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16 無限の間

地下への階段は、邸宅の一番奥の廊下のつきあたり、鍵付きの扉を開けたところにあった。


扉の先は物置のようになっていて、右側の戸棚のようなものを横にスライドさせると、そこにさらに地下への階段が現れた。かなり分かりづらい構造になっている。


「なぜこんな造りになっているのか、わたくしも父さえも分からないの。これから案内する『無限の間』は、この邸宅が建った時からあると聞いているわ。結界に守られながら結界の影響を受けない空間、とでもいうのかしら」


「そのお部屋は結界がはられていないってことなんですか?」

地下の廊下を歩きながら莉央が聞く。


「この屋敷の敷地全体には結界がはりめぐらされているわ。もちろん地下も含めて。ただ、『無限の間』だけは、結界の中にシールドがあるというか、そこだけぽっかりと結界がない穴が空いているというか。そいう感じかしら」


「なんのためのお部屋なんですか? 結界がないことが必要なお部屋って……」


「これはわたくしの考えですが、昔からあなたたちのような渡り人が、時よりこちらへやって来ていたのではないかと思うの。わたくしたちの家系はそのような渡り人を助けていたとうか、確保していたというか。


わたくしも今は亡き母から、渡り人や亡き者が現れたり、なにか大きな出来事があって必要がある場合は、この『無限の間』を使うよう言われていたのです。多分、過去にもそういうことがあったのだと。もしかしたらそういう時のために、この屋敷が造られたのかもしれません」


そうロザリオが話し終えると、無限の間へと到着した。


先に着いていたセイラが、部屋の中に数本のろうそくを灯してロザリオたちを迎えた。


部屋の中はろうそくの明かりしかなかったが、そこは空気が澄んでいて、仄暗い森の中にいるかのような空間だった。


五人が入って少し余裕があるぐらいの部屋の広さ。

中央にはテーブルとイスが置かれていて、上の階の部屋とはまったく違う質素な部屋だった。


「ちょっと狭いけど落ち着くお部屋でしょ。わたくしも年に数回、掃除のために訪れているの。なぜかお母さまを思い出すのです」


ロザリオはそう言って愛おしそうに部屋を見回し、そして三人にイスにかけるよう目で合図をし、セイラには席を外すよう伝えた。


「では、リフォアナさまをおよびください」


莉央はうなずくと、ライフを取り出しリフォアナを呼び出した。


するとすぐにリフォアナの姿が部屋の中に現れた。


「どうしたのよ。全然連絡がないから心配したわ。ライフも全然つながらないし。って、え、ここは? え、あなた誰?」


現れたリフォアナはロザリオを見て驚愕していた。

莉央が慌てて説明をしようとするが、そんな莉央を制してロザリオが話し出す。


「わたくしはグロスター侯爵家のロザリオと申します。アルデウス王国の影の役割を務める者として、渡り人であるおりかさま、花音さま、莉央さまをお守りするため、わたくしの屋敷に来ていただきました。ご連絡が遅くなり申し訳ございません」


この言葉で状況を察したリフォアナは、深く頭を下げて言葉をつなげる。


「事情を知らず先ほどの言葉をお許しください。ロザリオさまのお名前はグラダナスから聞いております。いつも二つの世界の秩序をお守りいただくため、ギャロファーの管理をありがとうございます」


「なんか女王対決みたい」とおりかが小声で言う。


「そんなこと言わないでください」と莉央がおりかをたしなめたが、花音がふふふ……と笑ってしまった。


「花音っ」


慌てる莉央を見て、ロザリオが声をたてて笑い出し、言った。


「そうね。確かに女王対決みたいよね。もう堅苦しい挨拶はここまで。みな普通に話しましょう」


リフォアナもそれに同意するよううなずいた。


「ところで、リフォアナさまはどういう状態でこちらに現れているのでしょうか? 実体があるとは思えないのですが」

そう言いながらリフォアナに触れたが、その手は空をきるだけ。


「その通りです。ホログラフィーといえば分かりやすいでしょうか。意識を光の粒子にして映像化しているのです。そちらの世界にいる人は私に触れることができないし、その逆もです。ただ私はそこに立っている目線でそちらの世界を見ることができています」


