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17 協力はできない

「なにか?」


「いえ。グラダナスは、今回の原因がラウラレ界にあるのか、アルデウス王国にあるのかはっきりしない現状では、原因を探るよりまずはギャロファーを正常な状態に戻し、世界が歪み崩れてしまうことを防ぐことが第一だと言っております」


「……そうですか。承知しました。原因がアルデウス王国にある可能性もあるのですね」


ここでそれまでじっと二人の会話を聞いていた花音が言った、


「ロザリオさま、あなたは私たちのことや今回のことを、国王に黙って私たちに協力してくれるのですか? ロザリオさまはそれで大丈夫なのでしょうか」


ロザリオは花音を見つめて言葉を返す。


「協力? できませんわ」


「え……」


「黙ってはいます。わたくしがそのギャロファーに触ってしまうと、調和音が発生して国の魔法兵がすぐに感知し、わたくしに何事か起こっていると判断しわたしくを調べることになります。国王へも即情報が行くでしょう。


なので、わたくしは知恵で相談にのることしかできない。それに、宮殿であなたたちと一緒にいるところを見られると、警備兵から監視が入ってあなたたちも動きにくくなってしまう」


花音が下を向く。

リフォアナがそんな花音の肩に手をかける仕草をして言った。


「あなたたち三人でやりとげられるよう訓練したんだから大丈夫よ。ロザリオを巻き込んではだめよ。こうやってあなたたちをここで守ろうとしてくれていることに感謝しなくては」


莉央とおりかが下を向いてうなずく。


ロザリオはなにも言わずに、宮殿の地図に目を移し、ギャロファーの置くべき場所を確認している。


するとその一カ所にぐっと顔を近づけた。

ロザリオの金色の髪が地図をさらさらとなでる。


「ここ、地下に赤い印がついているところ、ここは今は部屋ではなく多分食糧庫になっていると思うわ。倉庫の一番奥になるのかしら。子どもの頃、宮殿でかくれんぼをしていてここに入った記憶がある、この奥にね、小さな扉があって、わたくしそこに隠れて誰にも見つからず大ごとになったことがあるので間違いないわ。ここがエネルギーの補充場所だったなんて……。ここなら警備も薄いし、なんとか行けそうね」


少し落ち込んでいた三人が慌ててロザリオのそばに歩み寄る。


「あとは、この『光の間』にはギャロファーを置けるような隙間というか、場所はなかったような気がするわ。絵の裏とか? 壺の下とか中? 一度行って確かめないと分からないわ」


「私昨日『光の間』の壁に少し不自然な場所を見つけたんです。今日はそこを探ってみようと思ってたんです」


「そう。じゃそこは花音に任せましょう」


ロザリオが指揮官のように、どこをどう動けばいいのか探りながら計画を立てていく。


「問題は、このこの屋上の時計櫓の鐘の周辺にある場所ね。宮殿の三階からは王族の居住エリアになっているので、警備も厳しくあがることさえ難しいわ。最上階の屋上となると……。どうやって……」


「姿を消す魔法を使います」


莉央が背筋を伸ばした声で言った。


「そんな魔法が使えるのね。それは長時間使えるの?」


「私の今のパワーでは三十分が限度かと」


「三十分……。なんとか行けるかもしれないわね。この日に警備を手薄にさせるには……なにか大きなイベントを開催させれば……」


ロザリオと三人が話をしているのを笑顔で見ていたリフォアナがふと顔を歪めた。


「陽が傾いてきたみたいだわ」


見るとリフォアナの体が少し透けてきている。

部屋のろうそくの火もだいぶ細くなってきている。


「もう夕暮れなのね。リフォアナ大丈夫。まだ消えない?」


ロザリオが早口でたずねる。


「ええ。あと少しなら大丈夫」


「では聞いて。三人は宿に戻るわ。基本的にこちらでの滞在は宿とします。わたくしと話し合いや相談する際は、この屋敷のこの部屋で行うようにします。宮殿は一部を除いて結界ははられていないから、三人は魔法や能力を使うことはできる。安心して。


ただ、渡り人特有のエネルギーの匂いのようなものが出ているので、それは私のほうで消す薬を用意するので飲んでもらえればしばらくは大丈夫でしょう。この国にいる魔妖犬は、渡り人の匂いを察知する能力を持っていて、犬たちが騒ぎ出すと街中警備の衛兵がパトロールを始めてしまうの。それをなんとかかいくぐらないと。それと……」


