23 企てのお茶会
「ごめんなさいね、今日は本当に申し訳なかったわ」
グロスター家に着き、ロザリオの部屋に入るやいなやロザリオが三人に駆け寄ってきた。
「突然でびっくりしたでしょう。サイラスが変に気をきかせてというか、勝手に勘違いしてというか。あの人、そういうところがあるのよ。あ。情報が渋滞している顔ね。分かるわ。分かる。そうよね」
ロザリオは部屋の中をぐるぐると歩きながら独り言のように話している。
昨日の落ち着きとは別人のようだ。
「まずは、昼間も紹介があった通り、サイラスはわたくしの婚約者で、この国の第二王子。まだいつ結婚するかとか具体的には決まっていないわ。それでわたくしは週に何回か宮殿でお妃になる勉強というか講義を受けているの。それでね」
「ロザリオさま。少し落ち着かれてください。おりかさまたちが驚いております。まずは、ディナーを召し上がっていただきましょう。お話はその時に」
「そうね。そうね。ごめんなさい。わたくしあなたたちに申し訳なくて。さ、ダイニングへ」
花音はクスクスと笑ってしまい、莉央にひじで小突かれる。
「ロザリオさまは私たちに言い訳をしようとしている、ってことでしょうかね」
おりかが、ロザリオではなくセイラに質問を投げかける。
「はい。そのようです」
セイラはすまし顔だ。
「言い訳じゃないわ! 宮殿でちょっと冷たい態度をとってしまったので、そのお詫びを……。まあ、ちょっとは言い訳も……」
ダイニングのテーブルには、シチューのような料理が用意されていた。
真っ先に反応したのは花音。
「おいしそう。サラダもある。パンは焼き立てですか?」
「はい。どうぞお好きなだけ召し上がってください」
席に座り食事が始まると、ロザリオが先ほどの話の続きを話しだした。
「サイラスは、一昨日のあなたたちのことをわたくしが気にしていると思って、安心させるためというか、機嫌をとるために、あなたたちをわたくしに会わせたのよ」
「焦りました」
おりかが肩をすぼめる。
「そうよね。まさか宮殿でわたくしを紹介されるなんて、ね」
「でもサイラスさまに紹介してもらえてよかったと思うんです」
「なぜ?」
「これで、ロザリオさまと私たちは顔見知りになったということだから、宮殿で会ったり話したりしても怪しまれない」
「そうね! そうだわ。なるほど」
「宮殿で話ができるってことですね!」
莉央が笑顔でみんなを見回した。
「ロザリオさま、そろそろ」
セイラが次への話題へ促す。
「そうだったわ。セイラからギャロファーの置き場が確定したと聞きました。それで、明日ギャロファーの設置を予定しているのですね」
「はい。ただ明日は王族の挨拶もないし、警備が手薄になる時間帯がないかと。そこが心配で」
おりかがフォークを持つ手を止め、ロザリオのほうを見て言った。
「そうね。明日は特にお茶会もないし……。ない……。ないけど……。そうね。ないならお茶会を開催すればいいのね」
ロザリオがいたずらっ子のような表情でうなずいている。
「セイラ。明日、急遽わたくし主催のお茶会を開くわ。今から宮殿周辺の令嬢の方々に早馬で連絡を。それと、サイラスにも。詳しくは明日話すと伝えて」
「かしこまりました」
こうして、急遽明日宮殿でのお茶会の開催が決まった。
「これで、お茶会の時間は警備が薄くなるわ。それに、急遽決まったことだから、準備にも人手が必要になるから、宮殿内はバタバタ。地下倉庫なんて誰も行かないわ」
「ロザリオさまってすごい権力を持っているんですね」
ポツリとつぶやいた莉央にロザリオは満面の笑みを返した。
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ロザリオ宅での夕食を終えて宿に戻ってきた三人は、急いで莉央のライフを起動しリフォアナとコンタクトをとった。
三人の目の間に、リフォアナの像が現れる。
「今日は大変だったわね。莉央。よくやったわ。魔法もすばらしかったわ」
実際には触れることはできないが、リフォアナが莉央をぎゅっと抱きしめた。
「あの時、助けていただけて本当に本当にありがとうございます。リフォアナさんがいなかったら、私……」
「そうね。でも大丈夫よ。これがいい経験になって、どんどん魔法がうまくなるわ」
「はい。おりかさんと花音さんにもそう言ってもらいました」
リフォアナは、二人を見てニッコリと微笑む。
「魔法ってパワーの大きさもあるけど、それよりも、その力をその場その場でどう使うか、が大切なのよ。そうしないと結局パワーで壊すだけの能力になってしまう。だから、いろいろ経験を積んで、どんなふうに能力を使えばいいかを学んでいければ、莉央はさらにいい魔法使いになれる。楽しみね。で、と。それで、今後の動きはどうなるの?」
「明日、莉央がギャロファーを箱に格納します」
「行けるのね、莉央」
「はい。ロザリオさまが明日、急遽宮殿でお茶会を開催して、倉庫周辺の警備が緩くなるようしてくれるそうです」
「お茶会を、か。ロザリオさまさすがだわ。まあ、まわりはいい迷惑だけど、ね」
リフォアナがおかしさを抑えきれない顔で三人を見回す
続けておりかが興奮気味に話す。
「それと、ロザリオさまは第二王子の婚約者だったんです」
「え? それって……」
「すごいことです。すごい方だったんです」
「まあ、それだけの地位にいる方が味方ということは、心強いわね」
「それで、今日いろいろあって、婚約相手のサイラスさまとも知り合いになり」
「知り合い?」
「はい……。まあちょっと。説明は省かせてください。それで、サイラスさまからロザリオさまを紹介されて」
「はあ。知っているのに紹介されたのね。ふふ」
「なので、今後宮殿でロザリオさまと会ったり話したりしても、それほど怪しまれないことになりました」
「あ。もうエネルギーが切れるわ。諸々承知。莉央、明日がんばってね。もしもの時は、私がいるから」
リフォアナの姿はそう言って消えていった。




