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鬼人達の宴朱 第二章鬼の子

鬼人達の宴朱、第二章。今回はちょっと翼が二人の鬼との関係がアップダウンする感じでしょうか。恋愛ものはバランスが大切と勝手に言います。

また誤字、脱字があるかもしれませんが、よろしくお願いします。

翼はいつも通り着替えて大学に向かった。昨夜は妖怪や鬼を見た事が頭を離れない。後は少し疲れを感じた。

「おはよう!翼!」

駅前で護と結花が翼を見つけて声をかけた。いつもとの違いは護が「翼」と呼んだ事。

「昨日妖怪に襲われて疲れているんでしょ!無理しないでね!」

結花は前日に送った一つ目の妖怪の写真を信じていた。

「疲れてはいるんだけどさ。気になっている事があるんだよね。」

「何、何?聞きたい!」

「…ハイブリッド。」

「え?ハイブリッド?」

横目で護を見ると何かを思い出した。

「もしかして、翼も見た?鬼についての夢。」

「え?護も見たの?」

「私は分からないから聞きたい!」

「純粋な鬼は自然の力で生まれるらしいんだ。炎や水、雷や土。その鬼が人間との間で子供が出来るとやがて普段は人間で必要な時だけ鬼に変身するようになるんだ。」

「それがハイブリッド!なるほど!分かった!」

結花は元気に言うが翼の表情はまだよくない。

「そう、それで昨日あった勇吹と護が今もハイブリッドの鬼なの。」

「あっ!分かった!その勇吹君と護は親が鬼の血を持つハイブリッド!」

「あぁ。そういう事か。」

護は説明を聞いて納得した。

「たぶん鬼の血があると思うけど、そう簡単には鬼に変身出来ないとは思うんだけどね。今度家族構成調べたら何か分かるんじゃないかと思って。」

「分かった。後で勇吹にも聞いておくよ。」


大学に行くと少し騒ぎになっていた。

「あー。神隠しにあったんだよね。美佳。」

中に鬼の形相で翼達の方に来る女性がいた。

美佳の友達だ。

「ちょっと!市村!美佳をどうしたの!いなくなったんだけど!」

「大掛さんは私の髪を引っ張って、なんか罵声上げて何処かに行ったの。転んだし、後は分からない。」

「はぁ!ふざけんなっ!」

美佳の友達が翼を殴ろうとした。


「林さん。俺の目を見て。翼は大掛さんが何処に行ったか分からない。分かったね?」

「…分かった。」

護を見ると目が赤くなっていた。

「さぁ、残念だけど、後は警察や大人に任せて教室に戻ろう。分かったね?」

「…分かった。」

林さんはふらふらと教室に戻って行った。

「あっ。皆。林さんはちょっと混乱していたんだ。忘れようね?」

「…分かった。」

結花と翼以外の周りの人が一斉に呟いた。

挿絵(By みてみん)


「怖っ!ガチで怖っ!」

「でも上手くいったね!護!」

「うん。これで大丈夫だね。翼。」

護はまた目の色を戻して言った。

「結花、護、怖くない?」

「え?バスの中で翼が虐められると思うから、林さんどうにかするって言ってたよ。ちなみに怖い男の人は勇吹君がするって。」

「昔苦労したからね。勇吹は鬼になって浅いみたいだからやり方を昨日教えたんだ。」

思わず、ドン引きする。

「いや、洗脳か催眠か分からないけど、あんなに集団操るとか怖いって。」

「あっ!そろそろ授業始まるから行こう。大丈夫。翼には変な事しない。」

「護ね。翼を操るの、傷つけるから嫌なんだって。護!乙女心傷つけたら、ダメ!絶対!」

「あははっ。でも、さっきはちょっと怖がらせちゃったね。翼、ごめん。」

護は作り笑いで言った。…誤魔化したな。短気な勇吹も気になるけど、護も要注意確定。


昼休み前には勇吹から美佳の男の方は昨夜の記憶は忘れさせたとメールが来た。

帰りに駅前で護、結花と別れて電車に乗った。

自宅前の駅を降りると近くのコンビニから勇吹が出てきた。

「…翼。ごめん、ちょっと話がしたくて来た。」

「…。うん。私もちょっと気分がモヤモヤしていてさ。…うーん。ちょっと喫茶店に行こう。」


勇吹と喫茶店の入ってアイス珈琲を二つ頼む。

「…話って何?」

「ん。昨日いろいろあったからさ。大丈夫かなと思って。」

「…うん。まあ今日もだけどさ。妖怪が怖いと思ったけど、ちょっと護、怖かったなって。」

「…やっぱり、鬼だから?俺も怖い?」

「…違うの。美佳の神隠しの事。本当に隠したから。朝、美佳の友達が失踪の事で私と揉めたの。それを護が周りの人の意識を操作して、止めたんだけどさ。…美佳、助けた方が良かったかなって今は後悔してる。」