「あぁぁ、もう消えてしまう」


「それと、宮殿ではわたくしは王族側なので、三人とは話もできないし、なにも手助けできないわ。でも安心して、三人はわたくしがお守りするわ」


「分か…………」


ふっとリフォアナの姿が消えた。

そして、暗闇の濃さが部屋に満ちてきて、ろうそくの炎がもう消えようとしていた。


「みなさんも今わたくしがリフォアナに言ったことを忘れないで。宮殿ではわたくしに話しかけてきてはダメよ」


「みなさま、お話し中のところ申し訳ございません。陽が沈みかけております。急ぎこのお部屋から退出を」


セイラが部屋のドアを開け、早く出るように言ってきたので、全員急ぎ足で部屋から出た。地下からの階段をのぼりロザリオの部屋に戻ると、窓から黄金の夕暮れの景色が見えていた。


部屋に戻ると、セイラがお茶のようなものを運んできた。

これが、ロザリオが言っていた渡り人の匂いを消す薬だということだった。


もう夜の闇があたりと包む時間になっていた。

今日は宮殿には行くことができずに、三人はセイラに馬車で送ってもらい宿に帰り着いた。



「あー疲れた。疲れた。疲れたよー」

おりかがそう言いながらベッドに倒れこんだ。


「あっという間に感じたのですが、結構時間たってましたね」

莉央が長い黒髪を後ろに束ね直しながら言う。


「いろいろ考えなくちゃいけないし、ちゃんと行動計画をたてる必要ありだわ。でも、ロザリオさまに見つかってよかったね。これ見つかってなかったら、魔妖犬に見つけられてどうなっていたのか……考えるの怖い」


花音の言葉に少しの間、三人の間に沈黙が流れる。


「……だね。まあ私たちはツイてる。大丈夫。それに私が言った通りロザリオさま、やっぱりいい人だったー。美人だったー」


「おりか……」と花音が笑顔であきれる。


「ごめんごめん。じゃあここからはまじめに。莉央、宮殿の地図とセイラさんが持たせてくれたサンドイッチ出して。おなかすいたよね」


おりかはそう言って、莉央からサンドイッチを受け取りそれを食べながら、ベッド広げた地図を見て話しを進めた。


「明日は午前中から宮殿に行って、まずは『光の間』周辺を徹底的に調べてみよう。目標は石を隠す場所を確定すること」


花音と莉央はうんうんとうなずく。


「それと、地下の食糧の倉庫だっけ、そこにも行ってみよう。莉央が」


「え? 私だけ?」


「だって姿を消せる魔法を使えるのは莉央しかいないじゃない」


「姿を消せる魔法うまくつかえるか自信ないです……」


「ま、とりあえず見にいくだけでいいから。ロザリオさまが言ってたじゃない。ここは見張りも少ないって。行くのは一人だけど、私たちも近くにいるから。いざとなったら、私がどうにかする。『ぶるーとす』で」


「分かりました。仕方ないです。行きます」


三人は今日の出来事で体力を消耗しきってしまい、この話し合いのあとに、すぐに眠りについた。



**********


「困ったことになったわ」


三人を送り届けて帰ってきたセイラに、ベッドに横になってくつろいでいたロザリオがつぶやく。


「このまま国王には知らせずに、ですか」


「もちろんよ。ただ、なにか起こってしまった時にどうするか……。わたくし一人で責任が負いきれる問題でもなさそうだし。リフォアナさまには、三人を守るとお伝えしたけれど。ねえセイラ、大丈夫だと思う?」


「ロザリオさまは、大丈夫じゃなくても大丈夫にしてしまうと思います。それに、今だって不安そうにはしておられますが、笑っているじゃないですか」


そう。ロザリオは話しながら笑っていた。


「そうね。さすがセイラだわ。よくわたくしのことを分かっているわ。不安だけれど、少しワクワクする気持ちもあるの。不思議ね。でも、心配なのは心配。だってあの三人が立ち向かおうとしているのはこのアルデウス王国ですもの。わたくしはこっそり三人の味方をしているけれど……」


「ロザリオさまが少しでも変な動きをすれば、サイラスさまがお気づきになられるでしょうね」


「そこ大きな問題よね。サイラスはわたくしのことになると、異常に心配するから。今日のめまいの件があったから、より過敏になっているだろうし。よくよく気をつけて行動しないと」


セイラはロザリオの話を聞きながら、部屋の中を片付けロザリオが就寝する準備をてきぱきと進めていく。


「明日、おりかさまたちは宮殿が開門される九時にはいらっしゃるそうです。三人が休憩されるお部屋は『群青の間』とお聞きしました。私は時々様子を見にいってまいります」


「ありがとう。わたくしも明日は宮殿で勉強会があるのでちょうどいいわ」


部屋の明かりが落とされ、部屋には細い月明かりが入りこんでいた。


「今日は魔妖犬の鳴き声は聞こえないわね」


ロザリオはそうつぶやいて眠りについた。

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