18 ギャロファーを置く場所を探せ
宮殿の前には開門時刻の前から多くの人が並んでいた。
今日は定例の王族挨拶があるため、観光客だけでなく、市民の多くも宮殿を訪れているのだ。
「すごい人ね」とおりかが言うと、「人が多いほうが警備が手薄になるかもしれないから都合がいいかも」と花音が小声で返す。
莉央は不安そうに宮殿の門をじっと見ている。
今日中に、ギャロファーを置く場所の目ぼしをつけることが目標だ。
莉央の任務は重大だ。
「莉央、すごい怖い顔になってる。大丈夫よ。昨日も言ったけど今日は倉庫に行ってギャロファーの置き場所があるかちょっと見てくるだけだから」
「分かってます。でもそうはいっても、魔法がちゃんと使えるか……」
莉央がそう言いかけた時、花音が莉央の左腕をぎゅっとつかんだ。
「莉央、声が大きい」
そう言って、花音は警戒しながらまわりを見渡していた。
「ごめんなさい……」
「昨日ロザリオさまが言っていたでしょう。渡り人を狙っている人もいるって。気をつけようね」
九時になり門が開かれる。今日の検問は王族挨拶に参列があるため厳しかったが、プレシャスパスを持っている者は、すぐに宮殿内に入ることが許された。
花音が受付の男性に、今日の王族の挨拶は何時に行われるのか確認している。
「ご挨拶は十一時と十五時の二回行われます。挨拶に参列できる場所は『謁見の大広間』のバルコニー下の大庭園になりますので、少し早めの時間におこしください。前のほうでご覧になれますよ」
三人は急ぎ『群青の間』に入った。
「十一時と十五時が挨拶ということは、この時間がチャンスということだね。ちょっと下見がてら宮殿内で怪しい場所をもう一度チェックしてみようか」
おりかがテーブルの上に広げられた地図を見ながら、花音と莉央に声をかけると、花音は窓のカーテンを閉めながらうなずく。
莉央もこくりとうなずく。
そして部屋のドアを開けて廊下に出ようとした時、ドアがノックされた。
「セイラです」
ドアの近くにいたおりかがすばやくドアを開け、セイラを部屋の中に入れた。
「どうしたんですか?」
「こちらロザリオさまからお預かりしてきました」
セイラはそう言ってネックレスのようなものを三人に手渡した。
「宮殿にいる間は、このネックレスを身につけてくださいませ。魔法や能力を使われる際に出るエネルギーを隠します。ネックレスがなくても大丈夫だと思うのですが、万が一エネルギーが感知されると、衛兵が動きます。ただし、これをつけていることを見られてしまうと面倒なことになるので、服の中に入れて見えないようにしてください。通常王族や一部の貴族しか持てないものになりますので」
「そんな大切なものをいいんですか?」
「はい。グロスター家にあるものを持ってまいりました。ロザリオさまの気遣いです。どうぞ大切に扱いください。もしロザリオさまになにかメッセージがある場合は、私がここに来た時に言ってください。また来ます」
セイラはそう言うと、ドアに耳を当て廊下に誰もいないことを確認すると、さっと出ていった。
三人はもらったネックレスを首にかけ服の下にしまいこむ。
「もし昨日ロザリオさまに会わなかったら、私たちどうなっていたんだろうね。あっという間に衛兵に見つかってた可能性大だよね」
とおりかが苦笑いの顔で言った。
三人はまず一昨日一部の壁が気になった『光の間』に向かった。
「鏡の壁の一部だけが板張りになっていたところが気になって。あそこをちょっと触ってみればなにか視えるかもしれない」
そう言いながら花音の歩みが早くなる。少し遅れて歩くおりか。
莉央が花音を追いかけるよう早足になる。
「いざとなったら私が魔法で花音さんを隠します」
花音はうしろを振り返り、莉央ににっこりと微笑んだ。
『光の間』は一昨日とはうってかわり大勢の人で埋め尽くされていた。
「すごい人ね。王族の挨拶ってこんなに人気なのね。この奥に大庭園があるから、みんなここから並んでいるのかしら」
花音が『光の間』の入口で立ち止まる。
「でも、これだけ人が多いと、鏡の壁を触っていても気づかれにくいからラッキーじゃない?」
おりかが花音にささやく。
三人は人込みに紛れて、例の壁へと近づいていく。
『光の間』はぎゅうぎゅうの人で溢れかえっていて、なかなか目的の場所までたどり着けない。
「花音、こっち」
おりかが花音の手を引いてなんとか壁際に来ることができた。
莉央も花音の手をにぎってついてくる。
あの一部だけ板になっている鏡の壁のところで、花音がしゃがんで板部分やその周辺の鏡に手を当てる。
こちらの世界にやってきて初めて使うこの能力。緊張で手が震える。
でも視えてきた。景色が。