「…そっか。ごめん。美佳って子、助けなくて。」

「勇吹は悪くないよ。でもさ、この世からいなくなるとこうなんだなって。悲しむ人がいて、安心する人がいて、人間って怖いなって思った。…人間って難しいね?」

翼は作り笑いをして言う。

「…翼。俺さ、昔は翼は椿姫で、俺は侍。好きだけど、話す事がなくてさ。…今はそれがないから、翼ともっと話がしたい。…悩みがあったら、俺、聞くよ。…俺は、翼はいろんな事に真剣な事、分かるよ。」

「…うん。ありがとう。私、答えが出た。護と結花にきちんと美佳がいなくなって、後悔しているって伝える。」

「…二人は分かってくれるよ。翼。」

挿絵(By みてみん)


外を眺めると暗くなっていた。

「…勇吹の家ってここから遠いの?」

「隣の駅に大きな病院があるだろ。あの近く。俺の親父が医者なんだ。ただ、俺は短気で医者には向いてないし、アクセサリー作る方が好きだから勉強してる。」

「私はいろんなものを描くのが好き。写真を撮るのも好きだけど、自分で描いて、作るのが好き。」

「…俺達、似ているな。」

「…うん。…そろそろ帰ろうか。」


喫茶店から出て、翼は勇吹を駅まで送った。勇吹は嬉しそうに翼に手を振って帰った。その後、護と結花に美佳が神隠しにあって後悔している事をメールで伝えた。結花から謝るメールが来て、護からは電話が掛かってきた。凄く謝ってきたけど、軽く話して「続きはまた明日」と言って切った。


その夜は特に夢を見なかった。次の日の朝、大学の駅で降りると護が頭を深く下げて謝ってきた。

「翼!昨日は翼の事を考えずにごめん!」

「…美佳の件は、神隠しで失踪して良かったねっていうのはダメだなって思ったの。いろいろあって、私の頭の中が整理出来てなかった。結花も、分かって欲しい。」

「うん。ごめんね。」



夕方、護と結花と三人で帰ろうと大学の外に出ると川の方に青い光を出す雲が目に入る。

「…何あれ?雷帯びた雲?普通じゃないでしょ。」

「たぶん、また鬼がいるかも知れないな。」

「また神隠しされる人が出たら嫌だし、護、行こう。」

「翼!また写真撮れたら妖怪の写真撮って!」

結花がどさくさに紛れて無茶苦茶な事を言う。

「相手は雷だから、電話を壊されないように気を付けないとね。」

護は頭から二本の角を出し、牙を伸ばした。

翼は勇吹に電話を掛けた。

「…勇吹!川の方に鬼が出ているって!今何処にいるの!」

「翼、今大学にいるのか?俺はあの雲から少し近くにいるけど、鬼になって遠くから見たらなんか光って足が6本ある獣と顔だけ人間みたいな鳥がいるぞ。」

「雷獣と人面鳥だな。雷獣は光ると直線に電気を帯びて高速移動する。人面鳥は声で相手の精神を乱してくる。もし戦う事になったら火の術を使って怯ませてから斬れ。俺も翼を連れてそっちに向かう。」



電話を切ると護は姿勢を低くした。たぶん背に翼を乗せるのだろう。翼は護に近づいたが、その表情はよくなかった。

「こういうのって、いや、恥ずかしいんだけど。結花、私大丈夫?見た目。」

「大丈夫だよ。こんな感じ。」

結花がiPhoneで写真を撮って翼に見せた。

そこには護の背に乗る翼の姿が写る。足をぶら下げている姿はかなり目立つ。

「うわっ…。ダサい。っていうか、目立つ気が。」

「あぁ、術で姿見えにくくするから大丈夫だよ。…っ!良し、中村さん、見えにくくなったでしょ。写真をまた撮ってみて。」

「あっ!ほぼ見えない!写真は全く写らない!」

結花がまた見せた写真は護も翼も写らなかった。

「あぁ。これなら大丈夫かな。行こうか?勇吹一人だと心配だから。」

「あぁ。中村さん、また後で連絡するね。」

「はーい!気をつけてね!」

結花はとりあえず手を振った。護の足音はすぐに結花から遠くなった。結花は周りを見回してさっきの写真を見た。目は鋭く、角を二本生やして、長い牙の護が写っていた。

「いいなー。翼は。鬼が守ってくれるってお姫様じゃん。勇吹君ってどんな鬼なんだろ。…見てみたい。」

結花は鬼の護の写真を暫く見ていた。


護は翼を背負って走っていたが、思った以上に早かった。

(ヤバい。ほとんど人間ジェットコースター。)

