました」


そう言うと莉央はおりかにさらにぎゅっと抱きしめられた。


「みなさま、今日の詳しい事情をお聞きしたので、本日はロザリオさまが宿にうかがいますとのことです」


セイラはそう告げると、抱き合うふたりに会釈をしてそっとドアを閉め、お茶会の場へと戻っていった。



お茶会に出席した令嬢は、通常のお茶会の半数ぐらいだったが、観光客が大勢参加していたので、広い庭園は人でごったがえしていた。

ロザリオは何事もなかったように、満面の笑みをたたえ、参加者に挨拶をする。


「今日は急遽なお声がけにもかかわらず出席いただきありがとうございます。わたくしの気まぐれで。でも先日途中で失礼してしまったので、どうしてもみなさまとお話したくて」

と招待の令嬢たちへ。


「本日はシークレットのお茶会に参加してくださりありがとうございます。わざわざ宮殿へ足を運んでいただき、アルデウス王国を愛してくださりありがとうございます」

と観光客へ。


その言葉で令嬢たちからはもちろん、観光客からもロザリオの好感度は爆上がりだった。


「ロザリオさま、本当にお美しい……」


「私たちのような一般の者までお茶会によんでくださるなんて……」


「ロザリオさまがサイラスさまのご婚約者で本当によかった」


別に自身の評判を高めるためのお茶会ではまったくなかったが、結果ロザリオの評判をあげることになってしまった。


そしてそのお茶会の様子を執務室から見ていたサイラスは

「これがロザリオの真の目的だったのか……」

と大きな誤解をしながら深くうなずいていた。

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