「なるほど。承知いたしました。それと、莉央から聞いたのですが、このライフというものから魔法を送ることができるのですか?」


「うーん。直接ではなく、魔法の元となるパワーを莉央に送ることができるということです。私自身がライフと通して魔法が使えるということではありません」


「結界がはってある場所でも?」


「結界……。結界の種類にもよりますが、魔法封じの糸が編みこまれている結界ならば魔法は使えないし、そもそもライフの通信が途絶え……、あ、だから今まで三人に連絡がつかなかったんですね。でも、今はどうして……」


「事情があり、この部屋だけ結界外しをしているのです」


ロザリオとリフォアナがそれぞれの事情や情報を話しているのを三人はじっと聞いていた。

今後どう協力できるのか、どうしたらいいのか、そこが一番大事なところだ。

早くそこを話さないと、リフォアナのエネルギーが切れて通信が途絶えてしまう。

それを心配した莉央が、二人の会話に入っていく。


「あの、あの、リフォアナさまがこちらにいられる時間は限られています。こうして実体のように見せるには相当なエネルギーを消耗するので、もうそろそろ消えてしまうかと。なので、今後どうすればいいのか早めに話したほうがいいと思うのですが……」


「あ、そうだわ。そのこと忘れていたわ。ありがとう莉央。でもなんか全然エネルギーが減った感じがしないのよね」


「それはそうです。この部屋にはエネルギーが満ちているので、リフォアナさまのエネルギーは減らないわ。ただ、この部屋は陽が落ちると使えないの。あと数時間は大丈夫。だけれど、このろうそくの炎が小さくなってきたらエネルギーがなくなってきていることになる」


莉央はその言葉に安心したが、ふと自分の手を見てみると、手全体から光のようなものが出ていて、光っていた。


「光ってますっ。私の手からなにか出ています。これって、これって」


「莉央、大丈夫。落ち着いて」


ロザリオが莉央のそばに行き、両手で莉央の手を包み込んだ。


「莉央にはやはり魔法の血が流れているわ。この部屋のエネルギーでその力が溢れ出てきているのよ。大丈夫。大丈夫。この部屋を出れば光はそのうち消えるわ。でもすごい魔法量ね。この国の宮殿付きの魔法士よりも強い力を持っているかもしれないわ」


リフォアナも莉央に寄ってきた。


「本当だわ。この部屋で魔力を補充できれば、私が魔力を送らなくても大丈夫ね。でもあと数時間で日が暮れてしまう。今後についてどうすれないいか、決めないと」


そのひと言で、全員がイスにきちんと座り直した。そしてロザリオが今後についての話を進める。


「おりか、あなたたちは宮殿でなにを、どうしようと思っていたの?」


「ギャロファーのエネルギーを補充する場所は三カ所。それぞれの場所を探して、そこにギャロファーを置いて三日後に取りにいこうと思ってました。補充は三日で終わると聞いたので」


「その三カ所は分かっているの?」


「リフォアナから宮殿の地図をもらっていて、そこにおおまかな場所は描いてあったので、昨日はその場所を確認するために宮殿内を見てまわりました。でも、地図の場所に行っても石を置くような場所は見つからなくて。あと、行けていない場所もあります」


「その地図を見せてもらえる?」


「これです」


莉央がバッグから地図を取り出してロザリオに見せる。

それをじっくり見たロザリオはため息をつきながら言った。


「すごい古い宮殿地図だわ。構造は基本変わってないけど、大広間が小さく区切られたり、拡張された部屋もあるし。これだけでギャロファーを置く場所を特定するのは難しいと思う。でもこれほど宮殿の造りが詳しく描かれてているなんて、敵がこの地図を持っていたと考えると恐ろしいわ」


リフォアナが地図の上に手をのせながら言う。


「これは多分宮殿が造られた時期の地図だと思う。宮殿というか、アルデウス王国とラウラレ界が創生された際に、アルデウス王国から地図が渡されたと前にグラダナスさまから聞いたことがあるわ。これまで実際に行き来があったのかは分からないけど」


「……今回の件、これほど秘密裏に進めているということは、わが国王にお伝えはしないほうがよいということでしょうか」

ロザリオがリフォアナを見つめて言う。


「はい。グラダナスは大ごとにはしたくないとの考えです。それに……」


リフォアナは一瞬言いよどんだ。

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