護は電柱の上を器用に飛び乗りながら川辺に向かった。

そこには勇吹が雷獣と人面鳥と戦っていた。

「翼、着いたよ。」

「ちょっと待って、体がふらふらする。」

翼はスマートフォンを出して雷獣の写真を撮った。

前足が二本、後ろ足が四本、尻尾が二本で口が大きな獣だった。一枚目を撮ると器用に立ち上がって見せた。顔がなんとなくドヤ顔になっている。

挿絵(By みてみん)

「うわー。なんか煽ってる?面白いからいいけど。」

次に人面鳥を撮る。顔は角の無い長髪の般若見たいな顔の大きな鳥だ。こちらは一枚目の写真を撮ると怒って大きな口を広げた。

挿絵(By みてみん)

「ギィアアアアアッ!」

「…あっ、ヤバい。無茶苦茶怖い顔してる。」

「翼、ちょっと土の術を使うから衝撃が来るよ。」

地面から岩が突き出して人面鳥を吹き飛ばした。それを見て雷獣はゲラゲラ笑っていた。

「…雷獣はおとなしい?」

「でも、さっきスマートフォンとか持っていた人間、襲っていたぞ。」

「たぶん、他の人間に写真や動画を撮られるのが嫌だったかもな。」

翼達の会話を聞くとまたドヤ顔をした。なんかオッサンみたいな妖怪だ。


人面鳥が何かを感じて逃げようとする。そこに雷が落ちた。そこには目が橙の二本の角と四本の小さな角を持つ鬼が現れた。

挿絵(By みてみん)

「撮影タイムは終わったか?黄鬼だ。」

「まだ、今黄鬼撮った。…って言うか、写真撮るとか知っているの?」

「今の人間のエレキテルの技術を知らないとあだ名が『化石鬼』になるぞ。当然だ。」

青鬼より落ち着いた話し方の黄鬼だが、癖がある。皆こんなノリなのか?

「妖怪が集まると神隠しにあう人が出るの。この場所から離れて。」

「うーむ。確かに。心に闇があると人間はあの世に近づく。だが、それはその人間の業。お前には止められんぞ。」

黄鬼の周りに青い電気が集まる。

「まあ良い、雷の試練を始める。武器の使用は禁止。我を倒してみろ。」

「はぁ?武器の禁止だと?」

「勇吹、感電するぞ。」

護に言われると勇吹は慌てて刀を消した。

「危ねぇ!やらかす所だったぜ!じゃあ火と土の術を使えばいいんだな!」

勇吹と護が黄鬼に術を使うが黄鬼は雷のバリアを張り、全く効いていない。

「このバリアを割らんと俺は倒せんぞ。まあ、良い。次は我の番だ。」

黄鬼が掌を向けると勇吹と護に電気が集まりだした。

「ぐぁああああっ!」

勇吹と護は立ったまま痙攣をしているようにみえた。

「ほら、麻痺した。早くこやつらの痺れを取らんと負けるぞ。クールガール。」

(クールガール?水?)

翼は水の術で勇吹と護の痺れを治した。

「こいつ、強いぞ!」

「…もしかして。こうじゃない?」

翼は勇吹と護に水のバリアを張り、黄鬼のバリアを水の術で割った。

「うむ、水は純粋なものだと電気の力を抑える。まあお前達なら分かるか。」

「じゃあ、もう武器使えるな!」

勇吹が刀を出して黄鬼に斬りかかる。黄鬼も鉄の棍棒を出して抵抗した。

「悪くはない。が、まだまだだな。」

黄鬼が言った瞬間、黄鬼が勢いよく吹き飛ぶ。黄鬼は土煙に包まれて様子がよく分からなかった。黄鬼がいた場所を見ると護が拳を大きな石に変えて立っていた。

「翼、黄鬼を倒したよ。」

護は冷たい赤い目で翼に言った。

「…うん。倒したと思うけど、黄鬼、大丈夫?やり過ぎて動かなくなったりしないよね?」

「…?わからない。ダメだったかな?全力で殴ったよ。」

「なんか試練がとか言っていたから、ちょっと怯ませる程度で良かったんじゃないか?まあ俺も斬るつもりだったけど。」

土煙がおさまると黄鬼がピクピク痙攣している。アカンやつや。

翼は近づくと黄色の石が落ちている。雷の石だろう。

「たぶん、水だけだと回復出来ないでしょ。火と土と水と雷で体を回復させるイメージで。」

黄鬼の痙攣が治るとゆっくり体を起こした。

「…川が見えた。三途川だ。」

そう言い近くの川を見た。

「…あれは普通の川。日本の川。ジャパニーズ リバー。分かる?」

翼が心配そうに言うと、黄鬼は安心したのか静かに泣き出した。

その姿を勇吹は唖然とした表情で見つめ、護は翼が黄鬼と話しているのが面白くないので不機嫌になっていた。

「これ、雷の石よね?貰っていい?…大丈夫?家に帰れる?」

黄鬼は何度も頷く。翼は思い出してまた黄鬼の写真を撮る。

「…家に帰って、ゆっくり休みなさい。バイバイ。」

黄鬼は翼に軽く手を振り、勇吹や護にも手を振った。勇吹や護も黙ったまま手を振った。そして、黄鬼は消えた。

「…ちょっとびっくりした。」

「いや、俺も。なんか青鬼より最後酷かった。」

「なんか、俺、苛めっ子みたいじゃないか。」

「…今度、神社にお参り行こう。効くか分からないけど。なんか護散々だったね。」

終わったので結花に妖怪や黄鬼の写真を送った。神社の話をすると結花も行きたいと返信が来た。

「…帰りは俺が翼を家まで背負って送るよ。」

「…護、写真撮ったらどんな感じ?」

「んー?こんな感じかな?」

護がスマートフォンで写真を撮って見せるとやはり目立つ。

「あぁー!やっぱり恥ずかしいんだけど!」

「大丈夫。俺も姿見えにくく出来るから。…っ!良し!大丈夫。」

「…ん?」

護が写真を見せると微妙に姿が見える気がした。

「…まあ許容範囲でしょ。…護、今日はありがとう。またね。」

翼が手を振ると護も手を振った。


…その日の夜、夢を見た。画面が左右に分割していた。左には茶髪の少年、右は黒髪の少年。岩愧(がんき)旭日(あさひ)だ。山に登る鬼の集団が人間に襲われて二人は下山して逃げた。


岩愧は普通の家に、旭日は武士の家の子になる。

やがて、岩愧は鬼だと知られてしまい、人間達に襲われて洞窟に逃げた。そこに一人の少女に出逢う。椿である。椿との出逢いが岩愧に生きる力になった。


やがて、成長した旭日が椿の侍として仕えるようになる。そして、岩愧と逢う事が減った。旭日が見た椿は冷静に物事を判断し、城の者に指示を出し、導いていた。普通の姫とは違うとすぐに分かった。その魅力が旭日を惹き付けた。


一方、椿に逢えなくなり、寂しくなった岩愧はこっそり城に手紙を持って行き、椿の部屋に置いた。この手紙を城の使いが先に見つけてしまい、椿に知られる事も無く、鬼が椿を狙っていると密かに噂が広がる。

これを知った何かがいた。それは狙ったように城に火をつけ、椿は事故で城から転落してなくなる。


何か悪い予感を感じたのだろう。岩愧は火が上がる城を見て、城を目指す。

そこに鬼になった旭日が現れた。

「…お前が城に火を付けたのか!椿はさっき城の上から落ちて死んだんだ!」

「…っ!違う!俺じゃない!…っ!お前こそっ!なんで椿を助けなかったんだっ!鬼なら助けられただろっ!俺の椿を返せっ!」

岩愧と旭日はお互い刀を振って、激しく戦った。そして、辺りは血で真っ赤になり、最後はお互いの体を斬り、二人は倒れた。

静かにヒュー、ヒューと呼吸の音がしていたが、それも止んだ…。



(岩愧と旭日が、護と勇吹が死んでしまった。)

目が覚めると翼の頬は涙で濡れていた。

護はちょっと鬼の冷酷さが出すぎるのが玉にキズ。ただ、完璧じゃない方が良いです。

後勇吹の元気なやんちゃ少年みたいな感じが最近は見ない気がするのでこういうのも良いなと思いました。

最後はよくある楽しかったけど、その後は少し悲しい、な雰囲気で〆。(少しではない)

次回に続け。

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